2013 五本の指
え?いまさら?
もう1月も終わりますよ?
という自分の声が聞こえてきますが、
みゅっと唇をむすんで、小刻みに四度ほど肯いて、
そうして、2013年の読書を簡単に振り返ってみます。
2月に異動があって、新しいお店で働くことになりました。
おかげさまでとても忙しいお店で、「ありがたや〜」と無給残業しまくっていたら、
4月・5月と、具合が悪くなったりしました。そらそうだ。
たくさん働いていること=(自分の勤め先の)本屋さんが儲かっていること
では、ないです。ぜんぜん、違います。そのことを、今、
たった今、気がつきました。文章にしてみて。(←遅い)
今年は、きちんと、分相応に働きます。
もちろん、バイト時代みたいに、「時間が来たので帰ります!」
というスタイルは難しいとは思いますが、無給で6時間残業とかは、
もうやめにしようと思います。(←そんな体力もなくなってきたし)
おぉ、読書の話がぜんぜん出てこない!
いちおう、本屋の話は出てきているが、
客としてでかけた本屋の話を出せ!
2013年は、新しく、いろいろな本屋さんに出会えました。
それも、ちょっとした旅がくっついていたので、嬉しかった。
今年も、どこか遠くの本屋さんに、行けたらいいなぁ。(←もう1月も終わるけど)
2013年に新しく訪ねた本屋さん(順不同)。
海文堂書店(神戸市)(2013年9月閉店)
蟲文庫(倉敷市)*1
アルトスブックストア(松江市)*2
ちくさ正文館本店(名古屋市)*3
隆祥館書店(大阪市)*4
昨年もまた、いくつもの本、本屋さんとの時間を、
書きそこねた。残念でならないのは、9月に毎週のように通った、
海文堂書店さんのことを、ぜんぜん記事に出来なかったことだ。
海文堂で買った本のことも記録できてないし、海文堂で思ったこと、
海文堂で気になった本のことも書けなかった。
では、2013年の、五本の指です。
い:浅井慎平『気分はビートルズ (角川文庫 緑 541-1)』(角川書店)
ろ:西村佳哲『ひとの居場所をつくる: ランドスケープ・デザイナー 田瀬理夫さんの話をつうじて (単行本)』(筑摩書房)
は:ねじめ正一『荒地の恋 (文春文庫)』(文藝春秋)
に:早川義夫『たましいの場所 (ちくま文庫)』(筑摩書房)
ほ:本屋図鑑編集部、得地直美『本屋図鑑』(夏葉社)
これね、今までも思ってたけどね、
別に、順番とかじゃないんですわ。
去年読んだ、ささやかな冊数の本の中で、
好きなものから順に挙げたらこの5冊、
てんじゃないんです。
5冊選ぶ、となったときに、なんとなく、
収まりがいいのが、この組み合わせ。
4冊だったり、3冊だったり、2冊だったり、
1冊だったりしたら、これ以外の本が、
ぴょいと登場するかもしれないのです。
で、「もう来年からはこのやり方はよそう」
なんて、けっこう毎年思うのだけれど、
この「5冊選ぶ」というルールがあるから、
一年間の読書を、それなりにじっくりと振り返ることもできて、
「いい!」なんつってたくせにすっかり忘れてた本を思い出したり、
うっかり書き漏らしてたけどあの本は良かったよなぁ、と、
なんとか拾い上げられたりするので、そう簡単にはやめたくない。
「い」は、海文堂書店さんの古書コーナーで買った本。
これも、9月には記事にしきれなかった。買ったことも、
読んだことも。たぶん、「とり本屋」に初登場じゃなかろうか。
ビートルズがタイトルに入っているくせに、ときどきしか出てこない。
でも、なんか、いい。文章が、好き。写真も、いい。
クイズヒントでピントのアサイシンペイさんとは、
ちょっと結びつかないんだよなぁ。
「ろ」は、これまで読んできた西村佳哲さんの本と違って、
ひとりの人を追った本。良かった。スタンダードブックストア@心斎橋でのイベントにも、
参加してきた。その日のことは、やっぱりこの日記に書けていない。いいイベントだった。
