記憶のひみつ、妻への扉

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)


今朝も妻がいた。
上の子を送っていってもらう。
下の子は保育園を休ませるそうな。
洗濯物を干す。冷蔵庫にあるものを、
弁当箱に詰め込む。思いのほか、
ちょうどよく収まって嬉しい。


郵便局に行く、という妻子と連れ立って、
駅へと向かう。もう少しだけ早く出かけることができたのに、
という小さな心のささくれをいじりながら、まったく、
なんて罰当たりなことを考えているのだろうと自責。
しゃべりまくる三歳児と連れ立って歩ける時間の、
貴重さを思い知れ!と、見えない背中をつねる。


車中のとも。
企画:三砂慶明『読書の学校 第一講 100年後。』(蔦谷書店)


妻が昨日、イベントでもらってきた冊子。
2018年8月1日発行。朝日出版社創元社など版元11社と梅田蔦谷書店が、
各3冊紹介している。本を紹介するフリーペーパーとして、
かなり効率的なレイアウトに感じる。いいね。


おそらく企画者からの指示があったのだろうが、
各版元の紹介する3冊のうち必ず1冊は他社本が含まれているのもよい。
世界思想社さんが紹介している他社本はハインライン夏への扉』(早川書房*1だ。
世界思想社、サンガは選者が3人いて、企画への参加者が多いのも好感が持てる。


朝日出版社橋本亮二さんの選んだ他社本は、
柴崎友香『千の扉』(中央公論新社*2
この本のことは知らなかったが紹介文を読むと、
長嶋有の『三の隣は五号室』*3を思い出した。
くしくもどちらとも中央公論新社


左右社脇山妙子さんの紹介している『ラインズ 線の文化史』*4
サンガの島影透さんの紹介している『自分を変える気づきの瞑想法(第3版)』*5は、
著者・版元情報に別の紹介本のコピペ残りがあって残念。


左右社脇山妙子さんの紹介している他社本、
多和田葉子『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』(岩波書店*6
気になる。


コピペミスの揚げ足をとっていたら、
乗り過ごしてしまって、また電車に乗り直す。
地上に出て、郵便局まで歩き、風景印を押してもらう。
片方突っ込んだイヤホンからは、世田谷ピンポンズ。


久しぶりに高速道路の見える休憩室でお弁当。
出勤時間前なら、比較的ゆっくり食べられることに気づいた。
BGMは、「ホテル稲穂」、名曲。「歌子ちゃん」も名曲。


休憩のとも。
梯久美子原民喜 死と愛と孤独の肖像 (岩波新書)』(岩波新書


カルモチンが出てきた。治の気配、ヘノモチン。
案外、記憶に残っているな。太宰のユーモア。
妻と二人で奈良の大仏を見たという記述。
今度東大寺に行ったとき、感慨が変わる。


おたんちんのところも、笑うしかない。
なんだ、この幸福感。昨日は民喜のしんどさに救われたが、
民喜の幸福感にも、エネルギーをもらえた。ああ、民喜、ありがとう。
風邪気味という、つまらない苦しみにいじける僕を助けてくれてありがとう。


たとえ短い間だったとしても、それは真に祝福すべき日々であって、
その短さで彼の幸福がいささかも傷つくわけではあるまい。
そうしてその輝きに照らされて、平成の小さな男がひとり、
励まされているというこの奇跡に感謝。


今日は、版元営業さんが何人もいらっしゃった。
初めてのヒトもおれば、お会いしたことがあるヒトもいた。
関西の営業所を閉めてしまう版元さんが増えているようだけど、
こうして生身の人間同士が顔を突き合わせて「どうしたら売れるか」
ということばを交わすことに、意味があると思いたい。
売上の向上につながっていると証明したいものよ。


車中のとも。
梯久美子原民喜 死と愛と孤独の肖像 (岩波新書)』(岩波新書

大切な存在であった父の思い出話を、喜んで聞いてくれる妻がいる幸福。(p.130)


話を聞いてくれる人がいることで引き出される記憶、
というところに、深くうなずく。