ソムリエのいる店で

上林暁傑作小説集『星を撒いた街』


午前中、娘を負ぶって洗濯物を干していたら、
うまいこと眠ってくれたので、その隙に今日返す本を読み干す。


読了。
徳川宗英『徳川家が見た幕末維新 (文春新書)』(文藝春秋


ところが、図書館に返しに行ったら、
期限は23日までだったそうな。えらいすいません。


借りた。奈良県立図書情報館。
蓼沼宏一『幸せのための経済学――効率と衡平の考え方 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)』(岩波書店
竹内修司『1989年?現代史最大の転換点を検証する (平凡社新書)』(平凡社
鷲田清一語りきれないこと 危機と傷みの哲学 (角川oneテーマ21)』(角川学芸出版
北原尚彦『発掘!子どもの古本 (ちくま文庫)』(筑摩書房


午後から京都に向かう。
進行方向右手の窓から遠くに山のみどりがきれい。


車中のとも。
荒川洋治夜のある町で』(みすず書房

二人で話すこと。三人もいると、だれかが気をつかう。三人は他人のはじまりなのである。(p.14)


本棚の目に入りやすいところにおいてあるので、
ひんぱんに「読み直そう」と思いつつも、
単行本なので通勤にはなかなか連れて行けない一冊。
ようやくの再読。3度目くらいかしら。


思いのほか、笑える文章の連続に驚く。
もういいや、と思って笑顔を解き放つ。
車中で本を読みながら笑ってしまうことを許すとは、
だいぶん、図々しくなってしまったことよ。


友人の展示を見た後、次の待ち合わせまでの残り時間で、
なんとか善行堂にすべりこみたい!と自転車をこぐ。
京大を過ぎた辺りから「おや?」と思う。上り坂?


歩きだと気づかないくらいの坂なんだろうが、
自転車ですらわずかな違和感しか覚えない程度だろうが、
地味に足腰を鞭打ってきて、苦笑い、膝笑い。


おまけに、シャッターが閉まっている青っぽいお店を見て、
「あ!善行堂閉まってる!昨日、ブログに書いてなかったのに!」
ケータイで「古本ソムリエの日記」*1を確認しても、休みとは書いてない。
でもきっと、「長岡天神ひと箱古本まつり」というのに行ってしまったんだ。


それにしても、閉まってるシャッターに貼り紙とか欲しいよな、
と毒づきながら、諦めきれずに道を進むと、見覚えのあるオープンカフェ
おや、もしかして、もう少し先にあったんじゃ?と思って進めば、
善行堂!開いているじゃないか!店には善行さん、おひとり。


とり、ひとりずもう。


時計を下目で睨みつつ、店に飛び込む。
ご挨拶してしまうとお互いに緊張するので(?)、
背表紙にしがみつく。『夜のある町で』を発見して、
なんとなく、嬉しくなる。欲しい本を見つけても嬉しいが、
持っている本を見つけても嬉しいものだ。そうこうしているうちに、
何組かのお客さんが入ってくる。


時間もなくなってきたので、今日の目的である2冊を手にして、
善行さんに向かっていく。自分が人の顔を覚えられないヒトなので、
オカタケ師匠とかナンダロウさんとか善行さんとかに遭遇すると、
「あー、ボクのことを見て『あ、こいつ誰だっけ、何者だっけ』と、
 気を使わせてしまうんじゃないか、どうしよどうしよ」と焦ってしまう。


でも今日は、善行さんの方から「前にもお店に来ていただきましたっけ?」
と話を振っていただいたので大助かり。おとなだ!これがおとなですよ!
娘さんが本にいたずらしなかったか、などのお話を聞く。したそうな。
「でも、怒れないんですよね」とすてきな笑顔。本よりムスメだ。
わずかな時間であったが、善行さんとお話できてとても嬉しい。


購入。古書善行堂。
上林暁山本善行上林暁傑作小説集『星を撒いた街』』(夏葉社)
『Sanpo magazine 2012年 第5号』(大散歩通信社)


帰りの電車で、『星を撒いた街』のあとがきを読む。
本を閉じて、表紙を眺める。なんてていねいな造りなんだ。
帯をやぶかないように気をつけてビニール袋に戻す。