装丁家に再会したく

偶然の装丁家 (就職しないで生きるには)


ゆうべ、洋子さんの本をすこし急いで読み干したのは、
交換会に備えて、これを読んでおきたかったから。
多少、迷いはあるけれど、これを持っていこうかと。


車中のとも。
矢萩多聞『偶然の装丁家 (就職しないで生きるには)』(晶文社


交換会のテーマは、「2014年のマイベスト本」。
5冊選ぶのさえ決めきれず、こぼれた本を列挙する僕が、
どうして1冊選びきれるだろうか。けれども、それが、
今回のお題。それならば、今回の「文脈」で一冊を。


いちおう、5冊まではしぼってあるのだから、
まずはそこからスタートしよう。そうして、何か、
紹介するにあたって、話ができるものがいい。
あと、誰かとかぶりそうなものも、避けたい。


「マイベスト」とは言うものの、交換する本である。
自分以外のひとに、進呈するものである。そこに、
ぬぐいようのない押しつけがましさがあるのは仕方ないが、
せめて、説教臭さは感じられないようにしたい。


まぁ、あれこれとことばを並べたてたけれども、
ふと、『偶然の装丁家』ならどうだ、と仮に決めて、
そうしてどんな風に紹介しようかとか、読んだときのきもちとか、
当時のブログとか、思い出したりして、これがいいかな、と。


紹介するにあたって、もう一度、読んでおきたい。
というか、そうとう励まされた記憶があるのだけれど、
『あしたから出版社』*1は読みなおしたのに、こっちは、
その後、再読してない。その「不公平感」も、
じつは、ずーっと、感じていたのだった。


ページをめくる。はじめのページに、手書き文字だろうか、
「偶然の装丁家」の字を切り取って並べている写真が。
いちど本を閉じて、探す。背表紙に、その文字を見つける。
カバーを外して持ってきているので、ミロコマチコさんの、
赤と茶色の装画がバッチリ見えている。この装丁、多聞さんの。


目次を見る。じっくり見る。思い出してくる。そうして、
「はじめに」を読むと、ふっと多聞さんの声がよみがえる。
あぁ、お久しぶりです、とご挨拶したくなる。

はじめて、ぼくはここにいていいんだ、と思った。(p.26)


わずか数ページ、学校の先生とそりがあわない多聞少年は、
幸運にも健やかに朗らかに生き延びていく。けど、
はらはらした。ひやひやした。同じような環境で、
心身ともに朽ち果てた子どもたちが何人いたろうか。


自分のことを考える。想定の範囲外の出来事、振舞いに対する耐性は、
日に日に弱まっている気がする。コンディションにもよるけれど、
なるべく、過去の体験になぞらえて対処できるように、
心身が身構えてしまっている。仕事中に多聞少年が目の前にいたら、
余裕を持って接することが出来るだろうか。自信がない。


多聞少年を苦しめているのが、自分のような気がして、苦い。


今日も、雑誌は少なめ。
けれども、積もり積もったあれこれと格闘していると、
早々に日は暮れる。やれ、急げ、ほれ急げ。


購入。
矢萩多聞『偶然の装丁家 (就職しないで生きるには)』(晶文社
中川右介出版社社長兼編集者兼作家の 購書術: 本には買い方があった! (小学館新書)』(小学館


というわけで、交換用に購入。もう、迷わない。


『みすず』の読書アンケート特集号、今年も出たみたいだ。
去年、わざわざ京都まで買いに行ったのに、読んでいない。
そろそろ、読みますか、とほほ。


車中のとも。(帰り)
矢萩多聞『偶然の装丁家 (就職しないで生きるには)』(晶文社


「1 学校とセンセイ」を読み終えた。石井先生との出会えたのは幸運だった。、
けれども中学に進んでからの状況をみると、少なくともその当時においては、
石井先生との日々が彼の人生を温め続けたというわけでもなかったようだ。
未来が見えない当時の不安、いかばかりか。多聞少年!