2008 五本の指

2008年、五本の指

い:大崎善生聖の青春 (講談社文庫)』(講談社

ろ:長塚京三私の老年前夜』(筑摩書房

は:小野博『ライン・オン・ジ・アース』(エディマン)

に:勝山康晴([か]3-1)コンドルズ血風録! (ポプラ文庫)』(ポプラ社

ほ:松浦弥太郎軽くなる生き方』(松浦弥太郎


本を読んでも、そのときの興奮は、意外に忘れてしまうものだ。
タイトルを見たり表紙を目にしたりしただけで「そういえば」、
となる場合もある。詳細は覚えていなくとも、「味方」だ、
という感覚だけが残っていることがある。


けれども、すっかりとその感動が忘れられてしまっていることも少なくない。
毎年正月に、前の年に読んでよかった本を振り返っているが、
この日記を手がかりにしても、なかなかスッとは思い出せなかったりする。
これはいったい、どういう手品なんでしょうかね。


「泣ける」といううたい文句が宣伝で使われまくって、
いろいろな人が「泣ける」に対して敵対心を燃やしている平成日本ですが、
やっぱり涙を流してしまった本には、「よかったよー」と肩を叩いてしまう僕がいる。
「い」の『聖の青春』はまさに涙の一冊でした。


ところがこれ、五本に入れていいかどうか、どうにも自信がなくって、
こないだ持ってきた文庫段ボールに入っていたので、パラパラしてみた。
ぶわー!っと、読んでたときの感覚が蘇る。ヤバイ、泣く!採用!
そのうち再読したいですな。将棋も、やりたいですな。


「ろ」は、長塚京三のエッセイ。
「役者としての覚悟は、むしろ演技の場以外で培われることのほうが多い」(p.55)
肝に銘じたい。これはほとんどを風呂のなかで読んだ。風呂で読むという読書方法を、
取り入れられたのも2008年の収穫でありました。これもいつか再読したいね。


「は」は、読み終えて即、五本入りを確信した一冊。
「旅に出て、自分を成長させる」という「処方箋」に対して、
なんとなく警戒しているところがある僕ですが、これを読んで、
改めて「旅」の持つ力を思い知らされたようです。
「未知の世界」の力というか。


去年、スコットランドに行って、久しぶりの海外体験に、
単純にワクワクした。知らない世界を歩く感覚は、
僕の怠け者の好奇心をくすぐってくれた。
旅する機会に対して、もっと目を光らせた方がいいみたいだ。


「に」:『コンドルズ血風録!』は、ある意味、再読でもある。
2006年の『コンドルズ血風録!―栄光に向かって走る あの列車に乗っていこう』の文庫版。
大幅に加筆・修正があるのでほとんど新作のようでもあるが、
前との変更点に「単行本のがよかったなー」と思うこともしばしば。


そんなこんなで、こちらも五本に入れるかどうか、
と思いながら引っ張り出してぱらぱら読み直してみれば、
いつまでたっても手が止まらない、目が離せない。
そのうち目頭が熱くなってきたりして。


忘れてしまうものなのですね。いやー、この本も、
すばらしい時間をくれていたのでした。
08年も僕にとって、コンドルズの年だったと言えるでしょう。
と、いうことで、これもカウント。


最後の「ほ」が、『軽くなる生き方』です。
一日で読み終えてしまって、それこそ詳細は忘れてしまった本ですが、
こちらは「良かった」という記憶は残っている一冊。
いいな、と思う文章があっても、これには線を引きたくなかった。


さてさて、実は今年も難航したベスト5の選定。
小野博以外の本は、なかなか決まらなかったくらいでした。
漏れたものもざっと振り返っておきましょう。


マンガでは 萩尾望都スター・レッド (小学館文庫)』(小学館)、
吉野朔実『少年は荒野をめざす』(集英社*1
少女マンガは全然読んだことなかったのですが、
かなりヤバイね。他の作品も、読んでみたい。


遂にシリーズを読み干してしまった鬼平
最終巻の『新装版 鬼平犯科帳 (24) (文春文庫)』(文藝春秋)も、
実に良かった。鬼平もまた、再読したい。


ビジネス書では、小山龍介『STUDY HACKS!』(東洋経済新報社)、
堀内浩二『リストのチカラ [仕事と人生のレベルを劇的に上げる技術]』(ゴマブックス)、
大橋悦夫『LIVE HACKS! [ライブハックス!]』(ゴマブックス)、
野口吉昭『コンサルタントの「質問力」 (PHPビジネス新書)』(PHP研究所)、
原尻淳一『READING HACKS!読書ハック!―超アウトプット生産のための「読む」技術と習慣』(東洋経済新報社)、
内田和成『スパークする思考 右脳発想の独創力 (角川oneテーマ21)』(角川グループパブリッシング)、
山崎拓巳『やる気のスイッチ! (Sanctuary books)』(サンクチュアリ出版)、
などなど。


本屋さんを辞めて、ビジネス書の担当を解かれたあとも、
ついついビジネス書の売り場に足が向いてしまい、
買い求めてしまったりするのだから驚きです。


相変わらず、小説が少ないですが、
角田光代あしたはうんと遠くへいこう (角川文庫)』(角川書店)、
保坂和志プレーンソング (中公文庫)』(中央公論新社)、
朝倉かすみ田村はまだか』(光文社)、
なんかが面白かった。今年はもっと、
ゆっくり物語に浸りたいな。


再読ですが、村上春樹を、またまた読んだりしました。
1973年のピンボール』、『羊をめぐる冒険』、
ダンス・ダンス・ダンス』、『村上春樹河合隼雄に会いにいく』、
回転木馬のデッド・ヒート 』、『『村上朝日堂』、
ノルウェイの森』など。
結局、『ロング・グッドバイ』は、未購入。


この本も、何度も読み返しましたな。
築山節『脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める (生活人新書)』(日本放送出版協会
そのほか、再読でよかったのは、藤原和博リクルートという奇跡 (文春文庫)』(文藝春秋)、
保坂和志書きあぐねている人のための小説入門』(草思社)、
サン・テグジュペリ内藤濯星の王子さま (岩波の愛蔵版 1)』(岩波書店) など。


2008年は、「テーマや著者を意識して、固め読みをしてみたい」、
などと抜かしていましたが、全く達成できませんでしたな。


2009年は、どうだろうなぁ。
新しいジャンルというか、世界を広げる方向で開拓できたら。
あと、旅の本を読んでいきたい。むしろ、旅に出たい。
ビジネスノウハウ本は厳選してちょっと減らしたいですな。
その分、物語、小説をじっくり楽しみたい。


欲張ったって、どうせうまいこといかないんだから!
欲張りついでに、去年達成できなかったこれも宣言しておくか。
「テーマや著者を意識して、固め読みをしてみたい」
内田樹池波正太郎荒川洋治ナガオカケンメイ加藤典洋
脳、サイト運営について、落語、将棋、インタビューなど。