それぞれの読書、それぞれの落語

本を読む


日曜に届いた新しい洗濯機を初めて操作する。
付属のホースを使って風呂の残り湯利用をやってみる。
取扱説明書を読みながら、やってみる。できた。嬉しい。


たまっていた記事を立て続けにあげてから、
地下鉄に届けられた落とし物を取りに、
難波へと向かう。昼飯は食ってない。


読了。
長田弘幼年の色、人生の色』(みすず書房


今日は、「猫と蕎麦」から。
長田弘の猫ばなしを、ほとんど読んだことがなかった。
この本に収められたいくつかを読んだだけだけれど、
たくさんの猫との思い出があるようだった。
何匹もの猫と出会い、別れる暮らしとは、
いったいどんなものなのだろう。
しかもそれぞれの猫に、
思い入れもあるらしく。

そんな日々が一変したのは秋のある日の正午、いかにも猫らしい猫の太い右前脚で、猫らしい猫がわたしの鼻をいきなり殴ったときからだった。(p.150)


「人生の特別な一人に宛てて」という文章に、
それこそ太い右前脚で鼻っつらを殴られたような一撃を受けて、
一度本を閉じた。漱石の千円札が二枚。詩人という人生。


「福島、冬ざれの街で」「じゃあね」、ときて、
おしまい。


なんばの忘れ物センターにて無事に受け取りを終えて、
さて、あまり時間もないから一番近い、あそこに寄って帰ろう。
だいたいここに来るときは、あまり時間がないときのような気がする。
そうして、見きれないほどの棚の連なりに、天国と地獄を見る。


気になる新刊。(既刊もあるデヨ)
マーク・ルイソン、吉野由樹、山川真理、松田ようこ『ザ・ビートルズ史 上』(河出書房新社
マーク・ルイソン、吉野由樹、山川真理、松田ようこ『ザ・ビートルズ史 下』(河出書房新社
安野光雅本を読む』(山川出版社
きたやまおさむコブのない駱駝――きたやまおさむ「心」の軌跡』(岩波書店
前川ヤスタカ『勉強できる子 卑屈化社会』(宝島社)
森川すいめい『その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――』(青土社
ジェイ・ルービン『村上春樹と私―日本の文学と文化に心を奪われた理由』(東洋経済新報社


購入。ジュンク堂書店難波店。
永江朗51歳からの読書術―ほんとうの読書は中年を過ぎてから』(六耀社)
暮しの手帖社花森安治花森安治のデザイン』(暮しの手帖社


永江さんのは、以前に梅田のジュンクで見たのだったか。
花森安治のは、母のおつかい。


車中のとも。
永江朗51歳からの読書術―ほんとうの読書は中年を過ぎてから』(六耀社)


帯に、
「人生も後半。これから先、何冊の本が読めますか?」
とある。


久しぶりに永江さんの読書本に震える。
まだ40にも届いていないくせに、なんとなく、
50過ぎな気分が始まっているのだろうか。

読みたいものを読んで、自由に感想をもち、ときには意見を述べる。一冊の本を読みながら、過去に読んだほかの本のことを思い出す。あるいは、若いころに読んだ本を再読して、かつてとは違う感想を抱く。こうした五十一歳からの読書には、それまで重ねてきた読書の経験が生きる。(p.13)


堀田善衛の『定家明月記私抄』気になる。*1
「これは堀田善衛が『明月記』を読みながら思ったこと考えたことを述べた評論である。」(p.26)
とな。こ、このブログも、本屋さんをさまよいながら思ったこと考えたことを述べたものなんです。


「迷ったときの文学賞」面白かった。
「何を読むか迷っているとき、ベストセラーは避けたほうがいい」(p.34)
「ベストセラーを読むくらいなら、賞を受賞した本を読んだほうがいい」(p.36)
ときて、永江さんがいいと思う賞は、「野間文芸賞」、「谷崎潤一郎賞」、
泉鏡花文学賞」、「大佛次郎賞」の4つ。文庫を待て、という繰り返し、
どことなく笑える。いや、書店員的にはあれかもだけど、わかる。そうよ。
2015年時点での選考委員リストもあり。


迷うときはあまりないけどな。
いや、ないことはないか。うちにある本で、
何を持って出かけようか、迷うことはある。
あと、欲しい本がいっぱいあって、どれを買うか迷うこともある。
どちらにせよ、迷う範囲は自分ですでに決めてしまっているから、
いつか51歳を過ぎてから、文学賞のことは考えようかな。


51歳、なれるものかな。


今夜は、落語。「夕飯は作っておいて」と頼まれているので、
肉と玉ねぎを買って帰る。適当な炒め物を作っていてふと、
指定席でないことに気がつき慌てふためく。外へ飛び出す。
また雨が少し降っていた。暗くなったいつもの道を、
小走りで駅の方へ。ほんとに、いつでも小走りだ。


d47落語会:http://www.d-department.com/jp/d47-rakugo


D&DEPARTMENTの活動は、ひととき、
熱心に追いかけていたこともあったのだけれど、
いつの間にか、関心が薄れていて、この楽しい、
47都道府県の新作落語プロジェクトのことも、
まったく耳に入ってきていなかった。


今回、奈良県に来る、ってんで、それもとほんさんからの情報で、
ようやく、はー、そんなことやってたの!とびっくりして、
仕事を休んで、雨降りの中、小走りで観に行った。


会場に入ったら、すぐ、柳家花緑師匠みずから、スタンプを押してくれた。
ナガオカケンメイさんも、となりでニコニコ笑ってらした。
ふたりと、握手。なんというか、これだけでもう、満足だ。
席も、見やすいところで見れた。書く台付きの椅子だった。


いや、落語、面白かった。藤井青銅さんと3人のトークも良かったし、
奈良県観光局長が出てきて新作落語を奉納したのも盛り上がった。
すごおく、楽しかったです。はー。


そういえば、落語は、観客ひとりひとりの頭の中で、
それぞれ違った像が結ばれている、といった話が、
トークショーの中で出てきた。


読書だな、と思った。