とりは食わねど本をついばむ

今夜は、妻が娘ふたりと実家へ。
外食でもするか、という思いをぶらさげつつ、
心斎橋へ出る。こないだ探すことすら忘れていた、
クリネタのことが気になっていて、ちょっとだけ、
スタンダードブックストアをのぞくことにした。


この辺にありそうだな、という棚を念入りに見たが、
見つからなかった。諦めて店員さんに尋ねようとしたが、
手が空いている人が見つからない。仕方なく、とりあえず、
ラクタ携帯で目当ての書影を表示させて、店員さんを待つ。
ところが、書影を目にしてから棚に目をやると、あった。
見つかった。思っていたより小さい判型で、
場所も置き方もちょっと変化球だった。


けれども顔を見てから探すと、
こうも見つけやすくなるものかと、
改めて、本の探し方を教わった気になる。
買うか買わないかは、中身を見てからにしよう、と、
パラパラする。島田潤一郎さんの文章がある。
他にも、思ってたよりたくさん、
本屋さんの記述がある。


買わなくてもいいかもな、と思ったが、
島田さんの文章を、ゆっくり読みたいな、と思い直した。
クリネタを抱えて、手の空いた店員さんに尋ねた。
「お会計は、下と一緒でもいいですか?」


地下に下りるエスカレーターで、いい匂いがする。
僕がスタンダードブックストアでいつも感じる不満は、
このいい匂いのする食べ物が、なんなのかが分からないことだ。
食欲をそそるこの匂いの元の食べ物が目の前に現れたことは、
一度もない。カフェのメニューを眺めてみても、
あの匂いの秘密は書いていないのだ。


購入。スタンダードブックストア@心斎橋。
糸井重里松本大洋ふたつめのボールのようなことば。 (ほぼ日文庫)』(東京糸井重里事務所)
『クリネタNo.30 2015年 夏号』(クリネタ)


お腹がすいたな、という思いを耳に引っかけて、
なんばの方へ歩く。途中ブックオフを覗く。
探している文庫や漫画を見つけやすい古本屋は、
ブックオフだなぁ、と思う。それがあるかないか、
分かりやすい。時間がないときも、ちょっと覗く気になる。


購入。BOOKOFF PLUSなんば戎橋店。
宮部みゆき模倣犯3 (新潮文庫)』(新潮社)
宮部みゆき模倣犯(四) (新潮文庫)』(新潮社)
かわぐちかいじ沈黙の艦隊(4) (講談社漫画文庫)』(講談社
エーリヒ・ケストナー、若松宣子、フジモトマサル飛ぶ教室 完訳版 (偕成社文庫)』(偕成社


珍しく今夜は、ジュンク堂書店難波店にも足を伸ばした。
二度目だったので、ことさら調べずにうろうろしたが、
場所が分からない。高島屋前に来てギブアップ。
ラクタ携帯をポチポチする。


ジュンク堂書店のサイトはガラクタ携帯ではアクセスできないので、
googleの検索結果の画面で住所だけ調べて、地下街の地図を見てみる。
あっちか。全然見当違いのところをうろついていたってわけか。
OCAT北出口まで来て、ようやく前回の記憶がよみがえる。


前に来たときは、文芸書や人文書の棚を見ただけでおなか一杯になってしまったが、
今回は児童書の方にも足を踏み入れた。「セーラーとペッカ」シリーズの、
持っていない奴を見たかったが、見つけられず。


購入。ジュンク堂書店難波店。
本の雑誌編集部『この作家この10冊』(本の雑誌社


今日、気になった本。
飛ぶ教室 42号 (五味太郎編集号)』(光村図書出版
佐々木敦小説家の饒舌』(メディア総合研究所)
甲斐扶佐義ほんやら洞日乗』(風媒社)
ピーター・メンデルサンド、山本貴光、細谷由依子『本を読むときに何が起きているのか  ことばとビジュアルの間、目と頭の間』(フィルムアート社)
千葉聡『海、悲歌、夏の雫など (現代歌人シリーズ)』(書肆侃侃房)


車中のとも。
杉浦範茂『絵本の絵を読み解く』(NPO読書サポート)


杉浦範茂が謝ってばかりいて面白い。『はらぺこあおむし』の回など、
絵本についてはほとんど何も言ってないような感じさえする。
書き出しの「言い訳」部分が面白い。


『おおかみと七ひきのこやぎ』の回も、面白かった。
動物の擬人化に一貫性がないことをあげつらう杉浦さん。可笑しい。


それにしても、ジュンク堂書店難波店にはたくさん本があった。
あるところにはあるな、と思うと同時に、それでも無い本もあるのか、とも思う。
その無かった本がどうしても欲しかったとして、そういう本が何冊かあったとして、
違うお店、それもとても小さなお店に、その何冊かが揃っていたとしたら、
わくわくするだろう。


僕にとって本屋さんの魅力は、必ずしもお店の在庫数や広さと比例するわけでなく、
その時に、自分の好奇心を刺激してくれる本がどれだけあったか、
ということに尽きる。その打率が高い本屋さんに対して、
好意を持つ。「あの本屋さんが好きだ」と思う。


なるべくたくさんの人をわくわくさせるのが、よかろう。*1
何人くらい、という目標は、店によるだろう。
僕が耕す本棚は、どれだけの人を、
わくわくさせられるのだろうか。


ゆうべは、『瀬戸内海のスケッチ』*2を読んでいて遅くなってしまったから、
今夜は早く寝たかったのに、こんな遅くに帰ってきてしかもまだ夕飯を済ましてないときた。
コラッ!と叱り飛ばして泣かせてやりたい。自分を。あぁ、赤信号が点滅しておる。

*1:同じ人を、来るたびにわくわくさせるのも、大事だ

*2:黒島伝治山本善行瀬戸内海のスケッチ―黒島伝治作品集』(サウダージ・ブックス)