とり、沖縄の本屋さんにゆく


4時過ぎ、妻が声をかけてくれる。
ゆうべ遅かったから、気にしてくれていたのだろう。
おかげで、余裕をもって起床。ひげまで剃った。
リュックだけを背負って、肩掛け鞄を置いていくか、
玄関を出るギリギリまで迷って、持っていくことにした。


外は、文句なしの夜明け前。
いつもより1時間近く早いが、
通りに子乗せ台つき自転車の女がいて、
ギクリとする。駅までにも何人か、人が歩いていて、
早い時間でも、誰かしらはいるものだと感心する。


セブンイレブンでサンドイッチと
ホットペットボトルの午後ティーミルク。
5:10発の準急(前向きシート、嬉しい!)で、上本町を目指す。
せっかくの前向きシートだからサンドイッチを食べようかとも思ったが、
関空行きのバスでは本が読めないから、今はパンより本だ、と思って、
宇田さんの本を取り出す。


この時間の区間準急、けっこう人がいる。
一瞬、みんな早起きだなー、と思ったけど、
あれか、朝帰り組も混ざってるな。土曜早朝。
みんな、これからおうちに帰るんだな。
僕はこれから、沖縄に行くんです。


車中のとも。
宇田智子『本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書)』(筑摩書房


高野文子の絵が、いい。p.6のは、特に新刊書店っぽさが感じられる。
初バイトでうまくいかず公園のベンチで泣く宇田さん、かわいい。

辞めても本屋には行けるのに、またお客さんに戻ったことが思いのほかさびしく、自分でも驚きました。(p.14)


あぁ、この感じにも、覚えあり。何人もの書店員が、
そうやって現場に帰ってくるのだろう。
(帰ってきてください。待ってます)


「何かしたいと思っている人を、本を売ることで応援したい」
と、履歴書の志望動機に書いた宇田さん。僕も、次はそう書く!
とか思って、まだ履歴書を書く可能性をにぎりしめる自分に落涙。


宇田さんとお話しているような気分になるなー。
いい本だ。


鶴橋のあたりで、ふと、降りる駅を過ぎたような気がして焦った。
読むのに夢中になりすぎて乗り過ごしかねない。
危険な本だ。


まだ鶴橋を過ぎていなかった。鶴橋を過ぎてすぐ、本を閉じる。
無事、上本町のホームに降り立った。昨日、予行演習までしたのに、
思っていた改札と違うところに出てしまって焦ったが、
すぐに見知った景色を見つけた。往復のバス券を買い、
なんとかバス待ちの列に並んだ。一安心。


大阪から関空経由でどこかへ行く、という状況が、
バスを待つ人々の「大阪感」を強めている気がする。
久しぶりに、「よそ者感覚」がよみがえる。
たかだか5年の滞在者なのだ。
30年以上、よその空気を吸って生きてきたのだ。
滞在先の大阪(奈良)から、沖縄へ移動する。
旅の空のしたの出来事なのだ。旅情センチメンタル。


前から6番目左列窓側の席につく。寒い。
発車前にサンドイッチを食べ終わってしまう。


バスのとも。
世田谷ピンポンズ『僕は持て余した大きなそれを、』(キャッチ&リリース)


バスでは本を読めない体質なので音楽を。この『持て余した大きなそれ』は、
冬の終わりの旅先で聞くのに最適な曲たちではなかろうか。
旅情を煽ることばに身もだえて、ツイートしまくる。
完全に、はしゃいでいる。この大阪の高速道路は、
首都高を思い出してなんか落ち着く。空は、
少し明るくなりかけている。


車窓から観覧車。
あれは、どこの観覧車だろう。


すべての思いを書きとめることはできないと知っていても、
ツイートしたり、ノートにメモをとったり、記録することに、
必死になってしまうときが、ちょいちょいある。なんだろうね、これ。


第1ターミナル、第2ターミナルと、バスは進んでいく。
飛行機の姿もちょいちょい見える。空港に来ただけで、
もう満腹に似た幸福感を覚えている。


空港に通う趣味、というのもいいかもな。
読みたい本を持って空港に行って、
行き交う旅人を眺めながら、
時おり飛行機に目をやりながら、
本を読む。旅人ごっこ。コーヒー飲みたい。


