本を想う幸せと終わらない土曜日

幼年の色、人生の色


小走りで駅を目指してる途中、
視界の端に何か動物がうつる、
鹿だ。鹿がいて、それに微笑みかける男性、
その横をさっさと行き過ぎるわたし。


鹿を見かけると、縁起がいい気がするね。


おかげさまで、12月の忙しさを、
今年も味わうことができている。
第二土曜日、なかなかのしびれ具合。
それでも、楽しめているくらいだから、
たかが知れていると言えば言えよう。
定時を1時間越える前に、
お役御免。


車中のとも。
高橋源一郎鷲田清一、長谷部恭男、伊藤比呂美読んじゃいなよ!――明治学院大学国際学部高橋源一郎ゼミで岩波新書をよむ』(岩波書店


「ぼくはやっと正しさから出立する」(p.237、私と岩波新書2 じぐ「ぼくは「逸脱」をとりたい」)


ぼくも出立したい。


少し憂鬱な会合への参加、その前に、
自分を鼓舞すべく、スタンダードブックストア@心斎橋へと向かう。
カフェで夕飯、オムライスとグレープフルーツジュースを飲み、
地階で買ってきたアメリカの書店の写真のポストカードで、
大学の先輩へと手紙を書く。書くことでまた、
自分を励ます。本は買わない。
買わずに、会合に向かう。


途中で、珈琲豆店に入る、
そこでテイクアウトでコーヒーを一杯、
豆も50g 買う。店主であろう男性との会話にも勇気づけられ、
時間ギリギリに会合に顔を出す。


コーヒーは、とても美味しかった。


結果的には、僕の心配は杞憂に終わり、
前向きな気持ちでその時間を過ごし、
再び、夜の心斎橋へと放り出された。
ホッとした気持ちでまた、ブックストアへ。


本屋さんで棚を眺めているとき、本を触っているとき、
ぎゅーっと胸か胃かそこらがしめつけられるような幸せを感じることがあって、
そんな風にかつて好きになった人がいた。本を想う幸せとその人を想う幸せと、
似ていたようにも思えるが、いや、そんなはずはなかろう。


本への想いは、いつだって片想いだ。いつまでも片想いだ。


本を想う幸せと、その人を想う幸せと、
どちらの幸せも同時に感じていたのだろう。
だから、「似ていた」と思うのか。


もうずいぶんと前のことだから、
忘れてしまった。


今日、長田弘の本を触っているときに、
ふと、その人のことを思い出した。


購入。スタンダードブックストア@心斎橋。
長田弘幼年の色、人生の色』(みすず書房
篠賀典子、芹澤健介、北條一浩本の時間を届けます』(洋泉社
佐藤ねじ『超ノート術 成果を10倍にするメモの書き方』(日経BP社)


気になる新刊。
本の雑誌編集部『本の雑誌403号2017年1月号』(本の雑誌社
司馬遼太郎ビジネスエリートの新論語 (文春新書)』(文藝春秋
せとうち暮らし編集部『せとうち暮らしVol.20 (特集:本はチケット。ページをめくると、そこは瀬戸内。)』(瀬戸内人)


車中のとも。
高橋源一郎鷲田清一、長谷部恭男、伊藤比呂美読んじゃいなよ!――明治学院大学国際学部高橋源一郎ゼミで岩波新書をよむ』(岩波書店


p.243の伊藤比呂美高橋源一郎は、ジョンとヨーコみたいだ。
まず高橋源一郎がジョンに見えて、するとふたりがジョンとヨーコになる、
伊藤比呂美からだと始まらない幻想。などと扉の写真を面白がっていたが、
本文を読み始めたら、それどころではない。こいつぁかなり面白そうだぞ!
ヨーコみたいとか言ってる場合ではない。そしてやっぱしフォント芸、要らない。
なんのつもりなのか、これ。


朗読されたという「カノコ殺し」、すさまじかった。
伊藤比呂美の詩、初めて読んだのだったか。すさまじかった。


子育ての話、日本とアメリカの話、
ときどきTLにため息を放り投げつつ、
ぐいぐいと読み進めていく。


伊藤比呂美の詩、だけでなく、
文章をほとんど読んだことがないはずだ。
いろいろ読んでみたいな、と思う。


帰宅して、妻子が寝てるので伊藤比呂美人生相談教室の続きを読む。
人生相談とかあまり読まないし、ちらっと読んでも美味しいと思えないことがほとんどだったけど、
この味わいたるや。この場にいたかったなぁ。この日に相談した学生さんはみんな、
がっしりと正面から受け止めてもらって今後の人生に自信を持てたことだろう。


講義の後に置かれた伊藤比呂美の言葉も、良かった。
あとがきたちで、ゼミ生の言葉、これもまた、良い。


いい気分で奥付にたどり着いた。そして、
奥付のあとに「おまけ」、嬉しい!
デザートあったの!っていう。


ほら、外食で美味しい食事をしたあとに、
忘れてたセットのデザート出て来て超うれしい!
っての、あるでしょ。


おまけの対談で、発言者が、性別だけで記されているの、
なんか面白い。識別しようとすればできるのかもしれないが、
そのままなんとなく、読み進める。男性、男性、男性、
たまに女性、この女性はさっきの女性だろう、男性、
男性、どうして男女の属性を発言者の区別に用いたのか、
年齢ではだめだったのか、イニシャルではだめだったのか、
でもこの、誰が誰だか男女の区別でしか記さないやり方は、
僕にはなんだか面白い、おもしろくおまけを読み終えた。


おまけのおまけは、すでに二度ほど読んでいるので、
今はもう、いいか。ぺらり、ぺらり、ぺらりと進んで、
また奥付が現れた。


また奥付が現れた!?


先の奥付と、後の奥付と、
交互に開いて違いを探す。
違いはけっこうある。


どういう遊びなんだろう。


伝染るんです』の単行本1巻*1のことを思い出した。
そうして、編集者のことを思った。おまけのあとがきで、いや、そういえば、
あとがきたちのなかでも名前があがっていたな。フォント遊びにも、
いろいろな思いがあったんだろうか、と思った。
話を、聞いてみたいと思った。


読了。高橋源一郎編『読んじゃいなよ!』(岩波新書


読み終えて、読了ツイートを投じ、そのままTLを拾う。
その後、もっかい「カノコ殺し」読んだ。


読んじゃったあとの、呆然とした、また次の何かを読みたいような、
このまましばらく呆然としたままでいたいような、眠りたいような、
飲みたいような、誰かとしゃべりたいような、しゃべりたくないような。


ココアを作って、飲む。


シャワーを浴びて、まだ、
眠りたくない気持ちがある。


読了。
施川ユウキバーナード嬢曰く。 (REXコミックス)』(一迅社