善行さんを訪ねて京都を歩いていたら師匠の思い出に迷い込んだ

気まぐれ古本さんぽ


版元営業さんに教わったルートを参考にして、
京都の新刊書店巡りを敢行。営業さんは、短時間で、
たくさんの本屋さんを回らなくてはいけない。
本屋さんを訪ねるのがおしごと。


なぜもっと早く教わらなかったのか。


車中のとも。
岡崎武志読書の腕前 (光文社新書)』(光文社)


文庫版*1も持ってるけど、やっぱり新書版が好きでこちらを持ってきてしまった。
「はじめに」を読むと、本を読む気力がもりもりとわいてくる。
オカタケ師匠、いつもありがとうございます。


読書のチューニングについての様子を、
アン・タイラー『パッチワーク・プラネット』(文春文庫)の山田太一の解説を例に。
他の人が文章を読みながら、どのような気持ちになって読み進めているのかを知るのは面白い。


烏丸御池に着いて、まずは大垣書店烏丸三条店から。
と思いきや、開店前でござった。路上にて、しばし開店待ち。
『読書の腕前』をめくると、片岡義男の『日常術〜片岡義男[本読み]術』*2
出てきた。「本を読むだけのための旅行」いいなぁ。つって、
旅行どころか、いっつも師匠のこの引用文だけ読んでいて、
実際の片岡義男の『日常術』、まだ読めてないという。

本を読むためだけに、高知や京都、ハワイへ行くっていうのも、なかなか現実的には難しいだろう。(p.156)


そうか、今日の京都を、本読みの旅の舞台にすればいいのか。
と、一瞬思った、このままどこかの喫茶店に紛れ込んで、本を読みながら一日過ごすってのは、
いやいや、やっぱりアタシは、読書より本屋さん回りの方がいいなぁ。


購入。大垣書店烏丸三条店。
内田樹困難な成熟』(夜間飛行)


今日はたくさんの新刊書店を回りますので、
本屋さんの神様へのお賽銭として一軒めで1冊購入。
以後、倹約、倹約。見学、見学。


大垣書店烏丸三条店に続いて、大垣書店四条店、
くまざわ書店烏丸四条店と見て回る。以前にも、
一度くらいは覗いたことがあったが、こうして、
他の店と連続して入ってみると、それぞれ、
置いてある本が少しずつ違う。なんとか、
自分の仕事の参考にしよう、という気持ちは、
すぐにどこかに行ってしまった。体調のせいか?


JEUGIA四条店というお店は、初めて知った。
彼は、こんなとこも回っているのかしらん。
CD・レコードと本を併売しているお店で、
カフェの地下にある。雑貨も売っている。
人によっては、「本屋じゃない」と言うだろうし、
人によっては、「こんなに楽しい本屋はない」と言うだろう。
かえって、このお店でしか出会えない本もありそうで、
誰かがこのお店で素敵な本と巡り合えることを祈る。


ここは小さいな、さっと見て、さっと帰ろう、
と思ってふと同じフロアにトイレを見つけて立ち寄って、
トイレのあとにもう一度だけ売場を見たら、
噂の『数学する身体』*3が平積みされていた。
ふたば書房大丸店。初めて来たが、侮れません。


ジュンク堂書店京都店、1階の海外文学の棚をじっくり見たら、
もうおなか一杯になってきて、かすかな腰痛すら感じたので、
そうそうに外へ出た。なんてぜいたくな行為なんだろう。
大垣書店高島屋店にも行ってみた。ここでは、
山崎まさよしの新刊を見つけた。*4


ブックファースト京都店へは、細いエスカレーターで。
ここも初めて来た。『BOOK MARK』*5フェアをやっていた。
小冊子はもうなかったが、PDFを印刷したものを配布していた。
きちんと時間をかけているな、という印象。海外文学とか、
ここでいろいろ物色したいなぁ。そんなに読まないけども、
海外文学を読みたくなるようなお店って、あるんです。


さて、いよいよ丸善京都本店、と探すも、
見つけられずにうろうろ。BALに入ってると聞いた気がするのだが、
外から見て、「本」という文字が見当たらず、ガラクタケータイでは、
丸善ジュンクのサイトにはアクセスできず、河原町通りをうろうろ。
ほんと、ガラケー対応してほしいわ、丸善ジュンクサイト。


諦めて、昼飯にする。なんとなく、パン類を食べたく、
上島珈琲店に入る。サンドイッチを食べながら、本を読む。


昼食のとも。
岡崎武志読書の腕前 (光文社新書)』(光文社)