毎度ドキドキの手荷物検査でさらに旅情をかきたてられて後、
売店の書籍コーナーに立ち寄る。文庫では村上春樹が目立つ気がする。
旅行のともに人気がある、と聞いたことがある。『本屋図鑑』*1だったか。
週刊誌なども、普段勤め先で見るときやコンビニにある奴より魅力が増してる気がする。
絵本なども、幼児の機嫌とりとしての頼もしさが倍増しになっているようだ。


幼年誌はふろくをつけるためかビニールひもでしばってあるが、
コミック誌はフリー。コロコロやコミックにはシュリンクしてあるから、
あえて立ち読みも防がない、といったところか。女性誌も、
読める用のが用意されている銘柄もある。
旅行ガイドコーナーで、最後の復習。
ゆいレール、一日乗車券は買わない。


搭乗前にもう一度、トイレに行っておこうと歩き出して、
ふと、搭乗券がないことに気づいて青くなる。あちこちポケットを探ってみたら、
ゴミレシートと間違えて搭乗券ぐちゃぐちゃになっていた。危ない。捨てそうになるわ。
飛行機まで、歩いて移動。外の空気は、とても冷たい。寒い、とツイート。



機中のとも。
サニーデイ・サービスDANCE TO YOU』(ROSE RECORDS)


家で宛名を書いてきたハガキ2枚に、
本文を書く。誰にことばを向けるかによって、
自分のなかから引き出されることばが変わってくる。
どんなことばを引き出したいかによって、書く相手を選ぶこともあるか。
もう1枚くらい書きたい、誰に書こうか、何人かの住所をメモしてきたが、
決めきれない。これってなんだろう。本も読めず、ノートも閉じた。
『Dance To You』も、あと1曲。


大きく息を吐き出して、自分が、リラックスしていないことを知る。


頭の中にことばがぽつりぽつり、浮かんでくる。
ノートを開いて、書いていく。


機中のとも。
宇田智子『本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書)』(筑摩書房

並べかたを変えたり、整理したり。ただ触るだけでも本は生き返って、お客さんが手に取るようになる。(p.76)


第三章まで読んだ。
沖縄で過ごす時間について、また夢想する。
そうこうするうちに、飛行機はスムーズな着陸に成功する。
拍手は起こらない。窓際の席を享受した者は、飛行機を出るのが遅くなる。
機内放送で注意された通りの海風に吹かれながら、「あったかい。春だな。」とツイート。


ゆいレールに乗る。きっぷ型なので吸い込み口を探してしまったが、
バーコードをかざすタイプの改札。外国に来た、というより、
タイムスリップで未来に来てしまったようなとまどい。
動き出すと、想像していたのと逆方向に走りだした。
空港周りの景色は大好き。樹が多い気がする。


赤嶺あたりの素敵な団地景色に鼻が膨らむ。
洗濯物がきちんと干してあって、人の気配がある。
車窓からの眺めが、とてもいい。ゆいレール、初めて乗ったけど、
とてもいい眺め。一日乗車券を使って、ずっと乗っていてもいいくらい。
なんつって、僕は降りて本屋さんにゆくのだけれど。


美栄橋で降りる。
ゆうべ予約していたレンタサイクル屋に入って、
ママチャリを借りる。京都で借りるときもママチャリだ。
安心のママチャリ。ママチャリでこぎだせば、町はぐっと、
親しい景色で目に飛び込んでくる。自転車に乗った子どもの、
ジュンク堂、先に行く?」という声が聞こえた。


チェックインしようとホテルを目指す途中、
郵便局を発見したので自転車を降りる。
レンタサイクルで気がかりなのは、
お店に寄るときの駐輪のぐあい。
けれどそれよりびっくりしたのは、
土曜日だったので郵便局が開いてなかった。
あぁ、沖縄らしい切手を買って、沖縄のポストに投函したかったのに。


