弱いところをさらけ出してもいいかしら

今夜は、待望のK氏主催の忘年会。
ブログをたどると前回参加のあれは、
2017年だったみたいだ。マジで?そんな前?
その後の会は、参加できなかったんだっけ。

2022年の1冊を持参せよというミッション。
数日前からツイートをたどって、今年読んだ本を、
なんとなくさらっていって、2、3冊までしぼりこむ。
仕事に行けなくなってから後の記憶、というか、
時間感覚がおかしくなっていて、あるいはそれは、
コロナ時代になってからずっとおかしかったのかもしれないけど、
それでもやはり仕事に行っていた頃に読んでいた本の記憶は、
今、思い出そうとしても容易にはよみがえらない感じだ。

なんというか、パラレルワールドにいる自分の記憶、
みたいな感じだろうか。ちょっと違うか。
昨日のことのはずなのに、もっとずっと、
はるか昔の記憶、みたいに感じる、とか。

それでもまぁ、これなら何かしら、
ことばにできるかもしれないな、というやつを選んだ。
妻が仕事から帰る前に出発しなければならないので、
珍しく、子どもたちが帰ってくる前から夕飯の準備。
いつもこれくらいの時間から準備すればいいのにね。
チャーハンをこしらえて、昨日の豚汁を温めなおす。

すでにしっかり暗くなった路地へと飛び出す。
駅まで小走り。引っ越してから駅まで小走るのは、
初めてかもしれない。集合時間にはじゅうぶん間に合うが、
せっかく梅田に出るなら本屋の一軒でも立ち寄りたい。
松下さんの本で紹介されていた清水哲男の、何か、
詩集の一冊でも見つけられないものか、と、
そういう気持ちで歩を進めてゆく。

 

車中のとも。
松下育男『これから詩を読み、書くひとのための詩の教室』(思潮社

 

詩も同じ。人生を賭して詩を書くつもりなら、自分の一番弱いところをさらけ出す覚悟が必要。その覚悟が人の胸を打つ。(p.323)

 

久しぶりの梅田。
地下鉄の改札を出て、右へ。
濁流のような人の流れをぬって、
目指す方向へと進んでゆく。

この人混みにもひるまず進む術は、
令和のサバイバルに役立つや否や。
紀伊國屋書店で詩のコーナーを見るも、
清水哲男どころか、現代詩文庫自体、
3冊くらいしか置いていなかった。
やや悄然としながら、すぐに去る。

スマホの地図アプリに助けられつつ、
会場の飲み屋を目指して進む。知っている道と、
知らない道とが、交互に現われて、でも、
それほど心配はせずにゆく。清風堂書店に出た。
詩集のコーナーだけ覗いて、出る。

地上に出て、目的の店の近くまで来たはずなのに、
特定できないまま路地をぐるぐると歩きまわる。
本が見つからなくても意地でも店員さんに尋ねない私は、
誰かに電話して訊ねればいいのに、開始時間を、
10分ほど遅れてようやく店名を確認する。ここ、
15分前に通りすぎた店だったよ。

思いのほか、見知った顔の並ぶテーブル。
穏やかな気持ちで、余裕のある方のイスに座る。
美味しい料理を前に少しずつ舌もほぐれて、
Iさんに、JR奈良から図情への裏道などを教わる。

お久しぶりのオザワさんがやってきて、
本島と離れているのをいいことに、
離れ小島でひとり芝居の話などをする。
こちらからワールドエンズガーデンでやりたい、
と言いつつ、ずっとそのままになっていたのだが、
決めた、あの、ベッドの上でひとり芝居を、
やらせてください、とお願いする。

さてそこに、
自分の一番弱いところをさらけ出す覚悟は、
ありましたか?

ラストオーダーの声も聞こえてきた、
なんとなく、このまま散会するのでは、
というところでようやく、ミッション、
今年読んでよかった本の紹介タイム。

酔っ払っていて、だいぶん聞き漏らしたけど、
紹介された本たちの書名だけでも以下に。

 

山口尚『日本哲学の最前線』(講談社現代新書
奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を』(イースト・プレス
イノハラカズエ『松江日乗』(ハーベスト出版)
島田龍:編『左川ちか全集』(書肆侃侃房)
坂上香『プリズン・サークル』(岩波書店
ジョゼ・サラマーゴ:著、木下眞穂:訳『象の旅』(書肆侃侃房)
駒沢敏器ボイジャーに伝えて』(風鯨社)
藤本和子イリノイ遠景近景』(ちくま文庫
キム・スム:著、岡裕美:訳『さすらう地』(新泉社)
ジョーダン・スコット:著、シドニー・スミス:絵、原田勝:訳『ぼくは川のように話す』(偕成社
真木悠介『気流の鳴る音』(ちくま文庫
柿内正午『プルーストを読む生活』(エイチアンドエスカンパニー)

 

みなさんへのご挨拶もそこそこに、
奈良組3人は一足お先に歩き出す。JR環状線が、
けれど、線路内立ち入りとかでなかなか動かない。
ようやく動き出したものの、京橋でまた、
ぴたりと止まった。飲みすぎたのだろう、
「すんません、ちょっと、また」と言って、
電車を降りてトイレに行く。終電間に合うかしら、
とか検索したら、けっこうギリギリ。

ホームに戻るエスカレーターで、あれ、スマホが無い!
慌ててトイレへ駆け戻って、お兄さんが入ろうとしていたその個室、
ちょっとすんません!と、無事に回収。電車にも乗れた。

近鉄線でぐっすりと眠って、
すこし回復したか、寒風の中、
家までいっしょうけんめい、歩いた。

今日の日を、
何かのきっかけにしたいものだな、
と思いながら歩いた。