ゾウへの執着、未熟なおっさん

歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス)


乗るべき電車を逃したとき、
最近は迷わず、特急券を購入している。
前向きシートではパンを食べる後ろめたさも少ないし、
本をゆっくり読めるのも嬉しい。もちろん、隣りに人が座れば、
それなりの緊張感を携行することも忘れずに。


車中のとも。
呉明益、天野健太郎歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス)』(白水社


「ギター弾きの恋」良かった。またも語り手が代わる構成だったけど、
今回のはカリッと切り替わったように感じた。「少年の声」が混じってないと嫌なのかもしれない。
ゾウの話には、少年の声がしなかったのかな。


ふらりと新刊ラインで1冊だけ入荷した『新潮4月号』*1
なぜかビビってしまって買えなかった。明日まで残ってたら、買おうか。
「劇場」以外の気になる文章がちょいちょいあったはずだが忘れた。
辻山さんのエッセイのことは覚えてる。
いしいしんじの書評は気になるが、
騎士団長読んでないからなぁ。


「書評を読みたい」って気持ちには、その評された本を読んだか読んでないかってのが、
どう影響するんだろうか。既読本の書評を読んで嬉しさを増したい気持ち、
未読本の書評を読んで、読書欲求にドライブかけたい気持ち。


夜は版元さんと、食事。
まだ病み上がりの残響を残すからだなので、
早めに始まり、早めに解散。学参売り場で活躍する自分の妄想が、
口からほとばしる。そんなことを考えていたのか、自分。
聞いてくれる相手によって、引き出されることばが違ってくる。
これは、最近、しばしば頭に浮かんでくるフレーズ。
いろいろな自分を現すことは、生存のためにもよいのではないか。


購入。ブックオフジェイアール鶴橋駅店。
山田太一『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと』(新潮文庫


車中のとも。
呉明益、天野健太郎歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス)』(白水社

ぼくは生まれて初めて、執着していたのだ。(p.130)


「金魚」、良かった。繰り返し現れるモチーフの親しみ。
「鳥を飼う」も良かった。女性の語りが悪いわけではないらしい。
やはり子ども時代の思い出の含有率が鍵なのか。いちいちゾウのことを振り返ってしまうが、
ゾウの話以外の短編たちがあまりにもビシバシとぼくの快感中枢を殴打してくるので、
どうしたって、あの違和感に立ち戻らずにはいられないんです。
手放しにほめちぎれない分、臓腑に刻まれる一冊になってる。


近鉄奈良に戻ってきて、商店街を歩きながら、夜を惜しむ気持ち。
もっと食べたい、もっと飲みたい、と思っても、この小さな胃袋が許してくれない。
満腹になった後も、楽しい夜は続いてくれるのだろうか。大食い・大酒飲みの人たちとも、
長い時間を共に楽しむことができるのだろうか。あるいは、早めに休むしかないのか。


早めに眠るにはまだ抵抗があったので、それならばと、
久しぶりにiPodに入ってる世田谷ピンポンズの曲を頭から聞いてゆく。
2曲めは「アナタが綴る世界」。さぁ、どんどん洗いもの、洗いもの。


世田谷ピンポンズさんのライブMCで、おっさんに毒づくやつが好き。
でも、ぼくももういいおっさんなので、好きとか言ってないでちゃんと
世田谷さんに毒づかれるようでないとおっさんとして未熟なのではないかと不安になる。
あぁ、またピンポンズライブ行きたいなぁ。

*1:新潮 2017年 04月号』(新潮社)