曇りの一箱古本市

ウォーク・ドント・ラン―村上龍vs村上春樹


今週は、火曜日が休みだったので、ラッキーだった。
あまりの曇天に洗濯モノは部屋干しにして、
一箱古本市に出かけた。


以前は曇り空が好きだったのだが、
逗子に越してきてからは、なんとなく、
曇天に心が安らぐことが少なくなった気がする。


東京に出れば、どうだろう、とか、
思いつつ、車中は読書にいそしむ。


読了。
佐々木俊尚キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)』(筑摩書房

関係は無数に立ち現れては消え、つねにアドホック(そのときどき)に存在する。そして、そうした人と人のそのときどきの新鮮な関係はつねに確認していかなければならない」(p.256)


けっこう、間が空いてしまってからの読みつぎだったが、
終盤に向けて、なんというか興奮がつのっていった。
読み終えた後も、千代田線に乗り換えてから前半を
読み直してみたり。うーむ、なんというか、
何かを始めたくなりました。


紹介されていて気になったのは、
清水博『生命を捉えなおす―生きている状態とは何か (中公新書)』(中公新書
あと、イラン映画の『彼女が消えた浜辺』。
巻末に、「本書を書くために参考にし、時には引用も行ったコンテンツリスト」を
掲載しているところも、感服。


と、はるばる千駄木に到着。
雨の気配が色濃い曇天もようにも関わらず、
谷中銀座には大勢の人が出ているではありませんか。
ツイッターでつん堂さんの出店場所を確認し、
まずは信天翁へ。*1


店の前にあった実行委員会の箱?から、
さっそく一冊購入。そして、マップをもらう。


購入。
江戸川乱歩([え]2-2)少年探偵団 江戸川乱歩・少年探偵2 (ポプラ文庫クラシック)』(ポプラ社


そうして、信天翁のお店へ突撃。人が多い。
箱にはたどり着けず、店内をうろうろ。
ん?なにやら可愛らしい鳥のイラストが。
「音の台所 ブルクミュラー鳥ノオト」という
展示を行っているらしい。楽譜や詩、イラストなど。
切手も売っている。これは関連しているの?
ヤンバルクイナの切手を手にして、ふと、
つん堂さん(id:tundow)に気がつく。ご挨拶。


奥さんがまだ来ていないので、散策にいけないらしい。
ふーむ、店番の奥さんをチェックする目的は果たせず。
魅力的なちくま文庫・中公文庫・新潮文庫の復刊シリーズなど、
ハードルの高い良書をかきわけて、選んだのは、この一冊。


購入。
川本三郎言葉のなかに風景が立ち上がる』(新潮社)


先ほどの切手と、ポストカードを購入。
あまりにあからさまな「鳥柄チョイス」に、
とり本屋であることが信天翁さんにバレてしまう。
えへへ。ご挨拶。本を買わずにすみません。


天気が怪しいので、引き返して古書ほうろう覗いて、
もう帰ろうかな、と思って階段を降りかけて、
いやいやせっかくだからあっちを回って帰ろうか、
と思って戻りかけて信天翁前をウロウロする。


結局、貸はらっぱ音地へ行くことにした。
夏葉社さんの箱に『昔日の客』を確認、
人が多くいたので、後回しにして次の箱。
ユウマリ堂さん。ここでは、次の一冊。


購入。
滝田ゆう下駄の向くまま―新東京百景 (講談社文庫)』(講談社


くるっと回って夏葉社さんの箱に戻る。
ふと、かの有名な村上龍村上春樹の対談本、
『ウォーク・ドント・ラン』を発見する。
『なんだー、文庫本じゃないのかー』とか思いつつ、
手に取る。「これ、文庫は出てないんですかね?」
などと気安く話しかけてしまった店主さんは、
夏葉社の社長さんでした。(名刺まで頂戴してしもた)


「文庫は出てないんですよ〜」とやさしい応対。
2500円の値つけも、「他ではもっと高いんです」
と押し付けがましくない解説にぐっとくる。
というか、文庫が出てないということは、この本が、
かの有名な、まさにその本ということですか!
帯までついているじゃないですか!


『昔日の客』と迷っちゃうみたいなことを口走ると、
「こっちは普通の本屋さんでも買えるし、なんてね」
みたいな営業色ゼロのトークに陥落。まとめて購入。


購入。
村上龍村上春樹ウォーク・ドント・ラン―村上龍vs村上春樹』(講談社
関口良雄昔日の客』(夏葉社)


いやぁ、もうお腹いっぱいだな、と思いながら、
ギャラリーKINGYO、往来堂書店と回る。
往来堂書店の前の箱には、やはり人がたくさん。
ならばと店内に潜入する。なんともはや、
ここの棚は、魅惑的ですなぁ。笈入店長の、
経営努力の賜物、なのかしらやっぱり。


数ある欲しい本たちに目をつぶり、
それでも次の二冊を買ってしまう。
今日は、もうしょうがないよ。


購入。往来堂書店。
柴田元幸モンキービジネス 2011 Spring vol.13 ポール・オースター号』(ヴィレッジブックス)
新井敏記『鏡の荒野』(発行:Issue.inc 発売:スイッチ・パブリッシング


思い残すことはない、と思いつつ、
古書ほうろうの前まで行ってしまった。
雨が降り出してきて、すぐに駅を目指してしまう。
さようなら、千駄木


車中のとも。
堀江敏幸いつか王子駅で (新潮文庫)』(新潮社)

「居酒屋で珈琲を注文するたあ大した度胸だが、もずくを食ったあとに珈琲を飲むなんて無粋な真似は控えたほうがいいな」(p.7)


やばい、面白い。


気になる新刊。(既刊もあるデヨ)
新井敏記『夏の水先案内人』(スイッチ・パブリッシング
レベッカ・ソルニット、高月園子『災害ユートピア――なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)』(亜紀書房
デイヴィド・マクラガン、松田和也アウトサイダー・アート 芸術のはじまる場所』(青土社
北尾トロ、下関マグロ昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(ポット出版
石田千並木印象』(平凡社
橋口幸子『珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎』(港の人)
坂崎重盛「絵のある」岩波文庫への招待』(芸術新聞社)
松浦弥太郎若木信吾居ごこちのよい旅』(筑摩書房
鷲田清一感覚の幽(くら)い風景 (中公文庫)』(中央公論新社
沢木耕太郎旅する力―深夜特急ノート (新潮文庫)』(新潮社)


途中のコンビニで買った傘は、
ついに差すことはなかった。
曇天を眺めることもなかった。