一度読んだ小説をひさしぶりに読み返すのも、『青春18きっぷ』の読書旅ならではの楽しみだ。(p.159)


わりとゆっくり本を読んでしまった。
店を出て、改めて丸善を探す。もう、犯人はBALだろうと決めてかかり、
とりあえず建物の中に入る。目の端が、店のロゴをとらえた。やはり。
外からでもわかるようにしてほしいなぁ。行きたい人も、たどり着けないよ。
知らない人が、誘い込まれることも、皆無だし。ビルの、BALの方針なんだろうけど、
ちょっと丸善がかわいそうだ。丸善の意思ならば、それはそれでかわいそうな丸善


エスカレーターをぐんぐんおりて、売場に出た。でかい!
ざーっと歩く、通路を歩く。ぜんぜん、あたまに入ってこない。
今日は、ダメだな。大型書店と、とことん相性が悪い日だ。
コミックの置いてあるフロアーだけをざっと歩いて、
すぐに地上にもどった。さ、善行堂を目指そう。


この夏、京都をだらだら歩いて、その規模の大きさに恐れ入ったはずが、
またもや無謀にも四条あたりから善行堂を目指すという愚行に出たわたし。
バスや電車を利用するなどの工夫もなく、せいぜいが日陰を選ぶ程度の。
10月なのに暑い。今出川通りまで来て、やっと少し気分がよくなってきた。


まずは、外の均一で古本心を静めてから、店内へ。
「やぁ、いらっしゃい!」と声がかかる。あとはもう、
おしゃべりに花を咲かせながら、横目で背表紙を盗み見るだけ。
他のお客さんが入ってきたりして話が途切れると、ささっと、
棚を見にいく。世田谷ピンポンズさんの話、夏葉社島田さんの話。
もちろん、岡崎さんの話。そうです、師匠の新刊が、
善行堂ではもう販売していると聞いて、
買いに来たのです。


購入。古書善行堂。
岡崎武志気まぐれ古本さんぽ』(工作舎
荒川洋治:編『名短篇―新潮創刊一〇〇周年記念 通巻一二〇〇号記念 (SHINCHOムック)』(新潮社)


善行さんのとこでピンポンさんの話をしたので、
iPodで『アナタが綴る世界』を聴く。他の人が作った詞を歌う、
って言うのは、他の人が作った詩を手書きで書くようなものかしら。
いや、違うな。又吉さんの詞をピンポンさんが歌う。歌って面白い。
音楽で耳をふさいだまま、出町柳に出る。版元営業さんからのルートは、
まだまだ先があったけれど、軟弱なとりは、もう巣に帰ります。


読了。
岡崎武志読書の腕前 (光文社新書)』(光文社)


『読書の腕前』に、レシートが挟まっていた。
2007年3月19日、リブロ池袋本店で購入したらしい。
ぜんぜん覚えてない。続けて、師匠の新刊を読みだす。


車中のとも。
岡崎武志気まぐれ古本さんぽ』(工作舎


『腕前』に続いて、鶴見線笙野頼子が、こちらにも出てきた。
川本三郎の『我もまた渚を枕?東京近郊ひとり旅』(晶文社)も出てきた。こちらはちくま文庫*6で持ってるが未読。
海文堂書店が出てきた。天誠書林の話。山王書房、『昔日の客』、関口良雄などの字が踊る。
逗子も出てきた。なぜか、藤沢市立図書館があることになっている。
逗子市立でないのですか、師匠?


巣に帰ったが、妻子はまだ、帰宅しておらず、
そのまま幸福な留守番読書へと突入した。


留守番のとも。
岡崎武志気まぐれ古本さんぽ』(工作舎


天神橋筋界隈の古本屋さんには、一軒たりとも訪問がかなっていない。
なぜだか、どうやってアクセスしていいか、分からないのよ。
註に「現在も営業中」とあると、ものすごく嬉しい。
だって、「閉店の報」ばかりなのだ、この本の註は。

凍り付いた過去の記憶が、この春の陽気で少しずつ溶け出しそうな一日だった。(p.72)


古本屋を訪ねる文章の合間に挟まれる師匠の昔ばなしが好き。
「もう、そんなことが懐かしいと思えるほど、東京暮らしが長くなってしまった」(p.75)
とあるが、僕もいつか「そんなことが懐かしいと思えるほど、関西暮らしが長くなって」しまうのかな。
師匠が東京に出てきたのが33歳の春。僕が関西に出てきたのは、33歳の冬。


夜、部屋に師匠の新刊をもって入ったとき、
ふと帯を外すと、そこに隠しメッセージがあった。