そっと出ていくとり

移動図書館ひまわり号


明け方、下の子がぐずりだした。
母が来ているので、いつもと布団のレイアウトが違う。
すぐそばにいたので、めがねもかけないまま抱き上げて、
そのまま寝つくまで抱っこしていた。トイレに行きたいな、
と思ってめがねをかけたはずが、そのまま眠っていた。


1時間ほどして、目が覚める。めがねは無事だ。
さっさと支度して、こっそりと家を出る。


車中のとも。
前川恒雄『移動図書館ひまわり号』(夏葉社)


口絵の写真をじっくり見る。
8枚あるうち7枚目だけが新しく感じるが、
キャプションを見ると5枚目だけが1992年で、
あとは70年代。何か、間違いがあるんじゃないか、
と思って何度も見るが、そこに答えはない。


目次をちらっと見てから、いよいよ本文へ。
口絵の写真をじっくり見ている場合ではなかった。
イギリス視察のとこまで一気に読んでしまう。
降りる駅に着いてしまう。あぁ。


かなり早く退勤できた。
まだ明るい。小走りで駅へ。


車中のとも。
前川恒雄『移動図書館ひまわり号』(夏葉社)

移動図書館だけなら本を貸すことしかできないし、それが図書館の本当の働きなのだということを、市民の目にはっきりと見せることができる。建物はそのあとで、必要になったときに建てれば、閲覧室のない図書館を作ることができるだろう。(p.45)


求めたのに建物でなくて移動図書館だけしか与えられなかったのではなく、
移動図書館の方をを求めて建物はあえて後回しにしたのだったか。


本屋さんの本当の働き、ってなんだろうか。


財布をにぎりしめた男の子がやって来て、
「おじさん、この本、いくらで借りれるの」
と訊ねるくだり(p.68)で、目頭が熱くなる。


当時、前川さんの近くで生きていたとして、
僕にはその仕事の意義が理解できただろうか。
あるいは今、前川さんに相当する人の仕事に対して、
足を引っ張ったりしていないだろうか。


近鉄奈良に着いた時には、さすがに暗くなっていた。
豊住書店、今日は開いてたので入ったが、
『読んでいない本…』*1は見つからず。


岩波新書の新刊で気になる本*2があったが、
店主が常連さんと本の話を熱心にしていたので、
そっと店を出た。邪魔をしたくなかったのだ。
たかが数百円の新書を買うために、
乱したくない空気がそこにあった。


ベニヤさんとこも探したが、やはりなかった。
売れてるのか。たばこの匂いがかすかにしたけれど、
レジに人の姿はなかった。そのままそっと店を出た。