風邪をかかえて本を読む

待ち構えている作業のいくつかを恐れて、
ついつい家を早く出てしまう。今日は、
イベントに行く妻と一緒に出かけた。


風邪のダルさに降りる駅までずっと眠っていた。
隣りに妻が座っていた安心もあったかもしれない。
勤務時間までまだだいぶ間がある。食事を済ませ、
少し離れた大型書店へ行ってみようかとも思ったが、
体力温存だ、と思って本を読むことにした。MPを回復せよ。


コーヒーのとも。
梯久美子原民喜 死と愛と孤独の肖像 (岩波新書)』(岩波新書

自分たちの同人誌に原の詩を載せることができるというだけで『やったぞ』と声をあげる熊平のような少年が近くにいたのは、原にとって幸運なことだった。(p.78)


だが人間の心に傷をもたらす出来事は、他人との比較でその軽重を量れるものではないし、一般化もできない」(p.94)


「火の唇」からの引用に、太宰治のことを思い出す。でも原さんは、
太宰よりも、ずっともっともっと不器用だったのではないか。
原の幸福、原の苦悩。原民喜という人物の喜怒哀楽が、
その一部が、こうして手のひらの上にある。


ぼくは風邪をひいている。
少し、ダルさがマシになったような気がしてきた。
読書のおかげということにしておこう。