サドルを見てた男の子
車中のとも。
長嶋有『猛スピードで母は (文春文庫)』(文藝春秋)
その昔、(って、そんなに前でもなかろうに)
長嶋有が男だと知ったときに、軽いショックを受けた。
そんなことは、今、この記事を書き出す瞬間まで、
すっかり忘れていたのだ。
今では、もう、長嶋有は、いい感じのおっさん、
というよりも、もう少し若い印象、お兄さん、くらいか。
だから当然、(当然?)主人公は男として読んでしまう。
『ジャージの二人 (集英社文庫)』も、『パラレル (文春文庫)』も。
一ついえるのは私は昔から一貫して鈍い女だということだ。(p.31)
言われたぼくはすっかり混乱してしまった。
しばらくして、ようやく主人公が女だったことに気がついた。
それ以前のシーンの印象が、すーっとふたつに割けていく。
男の子が洋子さんと散歩する光景と、女の子が。
女だったのか。
男の子で読んでた時のも、すごく面白かった。
小学生なのに「私」って言ってる男の子。
サドルばかり見ている男の子。