恵から善へ駆けていく夜、ガケ経由。


古い友人に会うために、京都へ向かう。
高熱を乗り越えて、また妙な反抗期へたどり着いた娘を、
なだめたりスカしたりしながら、駅までが遠い。


久しぶりに四条を歩く。
オートバイに乗った陽気なサンタクロース集団がいた。
トナカイも少々。信号待ちで停車すると、通行人に向かって、
手を振る。なかなかにこころなごむ光景。娘も手を振っていた。


昼食のあと、用事が終わらない妻を残して、
ベビーカーを抱えながら階段を下りたり上ったりして、
待ち合わせの恵文社へと向かった。集合の5分前に到着したので、
5分だけでもと、店内へ潜入。あ、温かい。
入ってすぐのテーブルには、いつ来ても、
胸がときめく本が待っている。


すぐに店を出ると、娘は眠っていた。
恵文社の暖房にすばやく反応したか。
まもなく友人夫妻も現れて、お店に移動。
ゆっくりカフェもこもこ*1にて、ゆっくりする。


娘はずっと眠っており、妻が遅れてやってきても、
まだまだ眠っていた。もこもこさんには、
壁一面に本があった。マンガもたくさん。
子連れ歓迎だそうなので、恵文社に挑戦するも、
「一人で来たかった・・・」と惨敗した子連れ本好きさんは、
何者かに対する後ろめたさをここで癒すといいと思います。


目覚めた娘を連れて先に帰ってくれる妻に甘えて、
恵文社へと解き放たれる。が、なぜか、落ち着かない。
友人夫妻が店内を回遊しているからか。否!
その原因は、ガケさんにあり。



https://twitter.com/gakeshobou/status/544326337482092546


この移転&改名のおしらせに心ひそかに傷心していた私は、
何をするでもないが、ガケ書房へと行かずにいられない気持ちになっていた。
お気に入りのゾーンをひととおり、ふたとおり眺めて一冊の本をレジに持っていく。
堀部さんの無愛想な会計にチキショーな気持ちを覚えながら友人に別れを告げる。
妻にメールを打ってから、暗くなった京都の町を走り出す。


購入。恵文社一乗寺店
三度目の京都『本の中の、京都。 (―a private Kyoto travelogu)』(ディスカバリー号


UFJのATMはなかったよなぁ、と財布の中身を案じながら、
ガケ書房にたどり着いたときには汗ばんでいた。車は、飛び出している。
ミロコマチコさんのモグラを、初めてしっかりと見る。(2秒ほど)
店内に入る。絵本だけの古本市がやっている。『本屋会議』もある。
善行さんの古本もある。CDもある。マンガもある。
レジには山下さんがいる。お客さんとの会話に、
移転の話が出てきてギクリとする。


こちらにも、『本の中の、京都。』がある。
しまったな、と思う。恵文社で『本屋会議』を買って、
ガケさんで『本の中の、京都。』を買えば良かったかな、
などと思う。『本の中の、京都。』には、堀部さんも、
山下さんも文章を寄せている。『本屋会議』の方は、
恵文社での「本屋会議」に参加したので、
より恵文社の方が縁が濃い気がする。


そうして、ビニールに入った妙な本を見つける。
なんですか、これは。片岡義男


購入。ガケ書房
『著者公認・絶版短篇復刻ZINE「片岡義男ラシックス」給料日』


この本については、「目黒考ニの何もない日々」でも、
紹介されていた。*2


妻とのメールのやりとりで、西大寺にて待ち合わせが確定。
柔らかな山下さんの会計に移転の話題をぐっと飲み込み、
ふたたび暗くて寒い白川通りへ飛び出す。出町柳へ。


聡明な読者の方は、ガケ書房から出町柳へ向かうわたしが、
あの本屋さんを素通りできないはずではないか、と気づいたかもしれない。
けれども同時に、財布の中身を案じていたことも覚えておいでであろうか。
図書カードの使える恵文社ガケ書房で『本屋会議』を買わなかった私が、
ぴかぴかに光る『本屋図鑑』と、隣りにある『親子の時間』を目にして、
善行堂にて深くため息をついたのは2冊買うお金が残っていなかったからである。


時間もお金もないのに善行堂に飛び込んで、気もそぞろに棚に視線を走らせると、
店主が声を掛けてきた。二言三言で、疑り深いわたしにも気がついた。
善行さんは僕に気づいてくれている。「とりさん」と発音されたのだ。
たちまち、ガケさんの話から、夏葉社島田さんの話から、娘の話、
子育ての話など、話に花が咲く!ああ、楽しい!
すばらしい!温かい空気、音楽、本、善行さん、
外にはとっぷりと暮れた京都の町、
ああ、なんてすばらしい!


けれども時間もお金もない。
わずかなスキをついて、レジに一冊差し出す。
あぁ、ちくま文庫の背表紙があんなに並んでいる。
さようなら、さようなら。次回こそ、ゆっくりと棚を見るからね。


購入。
庄野潤三岡崎武志親子の時間』(夏葉社)


ようやく、オカタケ師匠&夏葉社の本を、
善行堂で買うことができた。


さんざん走って、よしあそこにデマチがあるぜ、
とたどり着いた交差点は、まだ百万遍であった。
もっと先かいよ。


ところで、結局、『本屋会議』を買ってない。