とり、トンカさんにゆく

よつばと!(1) (電撃コミックス)


今日は、トンカ詣での日曜日。
青春18きっぷを使って倉敷や姫路を訪ねる、
という野望はどこへやら、とりあえず洗濯だ。
家事のおともに音楽ライブのDVDを流すのがお気に入り、
昨日観た、『日比谷、夕暮れ、ハンバートハンバート。』を、
もう一度、今日は、「ジャージーボーイズ」のMCから。
それはつまり、「おなじ話」から聴き始めるということ。


洗濯物を干して、神戸書店マップ*1をかばんに入れて、
いざ、出発、携帯電話を忘れて戻ったり。
なぜか休みの日にまで駅まで小走り。
なんとか、乗りたい電車に乗れた。
神戸三宮駅まで、一本。


車中のとも。
鷲田清一「待つ」ということ (角川選書)』(角川学芸出版

棄てられる、置き去りにされるというのは、戻ってきてくれるのを待っている相手の、その意識からじぶんが外されることである。そのひとの眼中にはもう『わたし』はいない。(p.58)


ごくごく平凡に、失恋の記憶がよみがえる。
置き去りにされた、いつかの自分。
途中、子どもたちを連れた客がたくさんやってきたが、
席を譲ることでその喧騒が打開される予感もわかなかったので、
イヤホンを耳に突っこんで、眠ってしまった。終点のいっこ手前で、
ごそごそとメモ紙に、今日、行きたいとこ、欲しいものを書いてみたり。


まずは、『BOOKMARK』*23号を求めてジュンク堂三宮駅前店へ。
ダイエーにたどり着くまでにちょっと迷った。初来店。
雑に店内をうろうろしたが見つからない。問い合わせは、しない。
店員に問い合わせすること自体が苦手だし、
ましてや無料冊子のことなど聞きたくない。


購入。ジュンク堂書店
とみさわ昭仁無限の本棚: 手放す時代の蒐集論』(アスペクト


初めて見たこれを買って、早々にエスカレーターを降りる。
マップを見れば駅周辺にたくさん本屋さんがあるようだが、
もう元町を目指そういう気持ちになっている。最近は、
めっきり、棚をじっくり見たりフロアを歩く気力が、
衰えてきたような気がする。なんなんだろう、これ。


なんとなく見当をつけて歩いていくと、そごうが見えた。
方角は分かった。あっちに歩けば、元町の方だ。そごうに、
紀伊國屋さんが入っていたのではなかったか。かばんから、
神戸書店マップを取り出して、確認する。そのようだ。


そごうに突入して、エスカレーターで5階へあがる。
土産物屋みたいなのと同居してる不思議な導入部から、
思いがけず広く深く伸びている店内を進む。そしてふと、
昨日テレビで見た、齊藤慶輔さんの本を探そうと思いつき、
理工書の棚の前を歩く。このジャンルは、ふだん、ほとんど見ない。
ほとんどというか、生涯でも、2、3回くらいしか見たことないんじゃないか。


とても新鮮な気分。自分の興味がなかったものへ出会うきっかけとして、
テレビというのは、なかなか強烈なものを持っているな、と思う。
スイッチを入れて画面を眺めるだけ、という「怠惰な人」にも、
ちゃんと、見知らぬものごとを届けてくれるのだ。


(その点、本は、もう少し受け手の「能動性」に頼らなければならない)
(もちろんその分、自ら選び取ったという姿勢が、プラスにも働くのだが)


棚に見当たらず、ガラケーで、情報を再確認する。
2冊の著作のうち、一冊は2009年刊行、ちょっと古い。
新刊書店では、もうなかなか見つけにくいくらいの「古さ」だ。
もう1冊は2014年刊行なので期待できそうだが、版元を見ると、
北海道新聞社。これは渋い。ジュンク堂くらいじゃないと、
在庫してないんじゃないか、と思って、「あ」と気づく。
三宮駅前店で、検索機叩かなかったじゃないか。


世の中への扉 野生動物のお医者さん (世の中への扉)

世の中への扉 野生動物のお医者さん (世の中への扉)