西村さんのインタビューワークショップに、早いうちに参加したいんだけど、
日数が多すぎて、今の職場ではなかなかそんなに休めそうにない。
「は」については、日記にも少し書いた。
もうひとりの自分と対話することもないまま、
うっすらと興奮は薄れていってしまった。
でも、きっと、ひとつの区切りとなった。
「に」も、とても良かったのだが、すーっと抜けていってしまってた。
今、これを書くのにぱらぱらしてたら、ほかほかと温かいきもちになった。
早川さんの本は、『ぼくは本屋のおやじさん』*5が、
部屋に控えているので、近いうちに連れ出したい。
「ほ」は、なんというか、「通読」した感じじゃないので、
「読了!」という実感がなく、ここで挙げるのは、
ちょっとためらいもあったのだが、あの夜、
続けざまに登場する魅力的な本屋さんの数々に、
悲鳴をあげながらページをめくったことを思い出すと、
いや、まぁ、これは入れておかねばなるまい、と思います。
『本屋図鑑』をきっかけに、隆祥館書店、空犬さん、
すべからくさん、その他いろいろ、ベニヤ書店さんだったり、
新しい出会いから、再会、再発見、「実はわたしも隆祥館書店にいたんですよ」
などなど、派生した恩恵は数え切れないほどある。
あぁ、海文堂書店さんのことも、『本屋図鑑』からの、
大切な贈りものだなぁ。そうすると、海文堂書店で買った本も、
『本屋図鑑』からつながっているといえるわけですな。
その他の本などにも触れておこう。
堀江敏幸『雪沼とその周辺 (新潮文庫)』(新潮社)
これは、最初五本の指に入れてあったのだが、
最終的には外れてしまった。とてもステキな短編集だった。
明日、もう一度この選考をしたら、するりと選ばれるかもしれない。
いつか、堀江敏幸シーズンを迎えて、どっぷりと堀江敏幸の本におぼれたい。
黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い (講談社文庫)』(講談社)
読了直後は、「五本の指」だな、と思っていたのだが、
いざ選ぶ段になって、「これを入れるのはええかっこし過ぎじゃないか?」
とびびって選ぶことができませんでした。黒岩さんと面識あるひとびとが、
「黒岩さん・・・!」と熱い思いをたぎらせているのを見聞きするにつけ、
なんとなく、いじけた気持ちになってしまうのです。(←くだらない男だね)
新刊も気になります。黒岩比佐子『忘れえぬ声を聴く』(幻戯書房)
木村俊介『善き書店員』(ミシマ社)
堀部篤史『街を変える小さな店?京都のはしっこ、個人店に学ぶこれからの商いのかたち。』(京阪神エルマガジン社/京阪神Lマガジン)
内沼晋太郎『本の逆襲 (ideaink 〈アイデアインク〉)』(朝日出版社)
この中でどれか一つ選ぶ、ってのは、ちょいメンドウだった。
これ、いっしょくたかよ!てな気持ちもありますけれど、
これからの本屋さんとしての働き方を、大いに刺激してくれる本でした。
でも、どうにも消化不良で、今年1年、いや、何年もかかって、
再読、再読、思い出し、拾い読み、などを経て、いつの日か、
わたしの本屋さんスタイルの血肉と化してくれたらな、と。
あと、古本屋さんの本ね。
たくさん買ったけど、読めたのは少々、という。
岡崎武志『女子の古本屋 (ちくま文庫)』(筑摩書房)
内堀弘『古本の時間』(晶文社)
オカタケ師匠の新刊もありました。
岡崎武志『蔵書の苦しみ (光文社新書)』(光文社)
こちらは、『読書の腕前』に敬意を表して(?)、
あえて五本の指には入れませんでした。でも、これも好きです。
光文社新書での師匠の本、もうあと1冊くらい、すごいヤツを期待(←1冊だけ?)。
善行さんの、これは、読みかけたけど、頓挫。
やはり、あの大きさを車中のともにするのは、骨が折れる。
3日間くらい、夏休みがあればなぁ。(←こどもの夏休み、ね)
山本善行『定本 古本泣き笑い日記』(みずのわ出版)
