2014 五本の指

さて、新年会も終え、新たなる年への希望が燃え盛ってきたところで、
忘れ行く2014年の読書を振り返ってみたいと思います。


勤務先のお店で2年目、いろいろと慣れてきてさぞや仕事の質も高まったことでしょう、
という期待とは裏腹に、繰り返される同じ過ちから解き放たれることない日々。
ああ。まぁ、多少は退勤時間は早くなってきましたけれども、9月には、
原因不明のめまいに倒れました。まぁ、体調はおおむね良かったかな。
月一くらいの鍼が、支えてくれたと信じたい。


読書ではなく、書店勤務を振り返っておるな。
勤務ではない、書店訪問も振り返ってみよう。


2014年に新しく訪ねた本屋さんとしては、
以下の2軒が、ホームランでした。


長谷川書店(大阪府三島郡島本町*1
本は人生のおやつです!!(大阪市*2


長谷川さんのところは、念願かなってようやくの訪問、
棚も良かったし、ぜひとも再訪したい。近所に住みたい。
本おやさんのところには、「書店員さんで一箱古本市」や、
「編集者さんで古本市」など楽しい企画を覗きにいきました。
坂上さんともお話しできて、今年もちょいちょい遊びに行きたい。


ちくさ正文館本店*3にも、浜松訪問の途中(!)に覗けた。
あそこは、3時間ぐらい余裕もっていかなくちゃダメだという結論。今年も行けるのか?
隆祥館書店(大阪市*4では、本屋会議に。今年も、
面白そうなトークがないか、注目したい。


その他、スタンダードブックストア@心斎橋、あべの、
恵文社一乗寺店などを巡回。善行堂さんには、もっと顔出したい。
ガケ書房には、移転前にもう1回行けるだろうか。無理かも。


あと、2014年は、本の人との出会いに恵まれた一年になりました。
1月にとほんスナガワさんをはじめお三方と奈良で飲んだのからスタートし、
書店員ナイト、町本会、OSK、とほんパーティーなど、いくつもの会で、
本が好きな方々と交流できて、とても楽しく、また勇気づけられました。


・・・あ、そうだ!
とほんさんのことを忘れていた。
1月にとほんスナガワさん、と書いてしまったが、
ちがうちがう、1月はまだ、「元書店員スナガワさん」だったのだ。
去年の2月にオープンしたのだ、とほんさんは。


そうか、まだ1年たっていないのだった。
なんという存在感。


初訪問は、3月も終わりの日曜日だった。
休日とほん:http://d.hatena.ne.jp/tori810/20140330


2度目は、6月。このときに買った『飛ぶ教室』が、
後にOSKでマリ猫さんに渡り、なんと「ぶんこでいず」の12月号に登場していた。
ご縁は、ほんとうに、面白い。
パニックと、ほん:http://d.hatena.ne.jp/tori810/20140616


こうして振り返ると、本当に、去年の「本の人」との交流の、
そこかしこにスナガワさんの気配が!
本当にいろいろとお世話になりました。
こんなところで言うのはアレですが、
本年も、よろしくお願いいたします!(個人的メッセージ)


では、2014年の、五本の指です。


い:矢萩多聞『偶然の装丁家 (就職しないで生きるには)』(晶文社
ろ:島田潤一郎『あしたから出版社 (就職しないで生きるには21)』(晶文社
は:佐々涼子紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』(早川書房
に:片岡義男鴻巣友季子翻訳問答 英語と日本語行ったり来たり』(左右社)
ほ:平松洋子野蛮な読書 (集英社文庫)』(集英社


「い」は、ご自身で装丁もされた晶文社「就職しないで生きるには」シリーズの。
その日の朝、車中のともを物色してたまたま手にしたこの一冊、まさにその日の夜に、
矢萩多聞さんと近藤雄生さんとのトークイベントが恵文社一乗寺店であることを知り、
仕事のあと駆けつけたのだった。読みかけの本とふたりのトークに、
ずいぶんと励まされた夜だった。あの日のエネルギーを、
ぼくはきちんと人生に注ぎ込むことができたろうか。


偶然を装填か;http://d.hatena.ne.jp/tori810/20140510
この夜、多聞さんの本を図書カードで買えるか尋ねた相手が、
おそらくは鳥居さんであった。後にOSKでご挨拶することに。


「ろ」は、こちらも「就職しないで生きるには」シリーズ。
多聞さんの本の、次に刊行されたもの。初読の感動を、
あろうことかブログに書き残しそびれている。無念。
7月頭に読んで、9月に再読。とても、いい。
巻頭の写真が、まずいい。で、本文。濃い。


読み進めたい気持ちと、長くとどまりたい気持ちのせめぎあいに、
ものすごく疲れる。それが気持ちいい。読後、夏葉社の本を読みたくなる。
本屋さんに行きたくなる。今なら、あれだ、長谷川書店さんに行きたくなる。


