緊張、書評、待機
駅のホームで、酒をくらっているおっさんが、
ぷはっと吹き出した。むせたのだろうか。
同じ電車に乗り合わせたので車両を替えたのだが、
こちらに移ってきた。おっさんがおりるまで、
ずっと緊張していた。
『ああ、俺は普段、なんて油断して電車に乗っているんだ』
と思った。それくらい、非常に神経が張り詰めていた。
向かいの席に座っていた女は、芯を出していないボールペンで、
何やら高速で書きとめていた。緊張感が、さらに増した。
ふたりは同じ駅で降りていった。
もちろん、本なんか読めたものではない。
今日、本を読んだのは帰りの電車の中でだけだ。
車中のとも。
堀江敏幸『本の音 (中公文庫)』(中央公論新社)
書評集だ。
堀江敏幸の文章は、たぶん、好きな方だと思う。
小説も、エッセイも。で、書評も既にいくつも読んで、
それぞれ面白いと思ったようなのであるが、今回、
ちょっとひっかかるような感触。
これは間違いなく、トヨザキ社長の本の影響だ。*1
未読の読者をどれだけ誘えるか。
ネタバレは、適度に抑えられているか。
「1 愛と孤独について」を読み終えて、
鞄から本棚に戻した。ちょっと置いておく。
気になる新刊。(既刊もあるデヨ)
川本三郎『いまも、君を想う (新潮文庫)』(新潮社)
辻邦生、北杜夫『若き日の友情―辻邦生・北杜夫往復書簡 (新潮文庫)』(新潮社)
山口晃『ヘンな日本美術史』(祥伝社)
*1:豊崎由美『ニッポンの書評 (光文社新書)』(光文社)