鞄から、飛行機の中で書いたハガキを取り出して、
またしまう。降りたばかりのママチャリにまたまたがる。
ホテルにチェックインして、部屋にはまだ入れず、
リュックを背負ったままこの先の予定が見えないでいる。
フロントで、休日でも開いている郵便局を訊ねると、
「切手ならここでも売ってますよ」と言われて、
普通の柄の52円切手を買ってしまう。
買ってしまった切手をノートに挟み、
ホテルを出る。


昼近くなっている。食事をしたいが、
那覇市立若狭図書館やちはや書房の方に向かうと、
お店がなさそうな気がする。ウロウロと自転車をこいで、
ふいに覚悟が決まる。とりは、本屋さんにゆくのだ。
コンビニで、菓子パンを買い、笑わば笑え、と、
誰にともなく強がって、図書館を目指す。


若狭公園に迷い込み、パンを食べてしまってから、
また引き返す。不意に、若狭図書館のある公民館の前に出た。
ちょうど、公民館まつりの日で、13時から子どもたちが踊ったりするみたい。
とても気になったのだが、時間的にちょっと無理そうだな。
館内に入って、棚の間をぷらぷらと歩く。
けっこう人がいる。沖縄本が、さすがに多い。
そういえば空犬さんは、図書館には行かなかったのだろうか。
空犬さんがブログで紹介していた雑誌はなんだったけ。思い出せないまま、
沖縄雑誌をざっと眺めまわすが、よく分からない。ふいに新聞コーナーの前に出た。


そういえば、沖縄の新聞にも書評は載っているのかしら。
沖縄タイムスの、日曜日のをいくつかめくってみるが、見つからない。
琉球新報のには、あった。念のため、カウンターのお姉さんに訊ねるが、
自信がなさそうな回答。まぁ、明日、琉球新報を買ってみようかな。


外に出ると、さっきよりも人が集まっていて、
ますます公民館まつりに未練が強まりそうになって、
眉間に力をこめて自転車をこぎだす。
ちはや書房は、すぐ近くにあるはず。
さっきカウンターで本を借りていた女性が、
前を歩いている。聞いてみようかとも思ったが、
いつの間にか見失っていた。少しウロウロしていたら、
感じのいい外観の、ちはや書房の前に出た。なんというか、
学校帰りに駄菓子屋に寄ったような気分になる。寄ったことないけど。


それほど不安もなく、建物の近くに自転車をとめて、
外の均一箱をのぞき込む。そんなに珍しいものが詰まっているわけでもない。
沖縄に来て、古本屋さんにやってきた、という実感がぶわーっと押し寄せる。
店に入ると、すぐ左手に帳場があって、男性が店番をしている。
店主さんだろうか。「こんちわ」と言って、そのまま、
カウンター周りのチラシやしおりなどに手が伸びる。
あ、ウララさんのしおりがある。


FMラジオが流れる店内は、思ったより広く、
棚を順番に眺めて歩きながら、だんだんと圧倒された気持ちになっていく。
僕なんかが手も足も出ないような専門書も多くあり、そうかと思えば、
趣味書やコミックなどもきちんとコーナーを形成するだけ存在する。
お母さんに頼まれたものを探しに来たこどもや、
探し物の本をたずねるおじいさんなどが、
店主らしき男性とことばをかわしている。
入り口の扉も開放された状態のこのお店は、
なんというか、とても風通しのよい雰囲気で、
何か一冊、記念になるような本を買ってやろうという気合いも、
するすると蒸発して、気楽な旅の身の上にたちかえってしまった。


夏葉社の本、ボーダーインクの本が並んでいる。
水木しげるの本も、たくさんある。


購入。ちはや書房。
実相寺昭雄ウルトラマンのできるまで (ちくまプリマーブックス)』(筑摩書房


なんとなく声をかけそびれてしまって、
というか、なんと声をかけていいかも分からず、
そのまま店を出てきてしまった。ふたたび自転車に乗って、
今度は、東の方へと向かう。もう一度、美栄橋の方へ。


レンタサイクルのお店を過ぎ、美栄橋を過ぎ、
ちはやで流れてたFM局の前を通過、ジュンク堂も通過。
沖映大通りから国際通りへ突き当り、ドン・キホーテの周りを、
ちょっと覗いてみる。ウララさんは、どのあたりなんだろう。


