雨宿りの時間、ありますか

原発に反対しながら研究をつづける小出裕章さんのおはなし


先週、娘の体調不良によりキャンセルした健康診断。
再挑戦。健康診断って、わりと好き。指示通りに動く快感。
終わってから、診療所の隣りにある喫茶店に入る。(朝食抜きだったから)
雰囲気のよいお店。僕の後から入ってきたカップルが、
店主にいろいろ尋ねているのをフムフムと聞き耳。


コーヒー豆を買ってしまう。


歩いて、隆祥館書店へ。本屋図鑑イベントチケットを買うためだ。
予約してからずいぶん時間がたってしまって、ちょっと不安。
すこし離れたところから「本」という文字を見つけた。
店内は、予想以上に狭い。これから出す本なのか、
そこが「定位置」なのか、通路にもけっこう本が。


一通りぐるっと見て、7月に欲しい本はすでに、
使えるおこづかいの額を超えているにも関わらず、
あちこちに平積み・面出ししてあったのと、
こころの奥にあった後ろめたさなどが作用して、
一冊、レジに持っていった。


購入。隆祥館書店。
野村保子、小出裕章原発に反対しながら研究をつづける小出裕章さんのおはなし』(クレヨンハウス)


二村知子さんの接客に、なんというか、
背筋を伸ばさなくては、という気持ちにさせられた。
僕が店に入ってすぐは、レジの奥にいて顔も見えなかった。
途中一度、通路に出てきて鋭い眼光がこちらを突き刺した。
そして、上の本を持ってレジに向かい、渡したときにすぐ、
「あぁ、こないだ小出先生に来ていただいたんですよ〜」
「え?そうなんですかー?」


この時点では、イベントチケット購入の話は出していない。
誰に対しても、というわけでもないのかもしれないが、
いたってフツウの、標準の、いつもの接客なのだろう。
その後、原発の話とかチケット購入のやりとりがあって、
僕が普段本屋さんで買い物するときと比べれば格段に、
たくさんのことばのやりとりとしたことになるのだけれど。


なんば方面に向かって歩きながら、なんというか、
ひとりの人として扱ってもらった気がしていた。
そういう接客、してるだろうか、と自問した。
誰に対してもそういう接客が喜ばれる、
ということではないとは思う。


けれど、僕はなんだか、「しまった!」という気になった。
自分の普段の接客を思い出して。


そんなことをつらつら思いながら歩いていると、
それはそれはものすごい雨が降ってきた。
傘を持っていたが高架下で雨宿りした。
ずぶぬれの人々が行き交った。
雨宿りをしているのは僕と、
向こうの歩道で寝ている男だけだ。


みんな、雨を待つだけの時間がないのだろう。
男は、雨が降る前からそこで寝ていたけれど。


そうそう、さっき書いた「後ろめたさ」というのは、
放射能のことが気になって関西へ移ってきたくせに、
その後、全く放射能原発のことについて考えてこなかったこと、
それがこころのそこで疼いていた、そのことだ。


選挙もあるしね。


購入。ブックオフ大阪心斎橋店。
エーリッヒ・ケストナー、小松太郎『一杯の珈琲から (創元推理文庫 508-3)』(東京創元社


購入。ブックオフなんば戎橋店。
はるき悦巳じゃりン子チエ (4) (双葉文庫―名作シリーズ)』(双葉社
堀江敏幸雪沼とその周辺 (新潮文庫)』(新潮社)
親野智可等今すぐ!ほめ上手な親になれる本―勉強もしつけもこれでOK (中公新書ラクレ)』(中央公論新社


車中のとも。
西村佳哲自分の仕事をつくる (ちくま文庫)』(筑摩書房

パンは手段であって、気持ちよさだとかやすらぎだとか、平和的なことを売っていく。売っていくというか、パンを通じていろんなつながりを持ちたいというのが、基本にあるんだと思います。(p.176)パン職人の甲田幹夫氏のことば

自分がどんな場所を気持ちいいと思うか。その判断力がなかったら、気持ちのいい場所を生み出すことなどできない。(p.205)

馬鹿がする仕事の素晴らしさは、それが無償のものであることに尽きる。(p.228)


本は手段であって、本を通じていろんなつながりを持ちたい。
自分がどんな本を気持ちいいと思うか。問い合わせに応える、無償で。