なじみの仲間と本話航海

来年の、挨拶はがき用の写真を撮りに、
東大寺の近くの芝生まで家族でぶらぶら。
きたまちの露店をちらりと見て、お好み焼き屋へ。
関西出身の妻にとっては外食でお好み焼きを食すのは、
いささか抵抗があったか、なかったか、東からの移民であるボクには、
美味しい昼ごはんであった。


髪を切りにいく3人と別れ、ひとり、家に引き返す。
道中に読む本や、トークの際に使うネタ本などを集めて、
急いで家を出たけれど、14時の特急には間に合わなかった。
島本に15:26着か。古本市、まったく見れないな。


まったく見れないな→しまもと霜月の一箱古本市


車中のとも。
長嶋有いろんな気持ちが本当の気持ち (ちくま文庫)』(筑摩書房


近鉄線では、爆睡してひとつも読めなかった。
アリバイ作りのようにJRに乗ってから文庫を開いた。
まもなく島本に着いてしまう。京都から、近い。本を読むには、
近すぎる。車窓の風景を楽しむのが相応しい乗車時間だけれど、
近鉄線で寝こけてしまったので、仕方ない。文字を飲まねば、
心が渇いてしまっているのだよ。


それにしても、あと1時間遅く来てたらあきらめもつくのに、
なぜ読めもしない本の選考に手間取って14時発の京都行き特急を逃してしまったのか。
島本駅から長谷川書店に向かって歩きながら、もう帰りたいと考えている。
そうとは知らない長谷川さんから、優しいDMが届いて、
申し訳ない気持ちになる。幼児のようなわがままな気分。


古本市の会場はどこだろう。分からないまま、長谷川書店に着いてしまう。
店には入らず、周囲をぐるっと歩いてみる。分からない。まぁ、いいか。
どのみち、終了時間は過ぎているのだ。店に入るとすぐに、
稔さんがいることに気づく。古本市会場にいると思ったので、
不意をつかれる。なんとなく、しゃべりながら、会場の方まで連れていってもらうが、
やはりもう、片づけ始めている。懸念していた、「言の森をあるく」フェアは、
古本市会場ではなく、はせしょの中でやっているとのことで一安心。


店に戻り、「トークの打ち合わせはどうしましょう」とか言いながら、
心は本棚に持って行かれている。天井からあちこちつるされているボードに、
「言の森をあるく」の文章が書かれている。はっきりと、さきほどまでの心のささくれが、
おさまっている。さすが長谷川書店の棚だ、いじけた心にも優しく作用するね、と思う。


やがてトリイ氏が来て、北村さんが現れ、トリイ氏は去り、
砂川さんも来て、妻に頼まれていた本を見つけ、自分の欲しい本は決めかね、
そうこうしているうちに時間ばかりたっていて、
ようやく隣りのカレー屋さんへと向かった。


打ち合わせ、ということはなく、
ただカレーを食べながら、楽しくおしゃべり。
古本市を終えた方々が少しずつお店に集ってきて、にぎやかになる。
なんとも舵取りの難しそうな航海に、長谷川船長ともども、出発。
振り返ってみれば、馴染みのメンバーとの飲み会と変わらない、
好き勝手な放言ばかりを口にして、ときおり視線を向けたものの、
「聞き手」のことはあまり考えない、無責任な態度のわたくしでありましたが、
実に楽しい時間を過ごしました。古本市の打ち上げを、邪魔したのでなければいいのですが。


「本気の本屋の本気でも本屋でもない話」
https://twitter.com/hasegawabooks/status/930943048078434309


トリイ氏が中座している間に、急遽、引っ張り出されてトークに参加してくれた、
とほんのスナガワさんは、鞄に入っていた中公新書長田弘『私の二十世紀書店』を紹介。
準備のないトークは苦手とおっしゃっていたが、とんでもない。紹介したい箇所の読み上げもあり、
その本にたどり着くまでのエピソードも興味深く、会のスタートとして申し分のないお話でございました。


アメリカ文学の話に北村さんがことばを添えて、それがまた、(おそらく)読書量に裏付けられた、
「そうなんですか!すげぇ」っていう感じの、さりげなくトークの味わいを深める香辛料になって、
ボクモソウイウ調味料ヲぱっぱトフリカケテミタイヨ、と、再び幼児返りして、
分不相応な振る舞いに心がはやったのですが、幸いにもアルコールが作用して、
いい気分になっていたために、鼻の穴をふくらますにとどまった。よかった。


戻ってきたトリイ氏は、先週、京都でボクに話してくれた、
卒論のときのエピソードに出てきた本を持ってきた。
高知の「かたりあふ書店」での話。かたりあふ書店は、
『THE BOOKS green』*1にも載っているそうです。


北村さんが紹介していたのは、荻原魚雷さんの、
『借家と古本』。これを読んで、教養としての読書ではなく、
もっと自分の生活に沿った読み方をするようになった、
といったような話だった、かな、北村さん?


そもそも「教養」を追っていなかったボクは、北村さんの振りに、
いなすような返ししかできなかったけど、やっぱし、北村さんみたいに、
いっぱい読んできた人から「読書量は問題じゃない」って言われても、
ちょっといじけた気持ちになってしまう。でもまぁ、結果として、
自分の好きなように読めばいい、っていうのは、大賛成なんだけど。


「これは読むべき」ということばには、ちっともそそられないボクだけど、
それでそそられちゃったヒトはその「読みたい気持ち」に素直に読むのがいいと思うし、
ボクはボクで、自分の読みたい気持ちを焚きつけてくれる、「べき」に替わることばを、
日々探し続けているのである。それはたとえば、北村さんとかスナガワさんのように、
「こういう本を読んで面白かった」という話で、そこには「べき」の匂いは感じない。
自分の経験してきたわずかな蓄えに共通する何かがそこに光っている本を、
ちょっとのぞいてみようという気になるんじゃないかな。


『借家と古本』は、家にあるので、また読みなおしてみたい。
字が小さいから、車中のともには向かないので、寝床で読みたい。


長谷川船長は、図鑑のはなし。
スナメリの話をボクが拾いすぎちゃったので、
なんだかむちゃむちゃになってしまったようで申し訳ない。
カレー屋さんは、トークなんだか打ち上げなんだかよく分からないカオスへ。


たくさんの人とお話をして、大満足。迫る終電の足音にもめげず、
閉まっているシャッターをこじ開けてまではせしょでの買い物に固執したボクは、
とにかく高ぶっている購書欲を静めるための本を棚に漁った。


購入。長谷川書店水無瀬駅前店。
柴田元幸代表質問 16のインタビュー (朝日文庫)』(朝日新聞出版)
フランツ・カフカ、吉田仙太郎『夢・アフォリズム・詩 (平凡社ライブラリー)』(平凡社
森見登美彦、くまおり純『ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)』(角川書店(角川グループパブリッシング)


帰りの電車でも、スナガワさん相手にしゃべりつづけたとりは、
途中で声がかすれて出なくなった。そんなにもしゃべらなくていいんだよ。
でも、トークでは紹介しなかった『酒はなめるように飲め』『酒はいかに飲まれたか』*2を、
スナガワさんにおすすめできたのは、よかった。ぜひぜひ。


あぁ、そうそう、僕がトークで紹介したのは、セーラーペッカ。
ステフィとネッリもよろしく。菱木晃子さんもよろしく。


セーラーとペッカ、町へいく

セーラーとペッカ、町へいく


古本市は見れなかったが、大好きなヒトたちと会えたので良かった。
あのとき、帰らなくてホントよかった。