ま、先に東の方をすませてこよう、と再び自転車に乗って、
国際通りをゆく。牧志駅のところでなんとなく右折してしまったが、
道が分からなくなって地図を見る。楽しい。つま先立ちで地図を見ながら、
知らない街を自転車でゆく喜び。地図をいい加減に見るものだから、
いつの間にか国際通りに復帰していたのも気づかず、安里十字路に出て、
再び地図を確認、現在位置を知る。安里駅を過ぎ、惜しいところまで行って、
道を間違えて川を渡ってしまう。これは、違っているぞ。引き返す。
安里駅。栄町通りを進めばいいのか。さっきも通ったよ。
確信をもって進めば、とうとうたどり着いた、
ブックスおおみね。


店の横の路地に自転車を止め、
雨よけのビニールの間から、店へ突入する。
ちょっと隆祥館書店を思い出したり。
文房具なんかも売っている。
沖縄の本もたくさんある。


ボーダー新書がいくつかあって、
空犬さんのブログで読んだのを思い出し、
一冊、買うことにする。


購入。ブックスおおみね。
新城和博ぼくの沖縄“復帰後”史 (ボーダー新書)』(ボーダーインク


お店を出て、なんとなくこっちの方だという感覚に従って、
自転車を漕ぎ出す。小学校がある。川がある。橋の上から、
川面に映った空がきれいで写真を撮ったりする。
信号を右折、ゆっくり通りの様子を気にしながら、
やがて国書房の前にたどり着いた。営業しているか、
不安になるたたずまいだが、入り口は開かれている、
大きなリュックが本の山を崩さないように気をつけて奥へ。
目の端々に飛び込んでくる本の山々は、これまであまり見たことがないくらい、
そうとうな山脈と地層を形成して、しかも店の広さがかなりあるため、ちょっと、
なにかの映画に迷い込んでしまったような気持ちになる。店員さんとか、いるのかしら。


なにか物音がしたと思ったら、帳場らしきところに男性がいた。
最初はいなかったようにも思えた。奥からやってきたのだろうか。
もごもごと挨拶らしき音声を発して、「客ですよ」アピールをする。
帳場の周りにはコミックや、沖縄の本がある。とにかく整理されてなさすぎて、
果たして入っていっていい通路なのかバックヤードなのかがよくわからない。
おそらく、売り場なのだろう。リュックに気をつけながら、気の向くままに、
行ったり、引き返したり(←方向転換できないほどの狭い通路もあった)。
シングルCDの棚もあって、江口洋介とかがいくつもあった。
好きな人なら心臓が止まるくらいうれしいのではないかしら。


ある程度、ぐるぐる回って、同じ通路も何度か通ったりもして、
いや、しかし、これは僕の手にはおえないや、古ツアさんにレポートしてもらいたいや、
などとやけっぱちな気持ちになって、それでも文庫1冊CD1枚を帳場へと差しだす。がんばった。


購入。安里古本センター国書房。
井上ひさし和田誠イソップ株式会社 (中公文庫)』(中央公論新社
サウンド文学館・パルナス 芥川龍之介 トロッコ/蜜柑』(学研/日本コロムビア株式会社)


さて、時刻は14時を回っている。
うっすらと昼食への未練を額のあたりににじませながら、
再び、国際通りの方へと向かって自転車を走らせる。
道が分からなそうなお店の訪問を終えて、
少し安心して、自転車も軽快に感じる。
適当に道を選んで走っていたら、
思いがけずおおみねの前に出た。
まるで近所に住んでいるみたい。


途中、ひめゆり通りでさっきとは違うルートで国際通りを目指しかけたが、
いや、危ない、そういう過信が地獄へと通じることを何度か経験した。
自転車の向きを反対へと向け直して、安里十字路から29号線へと左折。
国際通りは、なんとなく、自転車で行くには人が多すぎて、
途中、ちょいちょい押して歩きながら再びドン・キホーテ
ウララさんがあるであろう通りはさらに人が多く、
ここを自転車で押していくのはためらわれた。
自転車を置いて、土産物屋の間を奥へ進む。


