彫りだせ、笑いの素
銀座は歩行者天国。
なんとなく幸せな気分、平和な気分。
「松坂屋古本フェスタ 銀座ブックバザール」
風邪なのか、とても頭が痛い。つれが到着する前に、
屋上へゆく。ベンチに座る。気合を入れる。売り場へ。
ほどなくつれがやってきて、久々の古本市だ。
購入。
E.ケストナー『子どもと子どもの本のために (同時代ライブラリー (305))』(同時代ライブラリー)
陣内秀信、小林雅裕『東京キーワード図鑑 (ちくまライブラリー)』(ちくまライブラリー)
小原啓渡『クリエーター50人が語る創造の原点』(論創社)
再び、屋上へ。寒い。親子連れが何組もいるが、
なんというか寒々しい光景だ。ここに幸せは、あるのか。
風船が11個、飛んでいくのが見えた。飛ばしすぎだ。
頭痛を押して、東京オペラシティーアートギャラリーへ。*1
『シュテファン・バルケンホール 木の彫刻とレリーフ』
まいった、やられた。何周もした。よかった。間に合った。
25日まで。ふいと時間が余ったあなた、初台へ。
エントランスから入ってすぐに、6枚のレリーフ。
左から2番めが、チラシにも使われていた《淡い緑色のバックの前の女》。
右側に視線を流せば、出ました、《ベンチの上の3人の男たち》。
予想より、ずっと大きい。なんとなく笑いがこみ上げてくる。
「ベンチ男」に向かって左側の壁には、建築を彫ったレリーフが3枚。
遠目にはおそろしく立体的な絵画のように見えるが、彫って彩色してあります。
これがよかった。緑基調の《ミュルバッハのベネディクト会大修道院》。
鉛筆画みたいに繊細な風景。思わず顔を近づけて彫り跡を確認。
一番右の《ドレスデン宮廷教会》は、手前に走る車がいい。
車の、ちょっとパウル・クレーを思わせる「つたない感じ」が印象的。
教会が暗闇の中でどーんと大迫力に立っている前を、ちょろちょろ走る車。
さて、振り返れば「ベンチ男」はすぐ目の前だ。
黒いズボンに白いシャツ。バルケンホールが、かつて、
「誰でもなく、誰でもありうる」という意味で「Mr.Everyman(ミスター・エヴリマン)」とよんだ、
この憎めないお兄ちゃんは、このあともたびたび登場する。
手塚治虫でいうところの、「ヒゲおやじ」か。
でも、手塚治虫にはほかにもたくさんのキャラがあったけど、
バルケンホールはほとんど「ミスター・エヴリマン」だけを起用し続けているようだ。
もうちょっと、没個性ちゅうか、抽象的な「男」なんだろう。
やべえ、きょうも記事が長くなってる。
「ベンチ男」の一番後ろの男は、ポケットに左手をつっこんでいる。
手の部分のふくらみがけっこうリアル。「ベンチ男」は立体なので、
どこから眺めるかによって印象が違って面白い。離れたり、回り込んだり。
ほかのお客さんも、うろうろしている。楽しい。
もういいかげん見るのはよせよ、と「ベンチ男」が言う前に、
やつらの後ろにある素敵な「タワー」のレリーフへゆこう。
《テレビ塔(シュトゥットガルト)》、3メートルの巨大レリーフだ。
まっさおな空を背景に、タワーがにょきっと立っている。いいなあ。
見上げると、なんだか本物のタワーを見上げているような気分になる。
タワーの足元の車が視界から外れてしまうせいだろうか。
それにしても展望台部分の丸みが生々しい。立体的だ。
どこの世界のテレビ塔も、ぼくを元気にさせてくれる。
ありがとう、タワー。
ようやく、次の部屋の入り口が見える。
あ!あれに見えるは《エレファントマン》じゃないか!
