シモキタ・ジョージの変貌と買い過ぎた帰省者

東京人 2014年 05月号 [雑誌]


新幹線で、東京へ。
今年に入って、わりと東京出てますな。
今回は、見納めのキャプテンEOが目的。
月曜の方が空いているだろうとの目算で、
あれ、日曜は、時間がありますよ。


品川乗換えで、山手線。
新宿へ出る妻に娘をお願いして、いざ、
束の間のひとり旅、渋谷で下車して井の頭線で下北沢へ。
渋谷での乗り換えの際には、迷うことなく足が出たが、
なんと下北沢、駅の構造が変わっとるやないかい。


それでも南口へ出てみれば、おなじみの路地。
最近はとんとご無沙汰のヴィレッジヴァンガードを通り過ぎ、
一路、古書ビビビを目指す。ビビビさんのツイートが大好物で、
やたらとRTしまくってしまうわたしだが、今回、
ビビビさんが出した漫画を購入するのが、お楽しみ。


しきりに「地方発送しますよ!」とツイートされているけれど、
いやいや、せっかくならばその本を買うことを動機にして、
足を運びたいじゃありませんか。


ツイッターでビビビさんをフォローしてからは、
たぶん、店に行ったことはなく、今の場所に移転する前に3度くらい、
今のお店に移ってから2度くらい行ったことがある。久しぶりの訪問、
まずは外の均一から。ちょっと開けにくいガラス戸を開いては、
しゃがみこんだりのぞきこんだりして、背表紙を追いかけていく。


小雨がぱらついてきたタイミングで一冊、
『HB』のVol.2を100円で発見したので、そいつをおともに店内へ。
まずは、入ってすぐ左手の窓際から攻めていく。児童書・絵本がある。
気になるけど、たぶん買えないだろう本を通り過ぎては、
また戻って手に取ったり。少しずつ、興奮が高まる。


こんなに好みのお店だったろうか。コンディションもいいのだろう。
このあと、B&Bへ寄ってから吉祥寺も攻める予定のわたし、
なんとなく追われるような感覚で、集中できないようでいて、
案外、意識が明晰になっていたのかもしれない。


気になる文庫もたくさん、うろうろするうちに、
目当てのマンガ本『TOKYO−BAY(トーキョー・ベイ)』も発見。
「後でな、後で」と、目で挨拶して、次の棚、次の棚。
なんとなく店主がすすめているジャンル、本を買うのがいいのか、
とマンガ棚とかの前でやたら気合いが入ってしまったり。


一通り棚を見て、そろそろ買う本をしぼらなくては、
という頃になって、見ていなかった棚に気づく。
そこで待ち構えていたのは片岡義男
『ここは東京』だったろうか、定価2500円くらいのが、
1700円くらいで売っていた。わしづかみされたハートを、
棚に残して、近くにあったこちらを手にする。
大竹昭子『日和下駄とスニーカー』。確か、昨日ツイッターで、
版元品切れと言っていなかったか。『古本屋さんで売ってたら、買お』
と思ったのを思い出して、任務を完了した気分になる。


購入。
大竹昭子日和下駄とスニーカー―東京今昔凸凹散歩』(洋泉社
橋本倫史『HB Vol.2』(HB編集部)
原案:徳川龍之介(古書ビビビ店主)作画:齋藤裕之介『TOKYO−BAY』(古書ビビビ出版部)*1


事前にツイッター上で声をかけていなかったので、
最後まで迷いに迷ったが、お会計のときに店主にごあいさつ。
思い切って声を掛けた時特有の、やたら馴れ馴れしいテンションに、
ひとり恥じ入りながら店を後にする。雨はやんでいる。


スマートフォンでない携帯電話を操作して、
B&Bの所在地を調べる。ほどなく判明して、
階段をのぼる。フリーペーパーやチラシが、
左側からずらりと出迎えてくれる。
正面には、雑誌。新刊雑誌。


こういう立地、こういう佇まいのお店で、
新刊雑誌に迎えられるって、なかなか独特だな、
ちゅうのは、今、この文章を書きながらの感想、
その瞬間は、軽い動揺を抱きながら、木の扉を開けた。


