恵文社での長い休日
娘をお義母さんにお願いして、京都へ向かう。
松ヶ崎まで、一本。コンビニで買い込んだハムとパンで、
手早くおなかをごまかしてから、ゆっくりと本を読む。
車中のとも。
木村俊介『善き書店員』(ミシマ社)
長崎書店の長崎社長の熱にボーっとする。
車内の暖房も手伝ったか、ぼんやりとした頭で、
松ヶ崎駅は過ぎてしまったのかもしれない、と
思った。過ぎてなかった。
そのすべては買わないかもしれないけれども、なにか一冊を買うに至るまでには、そのまわりに並んでいる本に影響を受けているはずですからね。(p.233)
松ヶ崎駅から、うろ覚えの道をゆっくりと、
恵文社一乗寺店を目指す。
途中、工芸繊維大学の紅葉をたのしむ。
学園祭なのだろうか、マイクを通した声が聞こえた気がした。
穏やかな秋の日、ついついツイッターを見ながら歩いて、
それでも、100%ORANGE の展示を見る際のアドバイスを読めたりして、
「ツイッターを見ることも、悪いことばかりではない」と、
自分に言い聞かせたりしながら、それでも携帯電話を閉じて、
ゆっくりゆっくり、歩く。道がわからなくなりそうで、ゆっくり。
そしてたどり着いた恵文社一乗寺店。なんと、駅から来て手前に、
入り口がひとつ増えている。こちらが、新生アンフェールなのか。
もともとの店内とは、壁で隔てられている。
100%ORANGE の展示へ、向かう。
「最初にタイトルを見ずに絵を見てからタイトルを考えて後でタイトルを見るのがオススメ」
というアドバイスに従いながら、けれどついつい、自分でタイトルを想像する前に、
タイトル表示見ちゃったりしながら、きゃいきゃいと楽しむ(心の中で)。
なんというか、タイトルの付け方が、前とは違うなー、とか思った。
でも、好きです、ボクは、今回の感じ。とても。良かった。
原画、欲しくなったが、もちろん、無理です。買えない。
そのくせ、シールとか、紙袋とか、こまごまと買ってしまった。
本丸に攻め込む前に、散財だ。スタンプも押した。嬉しい。
入ってきた入り口からいったん外に出て(それは出口となる)、
あらためて、恵文社一乗寺店に、本の溢れる部屋に、突入。
気になる新刊。(既刊もあるデヨ)
甲斐みのり『東京でお酒を飲むならば』(リベラル社)
石田千『バスを待って』(小学館)
酒井順子『ユーミンの罪 (講談社現代新書)』(講談社)
沼田元氣『丸亀御案内写真帖』*1
小泉恭子『メモリースケープ―― 「あの頃」を呼び起こす音楽』(みすず書房)
黒島伝治、山本善行『瀬戸内海のスケッチ―黒島伝治作品集』(サウダージブックス)
谷口基『変格探偵小説入門――奇想の遺産 (岩波現代全書)』(岩波書店)
成田康子『高校図書館―― 生徒がつくる、司書がはぐくむ』(みすず書房)
上田信行、中原淳『プレイフル・ラーニング』(三省堂)
野矢茂樹、中島義道、永井均、鷲田清一ほか『子どもの難問』(中央公論新社)
鶴見俊輔、南伸坊『大切にしたいものは何??鶴見俊輔と中学生たち (みんなで考えよう)』(晶文社)
The Listmaniacs『リストマニア』(パイインターナショナル)
大橋博之『少年少女 昭和SF美術館』(平凡社)
岡本仁『BE A GOOD NEIGHBOR ぼくの香川案内』(ランドスケーププロダクツ)
大岡玲『男の読書術』(岩波書店)
松浦寿輝『波打ち際に生きる』(羽鳥書店)
山城むつみ『連続する問題』(幻戯書房)
常盤新平『東京の片隅』(幻戯書房)
金郄謙二『疎開した四〇万冊の図書』(幻戯書房)
石田千『きつねの遠足』(幻戯書房)
荒木経惟『死小説』(新潮社)
江口宏志『ない世界』(木楽舎)
バスティアン・ヴィヴェス、原正人『塩素の味 (ShoPro Books)』(小学館集英社プロダクション)
小林秀樹『居場所としての住まい: ナワバリ学が解き明かす家族と住まいの深層』(新曜社)
今和泉隆行『みんなの空想地図』(白水社)
レイ・オルデンバーグ、マイク・モラスキー(解説)、忠平美幸『サードプレイス―― コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』(みすず書房)
中山繁信『スケッチ感覚でパースが描ける本』(彰国社)
秋岡芳夫『割ばしから車まで』(復刊ドットコム)
永見眞一、ジョージ・ナカシマ、皆川明『ジョージ・ナカシマから ミナ ペルホネンへ』(リトル・モア)
正木香子『文字の食卓』(本の雑誌社)
兵藤智佳『僕たちが見つけた道標: 福島の高校生とボランティア大学生の物語』(晶文社)
