雨の一箱古本市

前夜、「明日は中止だろう」と高をくくって、
それでも一箱古本市の準備を遅くまで続けて、
念のため、朝7時に起きて、いや、正確には、
5、6分遅く起きて、青秋ブログを見たが、
開催・順延情報を見つけられず、寝ぼけ頭で、
ツイッターを見た。


「開催します!」


・・・マジですか?


ローテンションで何かへの呪いのことばを
ぶつぶつ呟きながら、木箱をプチプチでくるんだり。
寝押ししようかと言っていたとりエプロンも、
当然、寝押し忘れてシワシワのままだ。
(順延だと思っていたからね)


重すぎるカートでガラガラと騒音を撒き散らしながら、
元住吉の駅へ向かう二人は既に傘をさしている。
妻など、長靴だ。とても一箱古本市に出かける格好じゃない。
しかし歩きながら、スタッフの皆さんの尽力を思い、
ただ箱を出す人とスタッフさん(助っ人さん)たちとでは、
決行・順延への判断に対して、全然違った感想を持つだろうな、
と思った。「箱出すだけの奴は、気楽でいいやね」


カートを引いていると、いつもより「東京」がイジワル。
細かい段差や階段のみの乗り換えに苦しみながらも、
時間通りに根津駅へ到着。あ、出口反対だった。。。
今はないオヨヨさんの店跡まえに出ちゃったよ。
こっちからだと、意外と遠いよ。

ガラガラと宗善寺へ向かう。最後の坂が厳しすぎる。
宗善寺に到着するも、ぱっと見、誰もいなくてとまどう。
青秋の中村さんが右手の東屋に潜んでらした。(大げさ)
くじを引き、9番を当てる。右から2番目。
このくじのおかげで、つん堂さんと楽しくお話ができたのだが、
それはまだ先の話。



箱を開いて、準備を始める。久しぶりすぎて、
やり方を忘れている。両隣のひとが来ていないのをいいことに、
机いっぱいにモノを広げながら準備。お墓側の箱の横に、
なぜか「もす文庫」のビビ猫写真を貼る。反対側には、
看板娘、宮沢りえちゃんを配置。


11時まではダメ、
ということでお客さんなどいないのに、
律儀にふたをしめるとり本屋。


10番をひいたのは、つん堂さん。(id:tundow
こぶりな箱に控えめに並べられた本のすごそうなこと。
そのすごさが実感できない僕は、新刊野郎。
ご本人のことばを借りれば、「古本好きな人は気に入るが
既に持っている本、古本知らない人にすれば高すぎる本」
ということ。とりにしてみれば、「すごそうな本」。


とはいえ、古本好きな人たちが、
どんどん買っていくじゃないですか。
先輩M氏が現れるまでオケラだったとりは、
冷たい汗と寒風と「ありがとうございました」
という周りの方々の声に震えておりました。


向かって左は、どすこいフェスティバルの皆さん。
東大クイズが始まると、ついつい耳をそばだててしまう。
お買物したお客さんへのアトラクションが盛りだくさん。
オカタケさん(id:okatake)も、思わず「ナニが出るかな×2〜♪」と
歌ってらっしゃいました。(他のヒトがさいころ振ってるのに)


その岡崎武志さんは、午前中だけで交通費、
弁当代、打ち上げ代くらいは稼いだ、とのこと。
とり本屋が一冊も売れていないことは内緒。
前の日にコメントしてくれていたにも関わらず、
その場では声を掛けられなかった、恐れ多くて。


その後、M氏やS氏がやってきて、ご祝儀買いを
してくれたので、ちょっとだけ心が温まる。だが寒い。
とみきちさんとつん堂さんとの会話に耳をすましたり、
古書ほうろう宮地さんやオヨヨさんの視線(箱への)に、
おしっこちびりそうになったりして過ごす。
ナンダロウさんがやってきたときには、
迷子が父親を発見したような安心感を覚えた。(なぞ)


妻の買ってきたたこ焼きを食べ終え、墓も見飽きたので、
遠征することにする。なぜか不忍通りを通って古書ほうろうへ。
選ぶ道を間違えたな、遠い、遠い。歩きながらツイッターで、
つん堂さんを発見、フォロー。ちなみにつん堂さんを探すため、
一箱、一箱古本市、古本、などのキーワードでは見つからず、
決め手になったのは「オヨヨ」だった。


ようやく古書ほうろうに到着すると、外の棚に、
もさ夫発見。挨拶して、店の中へ突入。つん堂さんの
教えてくれた通り、本の内容が変わっている(様な気がした)。
古書信天翁の「独立」*1によって、棚構成も変わったそうな。


ますぼんの待つ(待っていない)一箱スペースにたどり着く前に、
一瞬、古書ほうろうの気合に打ちのめされた気がして、
歩みが遅くなる。「本に囲まれて一箱古本市だなんて、
古書ほうろう組は羨ましいなー」などと呑気なたわごと、
本気の棚に囲まれては、あたしの箱では十分もたたないうちに
いたたまれなくなって、ほうほうのていで帰宅したことでしょう。
怖い、怖いよ、古書店内での、一箱出店。


でも、ますぼんは、いたっていつものペースで、
お客さんと談笑していた。ままどおるをいただいた。
さすが、郡山から何度も遠征しているだけのことはある。
古書ほうろうの棚にも負けず、雨ニモ負ケズ
アド街宣言で、ビビ猫ブロマイドいただきました。



いただいてばかりいたら、本を買うのを忘れた。
というか、ほとんど本も吟味することもなく、
談笑するますぼんを置いて、私は店を出た。
コシヅカハムを横目でにらんで通り過ぎ、
初めての古書信天翁を目指す。