野生の猛禽を診る―獣医師・齊藤慶輔の365日

野生の猛禽を診る―獣医師・齊藤慶輔の365日


そごうから出て、今日は、なんとなく気持ちが雑だな、
と思う。電車の中で、子どもたちへ抱いた嫌悪感が、
自分のココロを粟立たせているんじゃないだろうか。
ともかく、今日はトンカ書店だ、と言い聞かせて、
元町を目指す。アーケードを通る道は、前にも、
何度か通った道だ。ほら、あそこに古本屋さん。


目についた古本屋さんに気ままに入っていけるのは、
一人行動の、ありがたいところ。今頃、向こうも楽しんでいるだろうか。
アーケードに並ぶ店の上の方を見て、2階にも店があるのかな、
行ってみたいな、と思っていたら、ジュンク堂の文字が。
あぁ、あのガラスはジュンク堂の店なのか。
ここのジュンクは初めてだな、と突入。
それが、三宮店だった。


三宮店では、『BOOKMARK』の配布が終了している、
というのをTLで確認していたので、標的は、齊藤医師の本だけ。
エスカレーターを2階に上がってすぐの検索機を叩くと、
講談社の方は在庫なし、北海道新聞社の方は、
「前日在庫1冊」とある。テレビ放送は昨晩。
売れてしまった可能性も、なくはない。
再びエスカレーターで、5階へ。


途中階からエスカレーターの位置が変わっていて、
文房具店の中を歩いて移動。5階に着いてからも、
フロア内階段で高さが変わっていて面白い。
ちょっとABC六本木店みたいな感じ。
こういうの、好きだ。獣医学の棚で、
無事に本物を手に取ることができた。


パラパラする。目次に目をやると、
「終わりに 若者たちへ伝えたいこと」とあり、
読みたい気持ちになるが、ぐっとこらえる。本文を全部読んでから、
読むべきだと思った。「はじめに」を読む。「白血球」の話が出た。


そして13ページの写真。このまなざしだ。本文の中にも、
カラー写真がたくさん載っている。昨日テレビで見たときの興奮がよみがえる。


購入。ジュンク堂書店三宮店。
齊藤慶輔『野生の猛禽を診る―獣医師・齊藤慶輔の365日』(北海道新聞社)


トンカさんにたどり着く前に、新刊書を2冊も買ってしまった。
テレビを観て齊藤医師の本を三宮店に買いに来たお客が、
残念がるんじゃないだろうか。いろいろと浮かぶ苦い思い。
その後ろめたさをごまかすように、自分を励ます。


『齊藤医師の本を読んで面白かったら、それを吹聴してまわろう』
『本を読んでその喜びの声をあげることは、齊藤医師の足をひっぱることにはなるまい』


(その吹聴こそが、わたしにできるわずかな恩返しなのだ)


パン屋で買ったパンを食べ終えたころ、
元町に着いていた。何も考えずに歩いていたら、
1003を目指していたことに気付いた。トンカさんは、
駅の反対側だ。まずは1003に行って、『BOOKMARK』をもらおう。
今日は店主のちおりんが不在とのことなので、おそらく、
オーナーさんが店番をしているはずだ。
何と言って話しかけようか考えつつ、
ロープを握って階段をのぼる。


思いがけず、店内は混んでいた。
「コンニチワ」とだけ言って、まずは棚を見ることにする。
児童書、音楽の本、マンガ、文庫、文芸書、『アルテリ』、
オーナーの前を横切って、『ほんまに』、旅の本。
視界のはしに『BOOKMARK』も確認、一安心。
お客さんはその後も出たり入ったり。
最終的には僕ひとり残ったけれど、
ちょっとご挨拶する勇気がなく、
ただ、買い物をして、店を出た。


購入。1003。
あずまきよひこよつばと!(1) (電撃コミックス)』(KADOKAWA
『ほんまに vol.17』(くとうてん)


