12月の本屋彷徨

セーラーとペッカ、町へいく


珍しく娘が、自らベビーカーを召喚。
雨はほとんど降っていなかったが、
乗ってくれるならありがたい、と、
傘は差さずにベビーカーを押す。


けれども、なんだか、変だ。
自転車で送っていくときよりしんどいのはわかるが、
なぜにベビーカーに乗せているのに、重たいのだ?
保育園からの帰り道、そういえば、最近は、
雨が降っても、傘とカッパで、
自分で歩かせていたのだ、
と気がついた。


ベビーカーに乗せればオッケー!!
となだめすかしていた頃は、いつのことだったか。


鍼を終えて、近鉄百貨店へと向かう。
と、その前に、啓林堂書店西大寺店も覗いておこう。
まずは絵本コーナーをチェック。目あてのアレはない。
中公文庫の棚もチェック。すると、あるではないか。
『街場の戦争論』で引用されていて気になっていた。
ぱらぱらすると、するする読んでしまう。
いかんいかん、買って帰るぞ。


購入。啓林堂書店西大寺店。
島尾敏雄吉田満新編 - 特攻体験と戦後 - 〈対談〉 (中公文庫 し 10-5)』(中央公論新社


さて、今度こその、近鉄百貨店。
近鉄ブックセンター奈良店、絵本コーナーをチェック。
アレはない。なかったかー。ないならないで、
絵本以外の選択肢もあるのではないか、と、
店内をうろつくも、とくに収穫はない。


中公文庫のコーナーに、島尾敏雄吉田満の対談は、ない。(嬉しい)


さて、どうしたもんだろうな、と思いながら、
エスカレーターで下りていく。


こないだスタンダードブックストア@心斎橋のカフェで思いついた、
「クリスマス会とかのプレゼント交換みたいに考えたらどうだろう」
というアイデアが、それならこの絵本がいいんじゃないか、
と着地して、そいつを探しているのだ、今日は。


このまま奈良に帰っても、アレの置いてありそうな本屋さんに心当たりはない。
どうだい、定期券もあることだし、今年オープンしたという、
生駒の啓林堂さんを覗いてみるってのは。
駅の売店でサンドイッチを買って、
もごもごとホームで口にする。


生駒駅の改札口の上の方に、啓林堂の看板が出ていた。
駅や道端にある本屋さんの看板って、ぼくにはひどく魅力的に見えるけど、
「一般の人」にとっては、どうなんだろう。(←お前も一般だよ)
でも、本屋さんまでの道のりも、わかりやすくて、いいと思う。
近鉄百貨店の6階へ。また、近鉄百貨店来ちゃったな。


絵本コーナーをチェックするも、アレはない。
なかったかー、と落胆しつつも、棚を見て回る。
中公文庫のコーナーに、島尾敏雄吉田満の対談は、ない。(嬉しい)


ルドルフとイッパイアッテナ*1にPOPがついているのに気づく。
野間児童文芸賞受賞帯も巻いてある。『スノーホワイト』に至っては、
2面出しだ。どういうプッシュだ。
手に取る。ちょっと読む。
思いだす。棚に戻す。


迷う。


今、ここで買わなくてもいいんじゃないか。
そもそも今日の目的は、アレだ。そうでなくたって、
欲しい本はいっぱいある。なにゆえに、今日、ここで、
こいつを連れて帰らなければいけないのだ?
鞄は重くなり、財布は軽くなるってのに?


購入。啓林堂書店生駒店。
斉藤洋、杉浦範茂『ルドルフとスノーホワイト (児童文学創作シリーズ)』(講談社


結局、進展は、ない。
アレに代わる候補も、見つけられなかった。
奈良へ戻るか、大阪へと山を越えるか。
迷いながら乗った電車は快速急行


なんばへ行こうか、とも思ったが、
鶴橋で下りてしまった。そして、
「あ、天王寺に行ってみようか」
と思いついた。


こないだ、TLで、天王寺ビッグイシューを入手したという記事を読んだのだ。
そうそう、まだ、古本特集の、手に入れてないのだった。
天王寺だったら、ブックオフもあるし、
スタンダードブックストアもあるし。


そういえば、あべのハルカスのある建物の上の方に、
大きい本屋が入っていたのではなかったっけ、と、
進んでいく。あ、ここも近鉄百貨店ではないか。
今日は、近鉄百貨店ばっかりだな。
そして、本屋さんは、ジュンク堂書店か。
ジュンク堂書店といえば、さっき電車の中で、
「たしかジュンク堂さんはネットで在庫検索できたよな」
と嬉々としてアレを検索しようとしたら、ガラケーは対象外だった。


ちっ、ジュンク堂め。


結局、来てしまったけどよ、俺はスマホ持ってないからよ、
おたくの在庫検索システムからは、「断られた客」なんだからよ、
とこころのなかで毒づきながら、7階、店の外(?)にある検索機に飛びつき、
アレのタイトルを、単語分解して、検索窓に放り込む。在庫、あり、と。


在庫、あり?あるの?