有名な夕やけだんだんは僕も知っていて、店の入っているビルは、
すぐに見つかった。中目黒のgiggle cafe に来た気分。
外階段、2階。看板がかわいい。


傘を店外の傘立てに置いて店に入ると、意外と広い。
中でちょっと右側奥に折れるような変形の部屋。
カウンターがけっこう広めに取っている。
雰囲気が、とっても濃い。お客さんもたくさん。
一箱たちは、店の本と見分けがつかない感じで、
そこここに置いてある。箱の主も、客に溶け込んでいる。


貸本喫茶ちょうちょぼっこを思い出した。
なんだろう、雰囲気かな。飲み物でも出しそうな、
本好きのお宅にお邪魔したような気分。
今度、ゆっくり遊びに来ます。


そして、これは後でナンダロウさんにも訴えたが、
「秋も一箱古本市2010」のクリーム色の地図を見ながら、
一本道を宗善寺へ向かったら、迷った。ライオンズガーデンへの
曲がり道を過ぎた後、「T字路左」みたいなところ、
あるっしょ?いやん、迷いまくってしまいました。
しかも、「猫」ってつく店がいくつもあるし。
萩原朔太郎かよ!とちょっと怖くなったりネ。


宗善寺に戻ってくると、「遅かったですね」とつん堂さん。
ハイ、迷ってしまいまして。ツイッターでフォローしたことを
告げると、既にご存知でフォロー返していただいてました。
その後も、本の話をあれこれとしているうちに、
終わりの時間が近づいて、アンケートと売り上げ集計表が、
売り上げ集計表???が、配られました。売り上げ?


2冊、600円、か。と思ってつり銭箱を開けば、
妻が留守中に売ったスリップ一枚。ああ、3冊目。
3冊、900円か。隣りでどすこいさんたちが、
計算機を探している。計算機、持ってます、
使わなくて済みそうですが。心の中でつぶやく。


終了間際、どすこいさんのひとり、
和服のおねいさんが、文庫を一冊買ってくださる。
既に3冊900円と記していたのだが、これで、
4桁の大台にのった。ありがとう、おねいさん。


誰にも聞かれていないし、誰も見ていないのに、
4冊1,200円の記録をクリアファイルにいちいちしまって、
終了の時間を待つ。酔った男がやたらと感激しながら、
「やばいな、どんどん買っちゃうよー」と言って、
つん堂さんの箱から何冊か買っていった。幸せそうで、
こちらまで嬉しくなる。


僕と入れ替わりで「もす文庫」を訪問していた妻が戻る直前、
終了が告げられた。えー、終わっちゃうの!と悲鳴をあげる客は、
いなかった。ああ、秋も一箱古本市2010、愁傷、終了。
妻は、もす文庫で買い物をしたらしい。自分では気づかなかったが、
なんだか咎めるように「買ったの?」とたずねたそうな。
咎めるなよ、とり。むしろ、お前も買っとけ。


雨が、ざんざん、すごく降っている。つん堂さんも
「帰るときにこんなに降らなくてもいいのに」と言いながら、
荷物をまとめている。つん堂さんは打ち上げには行かないそうな。
また、そのうち。妻の手伝っている「豆本カーニバル」で会うかも。


手製木箱(本が入ってなくても重い)をビニールやぷちぷちで
厳重にくるんでカートに載せて、宗善寺を後にする。
さようなら、さようなら。ますぼんと、イマーゴで合流した。
とり本屋の成果に、ますぼん絶句。まあね。(自慢?)


あらためて、さまざまな反省が胸を去来。
次があれば、もっと本を吟味したいな、と。
どう選ぶかについては、全くアイデアが出ないが、
ともかく「恥ずかしさ」に似た気持ちでココア飲む。


再び雨中に身を投じて、打ち上げ会場へ。
すでに玄関口はいくつもの箱で埋め尽くされていたが、
なんとか寄せ寄せして、箱を置かせていただく。
空いている席は、なんと、ナンダロウさんの前。


店の中は、本好きであふれかえっておる。
老若男女、本好き。なかなか壮観だ。
賞の発表が始まり、和やかな気持ちで眺める。
前回は、生意気にこっそりどきどきしたりしていたが、
今回は、なんといっても4冊1,200円だし、
本を手に取る人すらほとんどいなかったし、
お気楽、極楽、とビールを飲んでいると、
古書信天翁賞で、鮮やかなフェイントをかました後、
「宗善寺のヒトは、もらってないですね?」という
焦らしの後、「とり、本屋さんにゆく」が受賞。


はてな


受賞理由は、箱!あぁ、箱を作成した春の日が、
走馬灯のように駆け巡る。あぁ、楽しかったなぁ、
箱作り。本を入れる前からとても重いこの木箱。
よかったね、よかったね。認めてくれるヒトが、
うれしいね、よかったね。


深圳のお食事券、をいただいてしまいました。
うわー、嬉しい。ありがとうございました。


どうやら、僕が古書ほうろうへ遠征している間に、
怪しい男がやたら写真を撮ったり箱についていろいろ尋ねていた、
と妻が記憶していた。それが古書信天翁さんじゃないか!
「どおりで出箱者の情報をプリントアウトして持ってた」
あ、そいで僕は古書信天翁さんをウロウロしていたのだ。
すれ違いだ、入れ違いだ。今度、ゆっくり遊びに行きます。


電車を乗り継いで、ブレーメン通りをガラガラ歩き、
3階まで箱を抱えてのぼった僕は、腰を痛めた。

*1:飛び立つ「古書信天翁」と、「古書ほうろう」のこれから:http://d.hatena.ne.jp/koshohoro/20100602/p1