はじめまして海文堂書店さん

離島の本屋 22の島で「本屋」の灯りをともす人たち


神戸に用事があったので、
妻と娘とでかける。


昼食後、ついにあの、
海文堂書店を訪れる。


以前の上司に「関西でオススメの本屋さんは?」
と訪ねたとき、「カイブンドウ書店だ」と教えてもらった。
そのときは、名前も場所も知らなかった。1年以上前の話。
その後、いくつかの雑誌や本でその様子を知った。


今では、ブログも楽しみにしている。
海文堂書店日記:http://d.hatena.ne.jp/kaibundo/


妻と娘と別れて、店に突入。
外観は、「ふつうの本屋さん」だ。
店に向かって左側の入り口を入ったところ。
ガイド本から攻める。お客さんが何人もいるので、
その後ろを軽く流す感じで回る。


「紀行エッセイ」という見出し表示がある。
新刊台がある、著者の顔写真を使った版元POPが目につく。
小説が多い印象。ぐるぐる回る。ミニコミ誌『ほんまに』*1がある。
海文堂書店で作っている冊子なのかしら。善行さんの名前もある。
10号に、善行堂を開いたばかりのころのインタビュー。
山本善行×北村知之、ああ、知らなんだ。*2


『離島の本屋』がある。嬉しくなる。
那覇の市場で古本屋』は、見つからない。


詩の森文庫の『E・ケストナーの人生処方箋』にも、
ようやく会えた。Amazon で見たときはよくわからなかったのだが、
『E・ケストナーの人生処方箋 続』があったのか。
しかしこれ、どうして2冊に分けちゃったんだろ。
1冊で読みたいなぁ。せっかく真鍋博イラストなのに。


棚を見て回りながら、棚にこめられた気合いを感じて、
ちょっと恐ろしい気持ちになる。店の中央にもレジがある。
入り口にもレジがある。中央レジも入り口レジも、けっこう広い。
それぞれに、二人ずつくらい店員さんがいる。店員さんに余裕を感じる。
特に何もしていないからか。前を通るとき、緊張する。


歩きながら、どんどんおそろしくなる。
なんだか、ゾクゾクしてくる。なんだろうね、この気持ち。
自分の本屋さんでの仕事について思いを馳せる余裕はなく、
ただただ、小突き回されているような気分。妻子が、
どこかで待っている、という「焦り」もあるのかも。


「DOJIN選書」のフェアをやっている。初めて聞いた。
化学同人から出ているシリーズらしい。表紙のイラストがかわいい。
棚差しでは、なかなか目に止まらないだろうな。


2階にも行ってみた。
マリングッズがずらり。古本コーナーもある。
常駐コーナーらしい。すごい。


   突然だが、この日記を書いているのは、8月8日だ。
   だから、海文堂書店さんが9月末で閉店してしまうことを、
   今、これを書いている僕は知っている。
   この日は、もちろん知らなかった。


   以前にも書いた気がするが、僕がある本屋さんに対して、
   「すげぇ!」と思う要素のひとつとして、
   「売れなそうな本に惜しみなく空間を与えている」というのがある。
   この日、海文堂書店で感じた「おそろしさ」も、
   そのあたりの気合いの入った選書にある気がする。


   そして、海文堂書店は、9月末に閉店してしまう。
   僕が「すげぇ!」と思う本屋さんは、もしかしたら、
   近いうちに全てなくなってしまうのかもしれない。
  

気になる新刊。(既刊もあるデヨ)
石田千バスを待って』(小学館
川上弘美晴れたり曇ったり』(講談社
エーリヒ・ケストナー、飯吉光夫『E・ケストナーの人生処方箋 (詩の森文庫)』(思潮社
エーリヒ・ケストナー、飯吉光夫『E・ケストナーの人生処方箋・続 (詩の森文庫)』(思潮社
田中泯松岡正剛意身伝心: コトバとカラダのお作法』(春秋社)


購入。
朴順梨『離島の本屋 22の島で「本屋」の灯りをともす人たち』(ころから)
井山弘幸笑いの方程式―あのネタはなぜ受けるのか (DOJIN選書 10)』(化学同人
『ほんまに vol.14』(編集・発行:くとうてん)


「カバー、どうしますか」と聞かれて、
確か、いいカバーだった気がする、と頭にひらめいて、
普段はもらわないけど、一冊だけ、かけてもらった。
すてきなカバーだった。ありがとうございます。


海文堂を教えてくれた上司にメールする。
すぐに返信が来た。もう店を出て商店街を歩いていた。
妻子は、どこかで待っている。僕は熱をもてあましている。
「音楽の棚もすごかった」という文面に、もう一度、
棚を確認しに戻ってしまった。やはり怖くて、
じっくり見ることができなかった。


帰りの電車、娘は眠ってくれていた。
妻と、買ったばかりの本を見る。
『笑いの方程式』をパラパラしながら、
けらけら笑った。漫才のDVD欲しいな。

*1:http://www.kutouten.co.jp/honmani/index.html

*2:『冬の本』での北村さんの文章、素晴らしかった。:http://d.hatena.ne.jp/tori810/20121228