ひとり、東京を泳ぐ
起こしてくれ、と頼んだら、
思ってた以上に早く起こされた。
まぁ、いい。4歳児を連れて、
東京へ。もう席ひとつでは、
きついよね。ごめんね。
品川にて、母と合流。カフェに席をとるも、
喫煙グループの煙に追われるように、
母は「もう行く」と言う。娘も、
にこやかについていく。
残された飲み物とパンをかたずけ、
久しぶりの東京へと足を踏み出す。
山手線外回り。渋谷。何も考えなくても、
井の頭線の方へとたどり着ける。ひとりで、
東京を泳いでいると、なんとも不思議な気持ちになる。
母と娘と切り離され、奈良の妻子とも切り離され、
東京を、西へ西へと泳いでいく。
車中のとも。
宇田智子『本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書)』(筑摩書房)
本文に飛び込みたい気持ちをこらえて、
目次をしっかり。そうして、序章の前の、
高野文子の絵を見る。左手での二冊わしづかみに、
こちらのココロもぐっとつかまれる。
1998年に大学一年生の宇田さん。ほぼ同世代だ。
インターネットは、まだほんのりとしか存在していなかった、
僕のなかでも、たぶん、日本のなかでも。
念願かなって全国チェーンの新刊書店に就職し、東京の店で働きはじめました。七年めに沖縄の支店に異動し、九年めに辞めました。今は沖縄でひとりで古本屋をやっています。(p.16)
下北沢は革命の後。てきとうに改札を出れば、
思いがけない角度にピーコックを見つける。
今はなき、カフェオーディネールがあった方へ歩く。
なんかチーズのにおい。ガストからか?
ファミマができている。革命は続く。
購入。白樺書院。
村上春樹『若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)』(文藝春秋)
踏切があるつもりで小走りで走ったら、
そこにはもう、線路が横たわっていなかった。
ゆっくり渡っても、もう踏切の音は聞こえない。
古書ビビビが開いているのを確認して、
タウンホールでトイレを借りた。さて。
外の窓付き棚からじっくり見ていく。
下の方の本を見るためにしゃがんだときの、
尻や足の感覚が好き。疲れた足が、休まるのかな。
一冊手にして、店内へ。けっこうお客さんがいて、
ちょいちょいレジへと突撃していく。
小林信彦『虚栄の市』、土方巽『病める舞姫』の実物を見た。
値段はしっかり。初めて見た。ほんとうにあるんだなぁ。
私はと言えば、合わせてたった200円、徳川さんに、
お釣りを計算されるまでもなく、ちょうど支払った。
購入。古書ビビビ。
片岡義男『紙のプールで泳ぐ (新潮文庫)』(新潮社)
『ぐるり 2006年4月号』(ビレッジプレス)
古書ほん吉を覗く。充実した児童書に、
何か買えそうな気持ちになるも、空振り。
B&Bにも、行った。それ自体に値段のついた本棚を眺めながら、
ふと、新刊書を買うという行為は、金持ちにしか許されなくなるのかもしれない、
と思った。ヴィレッジ・ヴァンガードに拒絶されるのとは別のニュアンスで、
B&Bの棚に拒絶されている気がした。前者は年齢によって、
後者は収入によって。僕はいま、自動車を買ったりとか、
洋服を買ったりとかぜんぜんしないけど、好きな人は、
そういうお店に行く。けれども収入が少なければ、
なかなか欲しいという気持ちにすらなれない。
自分には「関係のない世界」だ。
いつか、僕も、古本屋と図書館でしか、
読む本を調達できなくなるのかもしれない。
まぁ、そうなったらそうなったで、
そういう環境で楽しむのだろう。
(どうにも僕は、環境に対してどうこうしてやろう、
という気概が足りない。雨が降ったら傘をさそう、みたいな。
こんなことでは、戦争になったら戦争になったで、戦争を楽しもう、
などと言い出しかねない。あかん。傘で銃弾はふせげない)
購入。B&B。
椎木彩子『どこでもない』
カラフルなイラスト集。
駅前劇場で動物電気の「ふっくら!人間関係」を観た。
かなり久しぶりの動物電気。相変わらずの楽しさ。
これまで買わずにきたDVDを買ってしまう。
「人、人にパンチ」と迷って「キック先生」を。
昔観た公演を手元に置いておこうという感傷。
ノスタルジー、センチメンタル、37歳。
コバケンの思春期が伝染ったのかもな。
初めて動物電気を観たのは、18歳くらいか。
フジタ・ヴァンテ。「闘将!動物電気」。
20年後、僕は奈良からシモキタまで、
コバケンのおしりを観に来たのだ。
品川にて再び、母と娘とおちあう。なんか娘は、
ネックレスみたいのをもらってごきげんだった。
全く昼寝をしなかったようで、帰りの新幹線、
さすがに寝た。近鉄特急でも、寝ていた。
眠る四歳児、重い。抱っこして家路。
帰宅して新生児のお風呂、なんと軽いこと。
あしたからまた、本屋さん。