損なわれた信頼を抱えて

街場の文体論 (文春文庫)


汗かいて、早く起きた。
今日こそは早く出勤だ。
珍しくごみの袋を手にして家を出た。
1本早い電車に乗って、久しぶりに、
雑メモをツイートしてから、本を開く。


車中のとも。
新潮社編『私の本棚 (新潮文庫)』(新潮社)


酒井駒子の「混ざりあう心地よさ」を読む。
本棚や本との距離感が、がつがつしていなくて、いい感じ。
「そういえば、昔絵本を作りたいと思ってたな」(p.210)と思い出すのも、
のほほんとおとぼけな感じで、いいなぁ。酒井駒子さんの文章、
もう少し読んでみたい。

五年くらい前に『あの本、まだ売ってるのかな、今ならインターネットで探せるんだ』とふと思って調べてみたら、絶版になっていたのですが古本で買うことができました。大人になって読んでもやっぱりよかった。(p.209)


読了。新潮社編『私の本棚』(新潮文庫


巻末の、既刊案内のリストを読んで、おぉ!?となった。
まず目に飛び込んできたのが、児玉清『すべては今日から』だった。
おぉ、児玉清って、この本に文章載ってたよ。そうして、赤川次郎
椎名誠小野不由美、とあって、これはもしや、本棚エッセイの書き手たちが、
新潮文庫で出した本を並べているのではないかしら。ページをめくれば、
井上ひさし西川美和小泉武夫、『鏡の国のアリス』は、
金子國義の絵か!内田樹磯田道史福岡伸一
そして、この本に文章は寄せていないけれど、
読書関係の本が並んでいく。


この文庫を編集した方に、お話を聞いてみたいな。


駅から職場まで小走って、昨日より10分早く着いた。
12分早い電車に乗って、10分早く着いたなら、上出来。
去年は、7分しか早く着かなかった。*1
そうして、バックヤードで置きざりにされた本を回収。
やはりここにあったのか。


今日の働きは、まずまずの出来、か。
先送り、後回しにしてしまっていることどもが、
腐っていく臭いは、感じています。油断めされるな。


車中のとも。
内田樹街場の文体論 (文春文庫)』(文藝春秋

出題者の頭のなかにある模範解答を予想して、それに合わせて答えを書けばいいというシニックな態度は、受験勉強を通じて幼い頃から皆さんのなかに刷り込まれている。ずっとそういう訓練を積んできたせいで、皆さんのほとんどは大学生になった段階では、文章を書く力を深く、致命的に損なわれています。残念ながら。(p.17)


「何しといたら、いいんですか」問題に、唸る。
「何しといたら、いいんですか」という質問を聞いたとき、
その発想、その態度はヤバイだろ、と感じることはできる。
でも、じゃあお前はそれを言わないのか、言わないまでも思ってるんでないのか、
というところをごりごりがりがり削られると、膝から崩れ落ちそうな気もする。


クレーム回避的な発想。これさえしとけば、言い逃れできる、的な。
約束できる範囲を緩く、緩く設定して、絶対に怒られないように工夫する、的な。
また逆に、期待外れを食らわないようにハナから相手に期待をしない、
「別に俺はいいんだけどね、どうでも」という構え。


敬意や信頼が、皆無な生活だよ。恐ろしい。
気づいていないだけで、わたしは既に膝から、腰から、
崩れ落ちておるのだな。ただ胸から上が、空疎なことばを揺らしてる。


子どもたちと過ごすことで、
「信頼」の構えを、学び直したい。
できることなら。

*1:穴はふたつ用意している:http://d.hatena.ne.jp/tori810/20150520