とり本屋アカウントでツイートした『あしたから出版社』のつぶやき
http://urx2.nu/g09P


「は」は、本ができあがるまでの段階でこんなにも頼もしい味方がいることを教えてくれ、
本屋さんで働くことについて、叱咤激励もされた一冊。いろいろな人がつながっている。
けっして、ないがしろにしてはいけない。ついつい、目に見える世界ばかり、
相手にしてしまいがちだけれども。ときおり、読みなおしたい。


「に」は、作家と翻訳家との、翻訳についての問答集。
それぞれの翻訳スタイルの違いが面白い。分不相応に、
「翻訳してみたいなぁ」と思ってしまった愚か者が、
わたしです。翻訳してみたいのは「飛ぶ教室」です。
英語でなく、ドイツ語!分不相応にもほどがある。


「に」は、ようやく出会えた、とでも言いたい平松洋子さんの「本の話」。
ようやく出会えた、といっても別に前々から平松さんに注目していたわけでなく、
むしろ、高山なおみと混同していた可能性さえ囁かれているくらいだったのだ。(誰に?)
なんかね、読みながら、初めて会ったはずなのに古い知り合いのような、
初対面から打ち解けすぎちゃって赤面、みたいなそんな感じがしたのだ。


取り上げている本たちは、何もかも興味深いというわけでもなかったけど、
その本を触る手つきというか、語り口というか、そういう文章のたたずまいが、好き。
昼休みに連れて帰った洋子さんたち*5は、まだ机の上で冷えています。


読み聞かせ本大賞。
ヨックム・ノードストリューム、菱木晃子『セーラーとペッカ、町へいく』(偕成社


娘がなぜか気に入って、繰り返しリクエストされる一冊。
サンタさんにもらった、続編の『セーラーとペッカの日曜日』*6も気に入ってます。
もしお子さんに読み聞かせる本で何かないかな、と探しているなら、
ぜひお試しいただけたらと。ちなみに娘は3歳です。登場人物ごとに、
声色を変えて読むのが楽しいです。


その他、本と本にまつわる思い出をとりとめなく。


1月にならまちのボリクコーヒーさんに初めて行って、
もう移転閉店されてしまいましたが、その後もなんどか、
本を読んだり、とてもゆったりした時間を過ごさせてもらいました。
最初に行ったときは、スナガワさんたちと初めて会った日で、
『冬の本』*7を読んだりしたのでした。


本屋さんに限らず、お気に入りのお店や空間は、
いつまでもそこにあるものではなく、
そこで過ごせる幸せを、その時に、
大切に味わいたいものだ、と思います。
できればなくなってほしくないとも思うけど、
いつかはなくなってしまう、というのは避けられまい。


『BOOK5 no.11』特集「私たちは今日も、片岡義男を読む」
そうか、これ、2013年じゃなかったのか・・・。
影響力的には、これが入ってもおかしくないほど、
義男の流れがありましたなぁ、2014年。
『翻訳問答』にもつながってるしね。


片岡義男ブックストアで待ちあわせ (新潮文庫)』(新潮社)も良かった。
永江朗おじさんの哲学』(原書房)の片岡義男のとこも、
義男欲をかきたてるいい文章でした。町家古本はんのきで購入した、
片岡義男片岡義男 本読み術―私生活の充実 (シリーズ日常術)』(晶文社
岡崎武志読書の腕前 (光文社新書)』(光文社)で紹介されてました。


はい、出ました、オカタケ師匠。
上記、光文社新書の『読書の腕前』が文庫化。*8
又吉さんの帯文があったり、改訂されている部分もありますけど、
ぼくはやっぱり、これからも新書版の方を持ち歩きそうだなぁ。
あの持ち重りと厚みが、なんか好きなんですよね。


オカタケ師匠のは、他に、
岡崎武志貧乏は幸せのはじまり (ちくま文庫)』(筑摩書房
庄野潤三岡崎武志親子の時間』(夏葉社)


『親子の時間』を年内に善行堂で買えたのは、良かった。
『読書の腕前』を何度も読み返したぼくとしては、
夏葉社さんの『親子の時間』の刊行案内を見て、
躍り上がって喜びましたからね。その割に、
なかなか善行堂に行く機会が持てず。


善行堂といえば、善行さんのこれをようやく読了。
山本善行定本 古本泣き笑い日記』(みずのわ出版
お店に娘を連れて行って、本好きな子に育つよう、
願掛けすることもできました。


