東へ西へ転がって

少々おむづかりのご様子 (角川文庫)


母宅を出て、妻従姉のマンションを訪ねる。
乳児がいた。初対面。こんにちわ。言語でない音を発する。
限られた日本語しか話せないうちの娘よりむしろ雄弁だ。


帰りの新幹線では、娘がぐっすりだったので、
珍しく夫婦そろって、ページをめくる機会を得た。
鞄やポケットに詰め込まれた本の中から、
なんとなくこいつを選んで、読む。


車中のとも。
竹中直人少々おむづかりのご様子 (角川文庫)』(角川書店


松田優作との思い出をつづる「スペシャルな時間」が、よい。
久しぶりに読み返したけど、やっぱりよい。


娘さんとのエピソードを読む。そうそう、
きっと、これが読みたくて、持ってきたんだな。
これを書いたときの竹中直人の年齢に、もうすぐ達する。
(文庫版あとがきに至っては、40才になった、とあったが。)


30越えてから、何も積み重ねられていない気がする。
まぁ、それまでだって、何を積み重ねられたか言うことはできないが、
それにしても、なんだか重くためいきをついてしまいそうな、
むなしさを感じる。コロコロと居所を転がしてばかりの30代。


大和西大寺のホームに立って、
ようやく、帰ってきたな、という気になる。
京都あたりではまだ、そういう気持ちにはならない。
まぁ、「帰ってきた」なんて感想を抱けるほど、
奈良の時間を身にまとってはいないのだけど。