暖かい。店内を暖かくしてある。左手にあるレジ内で、
女性が二人、男性スタッフの電話の声もする。
お客はそれほどいない。とりあえず目に飛び込んできた本に、
引っ張られるように足を進め、その周りにある本を見る。


その平台をばーっと眺める。新刊が多い。知らない本もある。
そうなのね、このお店は「新刊書店なのね」と思う。けれど、
こういう立地、こういう佇まいのお店で、「新刊書店」にいるという、
「本屋センサー」は起動しない。何か、別のセンサーが走っている。


端から順番に、ではなく、何かわざとでたらめにしているかのように、
棚をかたづけていく。それぞれの棚にテーマがあるようだが、
その中に、意外な本を混ぜている。ドラえもんの本も、
あちこちに散らされているように感じた。マンガ、音楽、建築、本の本、
哲学、社会学、食べ物、海外文学、日本の現代小説文学、渋めの日本文学、


ここでも、『日和下駄とスニーカー』を発見する。
ふと、版元在庫切れでも書店の店頭在庫があるのなら、
古本でなくって新刊で買えば良かったのではないか、
という考えが湧く。そして、この店で何を買うべきか、
わからなくなる。10年メモというのが気になる。
気になるが、「いやいや、君、こういうの好きだけど、
買うだけで使わないでしょ、絶対?」という、ニヤニヤした脳内分身が、
僕のくすぐったいわき腹とかをこしょばして、ものすごくうざい。


ぐるぐる店内を回り、気になる本がいくつもあるのだけれど、
「その本をこの本屋さんで買う意味」みたいのをこしらえるのに苦労して、
ぜんぜん選べない。そうそう、旅先だから、かさ張らなくて安いもの、
それすなわち文庫でしょ!というアドバイスも、
頭の周りをぐるぐる回っている。


そのアドバイスは、古書ビビビのときから回っていた。
ぜんぜん、聞き届けられていないアドバイス


そのうち、妻から電話がかかってきた。
すわ、時間切れか!と思いきや、娘が眠ってしまい、
伊勢丹で借りたベビーカーに乗せて、様子を見ている、とのこと。
一安心、これでまだ、時間はある。が、油断は禁物だ。


購入。
メリッサ・ブルーダー、リー・マイケル・コーン、マデリーン・オルネック、ナサニエル・ポラック、ロバート・プレヴィット、スコット・ジグラー、デヴィッド・マメット絹川友梨俳優のためのハンドブック ─明日、舞台に立つあなたに必要なこと』(フィルムアート社)


井の頭線で吉祥寺に移動しようと、下北沢駅に突入するも、
井の頭線ホームがわからない。降りるときより、乗るときのほうが、
手ごわい相手だ、新生しもきたざわ。急行で吉祥寺に到着すると、
「雨だ、雨だ」と乗客が口々に騒いでいる。雨か。改札を出ると、
またもや見慣れない景色。そういえば、吉祥寺も変わったんだっけ。
地図を見つけて、ブックスルーエのあった商店街の位置を探す。
北口か?しかし北口のほうへはどうやったら行けるのか。
見当もつけないまま歩き出すと、「北口」の表示が見えた。
しばらく行くと、見慣れたバスロータリー。こっちだ。


小雨を駆け抜けてアーケードに入った。なんという人、人!
これ、みんな吉祥寺の住人なんだろうか。遠くからやってきた人なのか。
花見客が雨に追い出されて、屋根の下へと流れてきたのだろうか。
そろそろルーエが出てくる頃よ、と心づもりしていたら、
ひょいと古本屋さんが登場して吸い込まれるわたし。
味わい深い文庫の棚にメガネのつるをつかまれて、
買わずには、出られない。ああ。


購入。外口書店。
向井敏本のなかの本 (中公文庫)』(中央公論社


ここでようやく、頭の周りを回っているアドバイスに従う。
文庫一冊、300円。よし!