よつばと』は、初めてスナガワさんと一緒に飲んだ夜、
確かおすすめしてもらった本で、それ以来、ずっと気になっていたのだが、
なかなかタイミングや「隙」がなくて手に取れなかったのだが、
こうして1冊だけ、それも第1巻だけが棚にあると、
手を伸ばしやすい。ちおりんも、以前ツイートで、
「第1巻の戦略」みたいなことをつぶやいていた。
まんまとその戦略にしてやられようというM気。
帯つきなのも嬉しい。


さて、ようやくトンカ書店だ。
神戸書店マップでなんとなくの位置を確認して、
歩く。道を渡る。初めての路地を進む。
二階の窓に看板を見つける。おお。
しかし入り口がわからずうろうろ。
まさかと思って窓の下の服屋に突入。
そこにはしかし階段は見つからなかった。
ガラケーで検索。「北側の入り口」という記述を発見。
そうか、つながってるのかビル、こっち側にも。切れてると思ってた。
世田谷ピンポンズライブの貼り紙が残っていて、「本日」って書いてある。


入り口外に、置きチラシとか伝言についての、
店主からのメッセージが書いてある。なんか、
温かい人柄が感じられる。入ってすぐのところ、
まだ店の外から、攻めていく。均一棚、って感じでもない。
お客さんとだろうか、誰かと話す店主さんであろう声がする。


店内に足を踏み入れる。何人かのお客さんがいる。
よつばとの1〜8巻が売っていて、「うー」となる。
1巻に帯がついていなかったのと、8冊も持って帰るの大変だろ、
と自分を慰める。(いや、まぁ、ほんとにそれは大変だよ)
詩集の「フェア」(のようなもの)がやっている。
ソファがある。座りたいが座らず(座ると棚が見れない)、
知らない人の書いた詩集の背表紙を見てゆく。たまに本に触る。


なんとなく感じのいいフォークソングかカントリーソングが流れている。
しばらくしてそれが、世田谷ピンポンズの歌だと気づく。気づいてしまうと、
けっこうな存在感で耳へと入りこんでくる。せ、世田谷め、邪魔をするでない。
狭い通路を他のお客に「スイマセン」と謝りながら、あっちへうろうろ、
こっちへうろうろする。古い児童書や、紙ものなんかがいっぱいある。
店主が、常連さんや、買い物をしていくお客さんと常に話している。
あぁ、この人に会いに来るひとがたくさんいるんだろうな、と思う。
本おやの坂上さんのことを思い出した。あと、とほんの奥方様。


詩集を2冊と、ノートを1冊買って、店を出る。
雨が降っていた。洗濯物が、心配だ。持ってきたと思った折りたたみ傘はなく、
仕方なく駅の方へ走る。高架下を通って、そうか、ここはまだ元町だ、
三宮の方へ歩いていく。トンカさんで流れていたピンポンさんの、
「鴨川慕情」とか「喫茶ボンボン」とかが頭にこびりついていて、
iPod で世田谷氏の歌を耳に入れてやる。あ、この曲だったか、
「紅い花」。星を撒いた、ってやつな。


購入。トンカ書店
安水稔和『生きているということ 詩集』(編集工房ノア
夏目美智子『朗読の日』(編集工房ノア


どこかでコーヒー飲みながら戦利品を眺めたいのに、
うまくお店を見つけられず、そのまま近鉄電車に乗ってしまう。
本を開くも、眠ってしまい、目覚めたら鶴橋だった。
ここから先は、通勤と同じだ。イヤホンを外して、
鼻づまりの頭を抱えてしんどさをやりすごす。


近鉄奈良に戻ってきても、なんとなく家に帰りたくなく、
まぁ、夕飯の準備をするのがおっくうなだけなのだけど、
自分しかいない家、というのも貴重なハズなのに、
啓林堂に寄ったり、ラーメン食ったりしてしまった。


近所に気のおけない友だちがいたらな、って、
初めて思った。もちろんひとりを満喫してるのだけど、
ちょっとした挨拶を交わしたいだけなんだろう。
トンカさんと親しく話していたおっちゃんが、
うらやましかったのかもしれない。


読了。
あずまきよひこよつばと!(1) (電撃コミックス)』(KADOKAWA