歩く速度で見える景色

ゆうべ、後輩とメールをやりとりしながら、
どんどんと鼻の穴が膨らんできて、
今朝はするりと目が覚めた。


久しぶりに走らずとも間に合う時間に家を出た。
いつも時間がなくてつっかけていく穴の開いた靴でなく、
きちんと紐を結ぶ靴を履いて、駅まで歩いた。


駅まで、歩いた。


充電に失敗して、息も絶え絶えなケータイから、
後輩にメールを送る。話し相手がいれば、
ぼくの思考も、多少は進んでいくようだ。
電池が少ないのでタイムラインは追わず、
送品表をチェックした後、ページをめくる。


車中のとも。
木村俊介『善き書店員』(ミシマ社)


小山貴之さんのところ。ぼく自身はこんなにも、
過酷な経験はしていないのだけれども、すごく、
身につまされる感じ。山下書店時代の話がほとんど。
東京堂書店で、これからまた新しくやっていく、
という終わり方にほっとするのであるけれど、
第2章の扉に引用したフレーズを木村さんが選んだわけが、
気になって、やっぱり不安が募る。


堀部篤史さんの話は、もはや異業種の話みたいに聞こえるが、
けれどもそれはそれで、「生き方」を勉強させてもらう、みたいな。
新刊配本がない、というだけで、もう全く違うペース配分だろうな。
でもまぁ、ぼくはぼくの畑を耕して、ぼくの野菜を育てるさ。
堀部さんの野菜を好んで食するけれども、それはそれで。


そして藤森真琴さん。いろんな書店員さんがいるなぁ、
と思った。なんか、同じ「書店員」として、くくれないくらいの。
まぁ、そりゃそうなんだろうけどね。普通に、「いろんな人間がいるなぁ」
みたいな。中高生のころに本という「毒」にやられたという、
そのやられっぷりがしかし、尋常じゃないんだけれども、
でもたしかに本というものはそういう毒を持っているよなぁ、
と、思わせられる、それを体現してくれてありがとうございます!
とすら言いたくなるような、やられっぷり。

でも、そうして一回ぐっと潜ってあがってきた体験のあとには、普通に本を読めるようになった。でもあの時の「ほんとうにひとりぼっちだったな」という感触はよく覚えていますから、本を売りながらもどこかのところでは、「気をつけてくださいね」みたいには思うんですよね・・・・・・。(p.131)


「接客を大切にしたい」というところを読んで、
本屋さんとして、「本」以外にも大切な肝がある、
というかむしろそっちの方が大切なのかも、
というところに、うーんと唸る。そう思う瞬間が、
こんなぼくにさえも、なんどかあったからなんだろう。


難しいけれど、それはやっぱり、大切なことで、
売り場だけのことではなく、毎日の生活の中で、
「感じよく接する」という姿勢が常態でありたい。
妻とか、娘に対しても。


気になる新刊。
こどものとも 2014年7月号』(福音館書店
かこさとし加古里子)「だるまちゃんとにおうちゃん」、シリーズ8作目!