夏の小さな旅の思い出

琵琶湖を巡る鉄道: 湖西線と10路線の四季


ひとりの日曜。
ゆっくりと寝た。窓の外がやけにまぶしい。
台風は、行ってしまったか。妻から、
安否を気遣うメールが来てた。
返信したり、TLを追ったり、
だらだらと布団の上。


ゆうべ避難させた植物たちを、
再びベランダに出す。水もやる。
トーストを食べたり、部屋干しした服を、
外の風に当てたりするうちに、出かける時間。


京都行き近鉄特急の中で、
サンドイッチを食べながらメールを打ったり。
そんなことをしているうちに、本を読む時間がなくなってしまう。


車中のとも。
宇田智子『市場のことば、本の声』(晶文社


「その土地の本」面白かった。
意見の違う人たちの議論の話と、その後の、
宇田さんの体験にともなう思い。意見の異なる人たちと、
共にこの地球上に暮らしている。そのことを、
身の周りの、等身大のこととして、
どう考えて、どう向き合うか。


今日は、新幹線でなく、普通電車。
野洲行きの電車というのに初めて乗る。
車窓からの風景は、なんとなく、
島本に向かう時を思い出す。


待ち合わせ時間より少し早く守山駅に到着。
改札を出てすぐのベンチに腰かけて、ひとり芝居について、
あれこれメモを積み重ねる。改札に吸い込まれていく人、
改札から出てくる人、きっぷを買う人、売店で買い物する人、
発車時刻を知らせる電光掲示板、時計、窓の向こうの空、
風も吹いてる、なんという気持ちのいいベンチだろう。


集まった人たちと、駅前の本屋さんに突撃。
知らない本屋さんに、知っている人と入ることはあまりないので、
なんだか、変な気分だ。旅、ということばが、近いかもしれない。
夢、ということばでも、いいかもしれない。


気になる新刊がいくつかあったのだが、店内をうろうろしているうちに、
あれもこれも棚から消えていた。きっと仲間のうちの誰かが、
買うに違いない。残った選択肢の中から、迷いに迷って、
これを買った。


購入。本のがんこ堂守山駅前店。
清水薫『琵琶湖を巡る鉄道: 湖西線と10路線の四季』(サンライズ出版


写真集は、昔から、『眺めているうちにエネルギーが湧いてくるに違いない』
とか思ってちょいちょい買ってしまうのだが、一番エネルギーもらえるのは、
店頭で立ち読みしているときだったりして、家に持ち帰ったら、
もうほとんど開くことがないのがわかっているのに、
結局、今日のことを思い出すよすがにしたくて、
買って帰ることにしたのだ。写真に添えられた、
ちょっとごつごつした感じのキャプションも、
独特の味わいでした。


その後、中山道を歩いたり、図書館に行ったり、
古い感じの喫茶店に行ったりして、守山旅を楽しんだ。
いやー、これ、なんですかね、知らない町を、
知っている人と歩いてるのが楽しいのか。
ひとり旅とはまた違った楽しみ。
途中、一番後ろを歩いていたときに、
前をゆく4人の写真を撮ってみたい気持ちにかられて、
いやいや、それじゃあ、『二十世紀少年』の「ともだち」みたいだ、
とか思って、やめた。たぶんこの代替機のガラケーでは、ちゃんと写せないし。


帰りのホームから、きれいな虹が見えた。
今日のこの小旅行が、何か幸せな未来につながるといい。


そのままみんなで梅田に出て、飲み会。
馴染みの面々が、ひとり、またひとりと増えて、
最後には、それぞれの、2018年上半期ベストを紹介。
これがまた、良かった。読みたい本が、ぞくぞく。
そして、皆さんの、日々の暮らしから飛んでくる、
何か生命エネルギーみたいなのを受け取る。


これこそ、家には持って帰れない、
ビールとともに飲み干してしまっておしまいの、
泡のような、エネルギー。ごちそうさまでした。


紹介された本など。
梅崎春生荻原魚雷怠惰の美徳 (中公文庫)』(中央公論新社
吉田篤弘神様のいる街』(夏葉社)
「眼鏡研究社についての本」
岸政彦『はじめての沖縄 (よりみちパン! セ)』(新曜社
サンドラ・シスネロス、くぼたのぞみ『マンゴー通り、ときどきさよなら (白水Uブックス)』(白水社
コルソン・ホワイトヘッド谷崎由依地下鉄道』(早川書房
原りょうそれまでの明日』(早川書房
石川桂郎俳人風狂列伝 (中公文庫)』(中央公論新社