秋風の公園で歌う

オール・マイ・ラヴィング (小学館文庫)


家を出て、ケータイでふと、
gmail をチェックして、元上司から、
メールが来ているのに気づいた。ハッとして、
小走りもせず、駅まで歩きながら読んでしまった。


今日は休配日。送品表チェックはなし。
鞄に入った本には見向きもせず、車中一心に、
メールの返信を作る。さまざまな思いや思い出が、
胸に去来する。途中の乗換え駅で、モーニングセット。
興奮冷めやらず、もう一通、メールをこしらえる。かちかち。


去りゆく同僚へのメッセージカードをしたため、
店を出て駅へは向かわず、公園へと足を踏み入れる。
日向はまだ陽射しがきつく、木陰のベンチを選んで、
センパイへと葉書を書いた。トイレに行って戻ると、
ベンチはすでに老人が座っていたので、そのまま通りすぎ、
少し先の木陰で立ったまま、iPod から流れてくる歌を口ずさむ。


優しい気持ちになっている。
この気持ちのまま、働いて、
この気持ちのまま、帰還したい。


車中のとも。
岩瀬成子オール・マイ・ラヴィング (小学館文庫)』(小学館


白石さんと、道ばたで会って、話す。
沈黙をいとわない白石さん。いい。

こういうとき白石さんは、間合いを埋めなくては、と、話のとば口を探して、思いつくことを端から口にする人ではないようだった。ゆったり構えて、相手になにか尋ねられれば答える。沈黙がつづいても、それはそれで子どもたちの野球を見つづけられる。そのような人だった。(p.61)


帰宅直前に、iPod から、「All My Loving」が流れてきた。
岩瀬成子のおかげで、「オールマイラヴィング」の響きを、
福山雅治から取り戻せたような気がしている。