そういえば、なぞの椎名誠回帰もありました。
椎名誠『活字のサーカス―面白本大追跡 (岩波新書)』(岩波書店)
椎名誠『岳物語 (集英社文庫)』(集英社)
椎名誠『岳物語 (続) (集英社文庫)』(集英社)
『本の雑誌』を手に取るようになったからかもしれない。
今の『本の雑誌』を読んでも、そんなに椎名誠は意識にのぼってこないけれど、
善行堂とかで昔の『本の雑誌』を買う機会もあって、その影響かしら。
『本の雑誌』を何冊も購入したのは、これを読んだから。
杉江由次、沢野ひとし『「本の雑誌」炎の営業日誌』(無明舎出版)
杉江さんのことが気になったのは、
『冬の本』*6に載っていた文章が、とても良かったから。
原武史『沿線風景 (講談社文庫)』(講談社)も良かった。
内田樹の本も、何冊か読んだが、以前ほど、効かなくなってしまった。
なんでだろう。・・・飽きたのか?悲しいな、自分。
そうそう、雑誌の担当になったから、というのもあってか、
去年はけっこう雑誌を買った。雑誌の場合、拾い読みっぽく読むので、
なかなか「読了!」って感じにならなくて、そうすると、
ついついこの日記でも取り上げないまま終わったりする。
まぁ、買っただけで満足してしまった雑誌も多いのですが。
そのうち、雑誌を積み上げて、順番に読み散らかす「雑誌の日」を試みたい。
さて、もう1月も終わってしまうのですが、(このフレーズ、3回目?)
2014年は、どういう心積もりで、本とつきあっていきましょうか。
ちょっと小説を読み増してみたいな、という気持ちがあります。
あと、詩も。こないだ実家に帰って、そのことも書き漏れているのだが、
こちらに送ってもらう本を段ボール一箱、選んできた。その中に、
詩の本を、ちらほら入れておいた。あ、あと鬼平も一揃い、
やってきます。鬼平ドラマムック*7、買わなくちゃ。
本屋さん巡りについては、恵文社一乗寺店、
スタンダードブックストア@心斎橋を定期巡回しつつ、
大阪の大型チェーンも一通り、回っておきたい。
雑誌売場を勉強したいなぁ。(←ようやく?)
野望としては、新潟は北書店*8、沖縄は市場の古本屋ウララ*9、
福岡のブックスキューブリック*10、鳥取の定有堂書店*11あたりに、
行ってみたい。ふたつくらいは行けるかな。
うん、ぼくの好奇心は枯渇したと思っていたが、
少なくとも、本屋さんに行きたい気持ちは残っているみたいだ。
今年もよろしくお願いいたします。(←もう1月も終わるけどね)
2012 五本の指
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2005 五本の指
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2004 五本の指
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*1:蟲文庫:http://homepage3.nifty.com/mushi-b/
*2:アルトスブックストア:http://www1.megaegg.ne.jp/~artos/menu.html
*3:正文館書店:http://www.shobunkanshoten.co.jp/
*4:隆祥館書店:http://atta2.weblogs.jp/ryushokan/
*5:早川義夫『ぼくは本屋のおやじさん (ちくま文庫)』(筑摩書房)
*7:火付盗賊改方研究会『鬼平犯科帳大研究 (TOKYO NEWS MOOK 391号)』(東京ニュース通信社)
*9:市場の古本屋ウララ:http://urarabooks.ti-da.net/
*10:ブックスキューブリック:http://www.bookskubrick.jp/
*11:定有堂書店:http://homepage2.nifty.com/teiyu/