買い物客とお店の熱気でわくわくしながら、
まだ先だろう、まだ先ですよと、最初のうちは、
にこやかな表情すら浮かんでいただろう、機嫌よく、
そのうち、こんなにも食べ物やら土産物が売っている間に、
古本屋さんが現れてくるってどんな宝探しなんだよ!ってな具合に、
また少し毛色の違う楽しみが加わって、でもけっこう奥まで来たけど、
まだウララさんが現れない、間違ってないかしら、不安もこみ上げてきて、
第一牧志公設市場」という文字が目に飛び込んできたとき、
獲物を見つけたベテラン猟師の落ち着きを取り戻した。
「近いぞ」


近かった。
左手に、写真で見知った看板が見えた。
ウララさんだ。帳場には男性がいる。
今日は、お店にはいらっしゃらないと、
事前に宇田さんにうかがっていた。


まずは、正面右手の棚。
意外とボリュームがある。
ウララさんのポストカードがある。(買うぞ)
そして、正面の平台。これも迫力がある。


他のお客さんがけっこういて、
他人と棚を争うのが嫌いなぼくは、
人がいないスペースを求めて動線を組み立てる。
右側奥の小部屋(一番大きいスペース)へと突入する。
ここは、沖縄本のコーナーか。同人誌『EKE』が並んでいる。
たしか、宇田さんも詩を寄せているはずだ。50号を手に取る。
宇田さんの詩「舞台」を読む。「詩」とはいえども、
これまで読んできた宇田さんの文章と同じ「声」だ。
中里友豪の詩集『長いロスタイム』も気になる。
山之口貘の本もある。(買うか、どうする?)


小部屋の入り口あたりに、噂のトートバッグがかかっている。(買うぞ)
さて、人がいなくなった隙に、こちらの棚も拝見したい。
と、向かって左側の「スペース」に移動する。おお!
なんという狭さ。リュックは前に抱えていたが、
カニ歩きでしか奥へ進んでいけない感じ。
背表紙は強制的に眼前に突き付けられる。
古本屋でマゾヒスティックなかくれんぼ。


そして、片岡義男の『本読み術』を見つける。
あぁ、これ、置いてましたか。いい本ですよね、
まだ読んでないですけどね。ふと隣りに目をやると、
同じく片岡義男の『本を読む人』があった。
これは!『BOOK5』で井上到さんが紹介していた奴だ!
この至近距離で突然目があったら、危うく死んでしまうところだよ。
いや、死んでいる場合ではない。買うぞ。


足元の照明の具合もいい。
木の枝でつくった飾り棚もいい。
しゃがみ込んでも目の前にある棚がいい。
この通路は、なんてすてきな隠れ家なんだろう。
いや、隠れてないけど。観光客のひしめく路上に開かれているけれど。
またいつか、この隙間に身をうずめたいなぁ。


購入。市場の古本屋ウララ。
片岡義男本を読む人 (片岡義男エッセイ・コレクション)』(太田出版
『100シリーズ別冊 楽しくてためになるみんなの社会科見学』(100シリーズ出版プロジェクト)
ミンソンさんのポストカード「ウララの店頭風景、5枚セット(1)」。*2
ウララのトートバッグ(イラスト:高野文子さん)。*3


さて、あと少し時間に余裕がある。
空犬さんが行けなかったというくじらブックスさんに行けるだろうか。
名残惜しさも手伝ってお店を離れられずに迷っていると、
女性の方が帳場の男性と話をしている。う、宇田さん?


宇田さんでした。初めまして。
くじらブックスの場所を教えてください。
宇田さんのタブレットと、僕のしわくちゃgoogle MAP を見比べながら、
なんとなくの位置を確認。印刷してきた範囲からはわずかに外に位置していた。


風が強くなり始めていた。心なしか、空も曇ってきているようだ。
沖縄の天気なんて、ぜんぜんわからないんだけど、雨とか、やばそうじゃない?
自転車だし。不安から目を背けて、再び、国際通りを自転車でゆく。
安里十字路、安里駅、ブックスおおみね(3度目)、小学校、
さっき写真を撮った川、さて、この信号を左。未踏の道へ。


