寝坊と本音と本屋と本気

蔵書の苦しみ (光文社新書)


またも寝坊だ。これは、見事だと言わねばなるまい。
どうしたことでしょうか。寝坊のフルハウスですか。
買ったばかりの光文社新書、どちらを持っていくか迷って、
こんな自分に嫌気がさすような状況では、活を入れるため、
『修業論』*1を持っていきたくなるところであったが、
今日は『本屋図鑑』のイベントに行くのである。


ならば、順当に本の本を持っていくのが気分ではないか。
しかも、私は寝坊した身である。そうこうしているうちに、
どんどん傷口から血が流れ出ているのである。迷う時間はない。
いや、既に迷っている。いや、いや、いや。


車中のとも。
岡崎武志蔵書の苦しみ (光文社新書)』(光文社)


面白い。オカタケ師匠のちくま文庫の一連の古本本とは、
一線を画すスタイルの本だなー、という印象。
なんだろ、テーマが「蔵書」というところに、
絞られているからなんだろうか。
僕の中では『読書の腕前』が、上の古本本の総決算、
という位置づけで愛読してきたのであるが、この本は、
あの感じとはまた違った面白さ。「読書」の話じゃないからか。
「本」の話だからなのか。

事情が許せば、買った本は全部そのまま残しておきたい。それが本音だ。(p.25)


師匠の、本音が聞けます。


退勤後、定期券の範囲内で行ける駅から、
隆祥館書店を目指して歩く。陽射しはだいぶ弱まり、
夕方のさわやかな光の中を『新しい青の時代』*2を聴きながら。
小腹をだますために、ファミマでパンを買う。


18時ちょい過ぎに、隆祥館書店の店をざっと見てから、
エレベーターで7階へ。「会場では靴をお脱ぎください」という
貼り紙がしてある。靴を脱ぐ、ということにドキドキする。
すでに何人も人が入っている。靴をビニール袋に入れる。


チケットを渡して名前を言う。フリーペーパー的な紙をいくつかもらう。
受付カウンターには、『本屋図鑑』が並んでいる。すぐにでも買いたい。
自由席。前から二列目に腰をおろしてすぐ、一番前に座りなおす。
荷物を置いて、財布を持って、『本屋図鑑』を購入。


購入。隆祥館書店。
得地直美、本屋図鑑編集部『本屋図鑑』(夏葉社)


二村知子さんがやってきて、冒頭、『本屋図鑑』の「はじめに」を
紹介。紹介というか、しっかりたっぷり朗読。なんと言うか、
二村さんのこの本に対する感動、熱い気持ちを感じた。
空犬さんと、夏葉社島田潤一郎さんが登場。


『本屋図鑑』が出来る経緯や、取材した本屋さんの話など、
笑い声の絶えないあっという間の100分でした。
質疑応答的な時間で、鳥取市の男性が質問したときに、
心なしか島田さんの目がギラリとしたように見えた。


その質問のあと、かすかに緊張感が増したふたりは、
けれどなごやかに回答していたのではあるが、
できればぼくはもっともっと、空犬さんや島田さんに、
本屋さんのことをシリアスなところも聞きたいと思った。
この質問が出たときの雰囲気は、「あ、ちょっと本気でそうだ」
っていう感じで、もちろん手を抜いているわけではないのだけれど、
耳に心地よい話ばかりでなく、これから本屋さんを愛するひとびとが、
真剣に何をしていけばよいのだろうか、ということも聞きたかったなぁ。


イベントのあと、メールをいただいていたすべからくさんと飲みに行った。
初対面ではあったが、思いのほかリラックスしておおいに楽しく飲んだ。
こういってはなんだが、「ともだちができた」といった感であった。
関西に越してきて1年半、わたしにもともだちができたのであった。


帰宅してから、楽しく飲んだことを妻に報告。
そうこうしているうちにまた、夜は更けていくのであった。
明日も寝坊したら、今週、全部寝坊なんじゃないの?
怖いもの見たさみたいな気持ちが生じるのを、
必死に押し殺して、気合いを入れて寝る。