三十三歳の遅刻

走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)


なんと、シフトを間違えていて、
出勤時間にまだ、家にいた。
頭がしゃきっとしていない。
こんなことでは、いけない。


車中のとも。
村上春樹走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)』(文藝春秋

いずれにせよ、僕はそのようにして走り始めた。三十三歳。それが僕のそのときの年齢だった。まだじゅうぶん若い。でももう「青年」とは言えない。イエス・キリストが死んだ歳だ。スコット・フィッツジェラルドの凋落はそのあたりから既に始まっていた。それは人生のひとつの分岐点みたいなところなのかもしれない。そういう歳に僕はランナーとしての生活を開始し、おそまきながら小説家としての本格的な出発点に立ったのだ。(p.74)


僕は、いったいぜんたい、何か「本格的な出発点」というところに
立ったことがあったのだろうか。間もなく、三十三歳も終わる。
せめて、走り始めるところから、始めてみてはどうか。


少なくとも、始業時間には間に合うかもしれない。