チラシでは左半身が見えているが、こちらから見えるのは右半身だ。
頭は象だけど、身体は例の「ミスター・エヴリマン」だ。
ポケットに両手を突っ込んでいる。
奥の壁にそって、動物シリーズが並んでいる。
《仰向けのシマウマ》に脱力する。
《プードル》の顔がなんかすごく人間ぽいのも笑った。
まるで「顔はめ」じゃないですか。指さして笑う女の人もいた。
やっぱ、おかしいよね、この顔。それを見て安心したりした。
ぐるりと顔を一周させてさきほど入ってきた入り口脇の壁を見ると、
でっかいレリーフ、なんか動物と人間のキャラバンみたいな。
タイトルは《大パレード》。うふふ、ってなっちゃう。
仰々しいバカバカしさ。バルケンホールって、面白いなあ。
《大きな頭部》の待つ次の部屋に入って、振り向く。
向こうに、《エレファントマン》が見える。表情はわからない。
《大きな頭部》と並んで、《エレファントマン》と対峙する。
なんか、《大きな頭部》が頼るべき兄貴分のように感じてくる。
その部屋をさーっと流したあと、次のしきりへと歩をすすめる。
な、なんだこりゃ!いくつかの人間の立像と、その向こうに抽象レリーフ。
僕の動きに合わせて、人物像の背景が流れていく。
車窓なの?世界の車窓からなのか?
パンフレットを見ても、いまいち対応関係がわからない。
《赤いシャツの男、抽象的なレリーフ》などは、
レリーフと人物像が近くに配置されているのでわかるのだが。
学芸員のお姉さんに尋ねると、黄色い服の男があのレリーフで、など、
丁寧に説明してくれた。会場によって配置が変わるのですか、と重ねて聞けば、
今回の展示は、全体として一つのインスタレーションとなるように、
バルケンホール自身が配置を決めたそうだ。なるほどー。
なんとなく安心したので、もう対応関係とかはそっちのけで、
勝手に楽しむことにした。ここからこう歩くと、面白い、とか。
あの後ろ手に組んでいる男は、この展示を見に来たお客さんみたいだ、とか。
《赤いワンピースの女、空間のレリーフ》と《女の裸体、線のレリーフ》との間から、
向かい側の壁のレリーフ群を背景に3人の男を眺める位置が気に入った。
そこから左に目をやれば、「赤いワンピースの女」の後姿が見える。
強い意志を持ってどこか遠くをにらんでいるように見える。
警備員さんが立っている横にいた《女の背中のレリーフ》は、
やけに色っぽく感じた。警備員さんも配置されていたのかしらん。
2枚並んだ大きなレリーフの右側、《大きなレリーフ(男)》は、
画面の中で小さめに彫られているからか、どことなくさびしげ。
次に現れた2体のブロンズ像は、立ったまま身体を折り曲げている。
友達に似ている気がしたせいもあるのだが、なんか笑いがこみあげてくる。
東京に滞在中に制作された《東京ドローイング》が、ずらり。
人物は、なんかみんな首をかしげているようだ、こちらもかしげちゃう。
《黒いズボンの小さな男》が待ち受けている。もうおしまいだ。
左へ曲がれば、出口。右へ曲がれば、《大きな頭部》の部屋に戻れる。
右へ曲がる。続いて左へ。《エレファントマン》だ。よう!元気か!
彼の脇をすり抜けて、また戻る。「ベンチ男」がむこうを向いている。
3人縦に並んで、むこうを向いている。
2時間くらいいた。3日ぐらいいれるような気がした。
どうしても見つけられなかった《立っている小さな男》を発見して、
まあ、このへんにしておくか、と思った。頭痛のことは、忘れていた。
改装後のブックファーストルミネ新宿1店にはじめていく。
つれの言うにはルミネ2同様に棚が高いよ、とのこと。
あまり期待しないで行ったのだが、それほど圧迫感がない。
ビジネス書のそろえ方が、ぼくの好きな感じだった。
でも前向き面陳の一冊が、床に落ちましたよ。音がしましたよ。
びっくりしてしまいましたよ。拾いましたよ。戻そうとしたら、
ぎりぎりだったから、隣の違う本の前に置いてやりましたよ。
『LONG LIFE STYLE 01』*2がフェア台みたいなとこに陳列されていて、
D&DEPARTMENTで売っている時計とか学校机の写真立てなどもあった。
すげー。がんばれ、D&D。*3
いま、サイトをみたら、ナガオカケンメイさん、トップランナーに出るらしい。
うわー。うわー。ビデオにとろう。
・・・そして一度も開いていない『Only honest design can be recyclable.』を、
どうしてくれよう、うう。
気になる新刊。
Pooka『Happy Greeting Card Book―POOKA STYLE』(学研)
中山庸子『家にいるのが楽しくなる本 (新潮文庫)』(新潮文庫)