本の本も、買って積んどくばかりではなく、
少しは読み崩しておりまして。


宇田智子『那覇の市場で古本屋―ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々』(ボーダーインク
早川義夫ぼくは本屋のおやじさん (ちくま文庫)』(筑摩書房
正木香子『本を読む人のための書体入門 (星海社新書)』(講談社
鎌倉幸子『走れ!移動図書館: 本でよりそう復興支援 (ちくまプリマー新書)』(筑摩書房
成田康子『みんなでつくろう学校図書館 (岩波ジュニア新書)』(岩波書店
荒川洋治忘れられる過去 (朝日文庫)』(朝日新聞出版)
河合隼雄こころの読書教室 (新潮文庫)』(新潮文庫
河合隼雄子どもの本を読む (講談社プラスアルファ文庫)』(講談社
河合隼雄長田弘子どもの本の森へ』(岩波書店
はるな檸檬れもん、よむもん!』(新潮社)
松井祐輔『HAB 新潟』(エイチアンドエスカンパニー)
永江朗(046)「本が売れない」というけれど (ポプラ新書)』(ポプラ新書)
稲泉連復興の書店 (小学館文庫)』(小学館


『本を読む人のための書体入門』は、この中でも独特の感じだったなぁ。
これを読む前から少し思っていたけど、「読む」という行為と、
「食べる」という行為の共通点について、ときどき考える。


椎名誠も少し、読み返しましたな。
椎名誠木村晋介沢野ひとし目黒考二発作的座談会 (角川文庫)』(角川書店
椎名誠哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉 (新潮文庫)』(新潮社)
椎名誠哀愁の町に霧が降るのだ〈下巻〉 (新潮文庫)』(新潮社)
椎名誠新橋烏森口青春篇 (新潮文庫)』(新潮社)


小説を全然読んでいないな。
光原百合扉守―潮ノ道の旅人 (文春文庫)』(文春文庫)
長嶋有タンノイのエジンバラ (文春文庫 (な47-2))』(文春文庫)


コミックも、少々。てか、松本大洋ばっかだな。
松本大洋ピンポン フルゲームの 1 (ビッグコミックススペシャル)』(小学館
松本大洋ピンポン フルゲームの 2 (ビッグコミックススペシャル)』(小学館
松本大洋鉄コン筋クリート (1) (Big spirits comics special)』(小学館
松本大洋鉄コン筋クリート (2) (Big spirits comics special)』(小学館
松本大洋鉄コン筋クリート (3) (Big spirits comics special)』(小学館
浦沢直樹長崎尚志MASTERキートン Reマスター (ビッグ コミックス)』(小学館
高野文子ドミトリーともきんす』(中央公論新社


高野文子は、これも素晴らしかった。
最近は、娘がけがをすると、すぐにかけぶとんさんにすがります。
いつもいろいろ、ありがとう。


高野文子しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん (幼児絵本シリーズ)』(福音館書店


12月の選挙前に読んだこれは、先の読書につながりそうな一冊でした。
赤坂真理愛と暴力の戦後とその後 (講談社現代新書)』(講談社


内田樹センセイの本は、今年もほとんど読みませんでしたが、
こいつは2回読みました。
内田樹街場の戦争論 (シリーズ 22世紀を生きる)』(ミシマ社)


そうそう、ミシマ社といえば、三島さん。
三島邦弘『計画と無計画のあいだ: 「自由が丘のほがらかな出版社」の話 (河出文庫)』(河出書房新社
三島邦弘『失われた感覚を求めて 地方で出版社をするということ』(朝日新聞出版)


新しいミシマ社の本屋さんにも、遊びに行きたいなぁ。


本屋さん巡りについては、
去年のこの文章も参照してみましょう。

本屋さん巡りについては、恵文社一乗寺店
スタンダードブックストア@心斎橋を定期巡回しつつ、
大阪の大型チェーンも一通り、回っておきたい。
雑誌売場を勉強したいなぁ。(←ようやく?)


野望としては、新潟は北書店*9、沖縄は市場の古本屋ウララ*10
福岡のブックスキューブリック*11鳥取定有堂書店*12あたりに、
行ってみたい。ふたつくらいは行けるかな。


あ、あとトンカ書店*13、長谷川書店*14も行きたい。


大阪の大型チェーン店、ぜんぜん行ってません!
雑誌売り場、ぜんぜん進歩してません!
野望は、ひとつとして叶っていません!
長谷川書店さんは、ホームランでした!


今年は、新規開拓については野望とか置いておいて、
実現しそうなトンカさんを全力で攻めるかなぁ。
あと、恵文社バンビオ店*15、ハイパーブックスゴウダ*16
とにかく近畿圏で、少しずつ、足を運んで、
いいなぁ、と思える本屋さんを増やしたいな。


本を読んで、人と話して。
今年も、よろしくお願いします。


2013 五本の指
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2012 五本の指
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2007 五本の指
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2005 五本の指
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2004 五本の指
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