けっこう、行ったり来たりする。
持っている地図の範囲外へ出てしまったので、
頼りは宇田さんから教わった番地だけ。
それでも、案外路上に番地表示があったので、
少しずつ、少しずつ、近くに来ている気がしていた。
最後の最後、ガラケーの地図検索を使ったときはもう、
くじらブックスさんはすぐそこのパン屋さんの向こうにあったのだ。


腹はへっていたが、パン屋さんを通りすぎて、
くじらブックスさんへと近づく。
開かれたサッシ、面陳された絵本、
かわいいくじらの看板、ポスター。
なんというか、気軽に寄って行ける雰囲気。
たばこやさんみたいな感じかな。売り場自体は、
すごく小さいのだけれど、沖縄の本、文庫、新書、
絵本など、肩の凝らない本がたくさんあって、どれでも、
買えそうな本を探すのには困らない感じ。それでも、
やっぱりお店のなまえが入ったこれを買ってしまった。


購入。くじらブックス。
ウィリアム・スタイグ、せたていじ『ねずみとくじら (評論社の児童図書館・絵本の部屋)』(評論社)


少しだけ、店主の方だろうか、女性とお話をした。
店のあちこちにあるくじらグッズは、お友だちがくれたそうだ。
「くじら」と名のついたお店なら、いろいろと、くじらモノをさしあげたくなる。
猫とか犬とかではなく、「くじら」というポジショニングがなかなか絶妙だな、と思った。
開け放たれたサッシの向こうから、子どもたちの声が聞こえていた。小学校も近くにある。
ここはまだ、本オープンの場所ではないそうだが、仮のお店としてしまうには惜しい、
とても居心地のいい空間でございました。


「本の買いすぎに気をつけてくださいね」という、
にこやかなアドバイスをいただいて、空腹を抱え、
重たいリュックを背負って自転車にまたがる。
四度めのおおみねを通過し、国際通り、沖映大通り、
美栄橋へと帰還して自転車をお返しする。ふう。


ゆいレールのホームから、
なんとなく写真を撮ってみたら、
こんもりとした木の緑の上のほうに、緑の看板が。
ジュ、ジュンク堂書店か!


一駅だけ乗って、県庁前で降りる。
駅前の地図は、沖縄のものだって分かりやすい。
ほんと、駅前に掲げられている周辺地図って、販売してたりしないのかしら。
あのサイズ、あの見やすさ、どこの駅回りでも、すごく助けてもらってるんだけど。


リウボウという百貨店の中にあるリブロが、
今日の本屋納め。もうお腹いっぱい本は買ったので、
ゆったりとした気持ちで棚を冷やかしていく。あ、レゴブロックも売ってる。
週間ランキングに『裸足で逃げる』*4が入っている。
沖縄のタウン誌なども置いてある。大阪で平積みしてある本が差しになっていて、
あぁ、そうだよね、地域によって売れる本は違うよね、というのを、
うっすらと思い知る。沖縄本コーナーも、古本屋さんと違って、
自由に仕入れられる厚みを感じる。イチゲンサンには、
ちょっとハードルが高すぎる。そうそう、思いのほか、
本の本が充実していて、これを維持してる担当さん、
どんな人なんだろうな、気難しいひとじゃないといいな、
などと考えたりした。友だちにでもなるつもりなんでしょうか。


購入。リブロリウボウブックセンター店。
平山鉄太郎『沖縄本礼賛 (ボーダー新書)』(ボーダーインク


ボーダー新書、アイテムによって売ってたり売ってなかったりで、
こちらも空犬さんのブログで知った一冊でしたが、なんとか入手できました。
エスカレーターを降りて、同窓会の会場を目指す。結局、沖縄着いてから、
菓子パンしか食べてないね。ガラケーで必死にFacebook にアクセスして、
会場のお店を探しあて、懐かしい面々のいる部屋に入っていく。


20年くらい前の時間と、現在とが、
マーブル模様にまざりあって、おそれていた、
友人たちへの妬みなどはつゆとも感じられず、
ただただ、けらけらと笑い、しゃべりつづけた。


沖縄には、友人に会いにきたのだ。