いや、ここに来る前に、すでに文庫でない本を4冊買っている。
全然、「よし!」ではない。


そうして、ブックスルーエに流れ着いた。
このお店にも、何度か入ったことがあったが、
もう、だいぶ長いこと、訪れていなかったと思う。
まずは1階を流していこう。入ってすぐ左の壁棚に、
オススメ本ぽいコーナーがいくつも。ふむふむ。
そのまま壁沿いに奥へ進む。気になる本がいくつも。
今日は、でかいリュックを背負っていることもあり、
気になる本をメモする元気がない。脳のしわに挟むも、
散歩すすむと、ひらひら落ちている。


気になる本をいくつも脳のしわに挟んだつもりになって、
2階へすすむ。ツイッターで事前に連絡していた花本武さんは、
どちらにいらっしゃるかしら〜、と上っていったら、
いきなりそこにいらした。ご挨拶。仕事中にも関わらず、
にこにことお話してくださる。恐縮です。


2階を見て回る。そこかしこにある掲示、というかPOPが、
面白い。「2階を面白くしてやろうと思って」という花本さんの声が、
耳のうしろで歌い続けている。サブカル棚、音楽棚、芸術棚、詩・短歌棚、
文庫棚、絵本のとこも。「ジャンルを問わない気になる新刊」コーナーも。
そういう目で見ているからかもしれない。そういう目で見ているから、
なのかもしれないが、ぼくはとてもわくわくしながら、棚を見て回った。
巨大なリュックで方々にご迷惑をかけながら。


棚に夢中になって妻からのメールに気づいておらず、
吉祥寺に着いたという電話が掛かってきてしまい、
何も買わないまま、店を飛び出してしまった。
花本さん、また後で買いに来ます・・・!


気になる新刊。(既刊もあるデヨ)
東京人 2014年 05月号 [雑誌]』(都市出版
東京人 2014年 04月号 [雑誌]』(都市出版
心地良きブックカフェ―本を読む、本を買う、本と出会う (Grafis Mook BAG in GUIDE)』(グラフィス)
ブックカフェさんぽ―東京/大阪/京都本と親しむ心地よき休息スペース (Grafis Mook)』(グラフィス)
松原隆一郎堀部安嗣書庫を建てる: 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト』(新潮社)
海猫沢めろん頑張って生きるのが嫌な人のための本~ゆるく自由に生きるレッスン』(大和書房)
村田喜代子縦横無尽の文章レッスン (朝日文庫)』(朝日新聞出版)
飯間浩明辞書に載る言葉はどこから探してくるのか?ワードハンティングの現場から (ディスカヴァー携書)』(ディスカヴァー・トゥエンティワン
絵本とであえる楽しい散歩 (玄光社MOOK)』(玄光社


『東京人 2014年 05月号』特集は「フィールドワーカーになる」
ようやく会えた、『東京人』お久しぶりだね。パラパラ。
ふと、棚差しに目をやると、むお!バ、バックナンバーが!
『東京人 2014年 04月号』特集は「咖喱と珈琲」
こちらには、追悼特集『大瀧詠一最初で最後の読まれない手紙』
なんてのもあった。安西水丸の文章もある。むむむ。
『絵本とであえる楽しい散歩』関西のお店もけっこう載ってる。


妻子と合流。遅い昼食を食べようと思っていたにも関わらず、
なぜかそれほどおなかのすいていない妻に連れて行かれたカフェで、
ケーキと珈琲を食す。空腹がまぎれてしまう。トムズボックスに行くも、
リュックが巨大すぎて、ご迷惑だけ残して退散。


途中おもちゃ屋さんにどっぷりはまってしまった娘に手こずりつつ、
なんとか百年にたどり着く。娘を見てくれる妻にささげた感謝は、
すぐに桜の花びらとともに風に吹き飛ばされて、気がつくと、
また何冊か手に持っている。なんてこったい。


購入。古本屋百年。
川本三郎我もまた渚を枕 (ちくま文庫)』(筑摩書房
青山南小説はゴシップが楽しい』(晶文社


食事を終え、それでも一冊を、と再びルーエへ。
妻子連れで、自由行動はままならず、1階で、
とにかくこいつだけを、と。


購入。ブックスルーエ。
東京人 2014年 05月号 [雑誌]』(都市出版


実家に、泊めてもらう。
何かのイベントで声を嗄らして帰ってきた父をつかまえて、
ひさしぶりに話をした。はたして、関西に居を移さなければ、
もう少し、父と話す時間は増えていたのだろうか。