あるのかー、よかったー、さすがジュンク堂だなー、
とこころが一挙に軽くなったところで、本棚を散策する。
ああ、広いな、本がいっぱいだなー、うふふふ、
赤ずきんさながらにブラブラしながら、
絵本コーナーがないことに気がつく。


どこじゃい!とふたたびこころに毒が発生してきそうになる。
あ、8階、8階があった、忘れてた、どうやって8階にいくの?
わかりにくいぞ、エスカレーターはどこじゃい!出てこい!
そうして8階に行くと、そこはなんとも広大な、
チャイルドブックアイランドでございました。


著者別の海外のコーナーでアレを探すも見つからない。
どうなっているのだ、ともう一度検索機を頼って、
今度は棚番号もチェックしようか、と思ったら、
あれ、こっちには出版社別の棚があるぞ?
・・・著者別と出版社別の棚が、
両方あるっての?


どんだけ広いアイランドなんだよ!
そして無事にアレを発見。2冊もある。
シリーズの別のやつもある。わー。
勢いで、娘用にも買うことにした。


購入。ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店。
ヨックム・ノードストリューム、菱木晃子『セーラーとペッカ、町へいく』(偕成社
ヨックム・ノードストリューム、菱木晃子『セーラーとペッカの日曜日』(偕成社


目的の本を手に入れてホッとすると、
もう広大なアイランドが息苦しくなってきた。
この国をさまよい始めたら、生きて帰れないかもしれない。
いつかまた、元気な時に、じっくり見よう。さらば!


ブックオフを覗いて、なんとなく、
ビッグイシューの販売員を探して、
スタンダードブックストアに行くかどうか迷って、
理由は忘れたが、けっきょく、Hoop に向かっていた。
エスカレーター手前でチラシを配っている男がいて、
なんとなく気になるな、と思ったら、Kさんだった。
上りゆくエスカレーターの上から、ごあいさつ。


Kさんの顔を見れただけでも、来た甲斐があったな。
こないだSB@あべのに来たのは、いつだったか。
あいかわらず、魅力的な雑貨がたくさん並んでいるなぁ(←そっちか!)。
こんど、奥さんのクリスマスプレゼント買いにこようかな。(←今日は買わないのかよ!)


あれもある、これもある、これはなんだ、
と、疲れていたはずの脳に、意識が戻ってきている。
こういう本屋さんは、疲れない。むしろ、疲れが回復するくらいだ。
いや、それでもきっと、店を出た後には、ぐったり疲れているのだろうけど。


1冊手に取ってレジに向かうと、ふたたびKさんに会った。
「悪いなぁ」と思いながらも、少し立ち話させていただく。
コーヒーでも飲んで休んでいくつもりもあって来たのに、
けっきょく一時間近く棚を回遊してしまっていたので、
本だけ買って、エスカレーターを下りる。
下りながら、あ、タワレコだ、と思う。


購入。スタンダードブックストアあべの。
福嶋聡紙の本は、滅びない (ポプラ新書 018)』(ポプラ社


支払いを終えたぼくにKさんがかけてくれた言葉に、
うまい返しができなくって、なんと返せばよかったか、
その後も、ずっと考え続けながら帰った。


車中のとも。
赤坂真理愛と暴力の戦後とその後 (講談社現代新書)』(講談社

正しく表出できれば、問題は自ら癒えていく力を持っている。
言語化できない不調を持ち続けることは、人間にとって最もつらいことのひとつではないだろうか。(p.104)


気になる新刊。(既刊もあるデヨ)
大久保京『猫本屋はじめました』(洋泉社
中川右介松田聖子と中森明菜 [増補版] 一九八〇年代の革命 (朝日文庫)』(朝日新聞出版)
朝井リョウ時をかけるゆとり (文春文庫)』(文藝春秋
渡辺京二津田塾大学三砂ちづるゼミ『女子学生、渡辺京二に会いに行く (文春文庫)』(文藝春秋
井野朋也『新宿駅最後の小さなお店ベルク: 個人店が生き残るには? (ちくま文庫)』(筑摩書房
山東功『日本語の観察者たち――宣教師からお雇い外国人まで (そうだったんだ!日本語)』(岩波書店
大橋博之SF挿絵画家の時代』(本の雑誌社
本の学校書店と読書環境の未来図―本の学校・出版産業シンポジウム2014への提言(2013記録集)』(出版メディアパル)
福間健二佐藤泰志 そこに彼はいた』(河出書房新社
田辺茂一わが町・新宿』(紀伊國屋書店
瀧野隆浩『出動せず』(ポプラ社
関谷英里子,Noritakeえいごのもと 60単語で「イメージ力」を身につける』(NHK出版)
松尾スズキ私はテレビに出たかった』(朝日新聞出版)
池内紀戦争よりも本がいい』(講談社
水島広子10代のうちに知っておきたい折れない心の作り方』(紀伊國屋書店
Emi『OURHOME ~子どもと一緒にすっきり暮らす~ (美人開花シリーズ)』(ワニブックス
肥田美代子(048)「本」と生きる (ポプラ新書)』(ポプラ社


渡辺京二に会いに行く』なんか聞き覚えのあるタイトルと思ったら、
単行本のとき、ミシマ社さんとこの『仕事のお守り』*2で紹介されていたのだった。
その亜紀書房版の単行本*3、装丁は矢萩多聞さん。


『日本語の観察者たち』「そうだったんだ!日本語」というシリーズが出てたの、知らんかった。