本屋にある歓喜

これからの本屋読本


今日も他店応援。
月曜よりは1本遅い電車。
休みの日にこしらえた、「夏のプレイリスト」で、
ひとり芝居への気持ちを育てつつTLをさかのぼる。


録画を見ているときのツイートがおとなしいな、
と思っていたセキグチさんが、職場でフェアを展開していた。
そのスピード、その熱量。「お前はやらないのか」という声に、
耳をふさぐ。代わりに、髭の男たちの歌を聞いている。


こないだと同じお店で朝食。
ノートにらくがき、ひとり芝居について。
向こうの席に、アイスコーヒーふたつと、
トーストをトレイに載せた女性が座った。
ノートに(ダブルアイスコーヒー?)と書いた。
かなり長い時間が経ってから、連れの男性が現れた。


勤務開始まで、まだ間がある。
トイレに立ったタイミングで店を出てしまったので、
所在なく、立ったままで本を読んでみた。


立ち読み。
内沼晋太郎『これからの本屋読本』(NHK出版)


「はじめに」のまっとうな文章を素直に読む。
シンプルに、本のこと、本屋のことについて書いてある。
一行目の、「本が好きで、二〇〇三年、新卒で入社した会社を二か月で辞めて、
フリーターになった」という部分だけを、朝日新聞出版の著書*1のまえがきでは、
ちょっと読者を煙に巻くような感じで5頁に渡って書かれていた。
いや、さすがにそれは言い過ぎか。でも、あの本を書いたとき、
内沼さんの身にまとっていた「よくわからない人」感は、
圧倒的な「本屋の人」感に変わったと思う。
そんな風に気張ったまえがきを書かずとも、
みんなが内沼さんに耳を傾けている。


もちろん、知らない人にとっては今なお、
「よくわからない人」であり続けているとは思うのだけれど。
(そして僕はあの気張ったまえがきも大好きだった)


「途方もなさの構造」を読んだところで、そろそろ勤務時間だ。
心の中で、「それではその途方もない本屋で、働いてみましょう」
というナレーションを流しながら歩く。実際、まだ二回めの店なので、
途方もなさを十分に感じることができる。おはようございます。


おひるのとも。
内沼晋太郎『これからの本屋読本』(NHK出版)

本屋を一周することは、世界を一周することに似ている。(p.15)


不慣れなレジで、お客さんから本を受け取り、
お客さんの背後に広がる売り場の景色を視野のはしに収めながら、
不意に、関西に移ってきて、再び本屋で働き始めた初日の、
あのわきおこるような喜びがよみがえってきた。


お店のことはよく分からない。
でも、かろうじてレジは打てる。
お客さんが本を持ってくる。レジを打つ。
ありがとうございました。あぁ、
お客さんが本を持って帰る。


それだけのことが、こんなにも嬉しい。


退勤後、地下鉄で天王寺へ向かう。
先日予約したイベントチケットを引換しておこうと思ったのだ。
なんでも、18時までに引換してください、というのがルールみたいで、
当日、仕事の妻に子どもをバトンタッチして開演ぎりぎりに駆けつける身としては、
せめて支払いなどではご迷惑をかけないようにしておきたいところだった。


宇田さんの新刊を、あべので買おうという思いもあった。
レジから北村さんが手を振っている。「ご予約ありがとうございます」と、
何もかもオミトオシな感じの北村さんと、読んだ本の話とか近況とかを、
卓球の試合前のラリー練習みたいにビシバシ交換する、わずかな時間で。


他のお客さんがレジに来たので、こちらは売り場へと流れる。
そうして、気になる本の大群に、思わず声がもれる。「マジか」
それは、単に気になるというだけでなく、「買おう」と思う本が、
群れをなして並んでいる、次から次へと顔をだすのであった。
間違いなく、お金が足りない。スペースも足りない。


購入。スタンダードブックストアあべの。


宇田智子『市場のことば、本の声』(晶文社
阿久津隆『読書の日記』(NUMABOOKS)
石橋毅史『本屋な日々 青春篇』(トランスビュー
グラフィック社編集部『グッズ製作ガイドBOOK (納期・単価・最小ロットもすべてわかる!)』(グラフィック社)


久しぶりに、手に重たいくらいまとめて本を買った気がする。
特に重ための本、というのもあるな。冊数は、
4冊だけども。おもーい。嬉しい重み。


気になる新刊。(既刊もあるデヨ)
堀江敏幸オールドレンズの神のもとで』(文藝春秋
白井青子『ウィスコンシン渾身日記』(幻冬舎
高橋久美子いっぴき (ちくま文庫)』(筑摩書房
山崎まどか優雅な読書が最高の復讐である 山崎まどか書評エッセイ集』(DU BOOKS)
影山裕樹『あたらしい「路上」のつくり方 実践者に聞く屋外公共空間の活用ノウハウ』(DU BOOKS)
山田ルイ53世一発屋芸人列伝』(新潮社)
佐渡島庸平WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜 (NewsPicks Book)』(幻冬舎
退屈をぶっとばせ! ―自分の世界を広げるために本気で遊ぶ (Make: Japan Books)』(オライリージャパン
Q.B.B.久住昌之久住卓也古本屋台 (書籍扱いコミック)』(集英社
片岡義男くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社
須賀敦子ユルスナールの靴 (河出文庫)』(河出書房新社
山内マリコ選んだ孤独はよい孤独』(河出書房新社
俵万智与謝野晶子俵万智訳 みだれ髪』(河出書房新社
平木典子『アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法 (講談社現代新書)』(講談社
三浦哲哉『『ハッピーアワー』論』(羽鳥書店
小林百合子(著)、野川かさね (写真) 『山小屋の灯』(山と渓谷社
栗原裕一郎、藤井勉、大和田俊之、鈴木淳史大谷能生、『村上春樹の100曲 (立東舎)』(立東舎)
西村泰紀『その靴、痛くないですか? 文庫版 あなたにぴったりな靴の見つけ方』(飛鳥新社
ドラゴン画廊・リー鳥山明DRAGON BALL外伝 転生したらヤムチャだった件 (ジャンプコミックス)』(集英社
岩崎健一(著)、岩崎航(著)、齋藤陽道 (写真) 『いのちの花、希望のうた』(ナナロク社)


須賀敦子の本が、こんなにもくっきりと目に映る。
大竹昭子さんの本*2を読んで、はっきりと、須賀敦子への関心が立ちあがった。
今日は買わなかったけれど、少しずつ、読み集めていきたいと思った。