レスリー・キー『SUPERな写真家 (ideaink 〈アイデアインク〉)』(朝日出版社)
『瀬戸内海のスケッチ―黒島伝治作品集』こないだ、
毎日新聞で荒川洋治さんが紹介していたやつ。
実物を見ると、やっぱり魅力が倍増しですなぁ。
『変格探偵小説入門』「岩波現代全書」というシリーズが出てたのか。
知らなかった。きちんと岩波書店を仕入れる姿勢に、平伏。
『少年少女昭和SF美術館』これは凄い。ツイッターで気になっていたが、
実物は、すごくすごく魅惑的であった。けれども、自分の少年少女時代より、
ちょっと前の時代のことだから、「ど真ん中だったらもっと打ち抜かれるだろうに」
という思いが消せず、買うに至らない。うーむ。ど真ん中の時代まで、
もう少し待たねばならないのかなぁ。ボクだったら、なんだろうか。
『みんなの空想地図』これもツイッターで気になっていた一冊。
なんとも言葉で形容しにくい内容だけれども、すごく気になる。
これは電車の中で読むよりも、一日中、どっかの図書館とか、
カフェとかで没頭して読みたいな。ノートとか使いながら。
『割ばしから車まで』これは、非常に気になって、
だいぶ立ち読みしてしまった。買うには至らなかったが、
とてもとても気になった。
『文字の食卓』文字オタクの読む尖りすぎた本と思っていたら、
懐かしいピッコロ大魔王の姿に打ち倒された。なんだ、この本。
購入。恵文社一乗寺店。
堀部篤史『街を変える小さな店?京都のはしっこ、個人店に学ぶこれからの商いのかたち。』(京阪神エルマガジン社/京阪神Lマガジン )
古井由吉、佐伯一麦『往復書簡 言葉の兆し』(朝日新聞出版)
堀部店長のレジで、予約していた恵文社本などを購入。
イベントの支払いは、会場でのちほど、ということ。
3時間近く滞在して、いったん休憩。外に出た。
しかし、ギャラリーアンフェールの場所自体が変わっていて、
驚いた。元々あった場所はコテージというスペースに様変わりしていて、
その間の、前には文具とか売ってた空間は、屋根が取っ払われて、
庭みたいな空間になっていた。ベンチに座ると、本屋の上の、
マンション部分のベランダが丸見え。不思議な空間。
イベントまでの時間がさしせまっていたが、
こないだツイッターで知った(←またかよ)アカツキコーヒーに行って、
今日の収穫の反芻と、恵文社の棚の何を楽しんでいるのかの復習(!)をしよう、
と、暗くなりかけた道をうろうろ。そして見つけた、お店に貼り紙。
「11月から、日曜定休」なんてこったい!
昼の残りのロールパンをかじりながら、
イベントまでの時間をどう過ごすか考えてみたが、
軒を連ねるラーメン屋のイメージに抗えず、
一軒のラーメン屋にて、ラーメンを食す。
うまかった。ロールパン何するものぞ。
そしていよいよ、イベント。
さっきはクローズになっていた新天地「コテージ」へと、
足を踏み入れる。こういうトークイベントでの座席は、
どこに座るかいつも迷うのだが、今回は、一番前に。
熊谷充紘氏が引き合わせたというナカムラ氏と堀部店長の初対面トークは、
いろいろかみ合わないスリリングな時間も多く、(それはそれで興味深かったが)
あとになって思えば、熊谷氏、事前にもう少し何か下ごしらえができたのでは?
と残念な気持ちにもなった。せっかくの、面白そうな化学反応のチャンスだったし。
それでも、堀部さんの話を引き出すナカムラ氏のインタビュータイムは
非常に濃かった。ナカムラ氏自身の、堀部さんへの興味が強烈だからであろう。
しばしば言及される堀部さんの新刊への関心も高まったが、なんというか、
堀部さんの声や、まなざしや、たたずまいといったものに、力をもらった。
トーク後、サインをもらえる感じになったので、購入済みの本を持って、
まっさきに堀部店長に話しかける。サインペンを用意している間に、
着地点が見定められない身の上話が始まりそうになったが、ペンが来て、
ぼくのサインをもらっている最中から別のカップルが話に割り込んできてくれたので、
いたたまれない気持ちで発狂するまでには至らずに辞去することができた。
イベントの興奮がさめやらぬまま、店内を彷徨する。
なんとなく、大好きな本屋さんでは、事前に知ってた本ではなく、
その本屋さんでその日に出会った本を買いたい、と思っている。
そのことが、その本屋さんに対する敬意を表明できる行為だと、
勝手に、信じているのです。もうだいぶんお金を使ったけど、
もう一押し、じぶんの財布を搾り取りたい気分が抑えられず。
購入。
エーリッヒ・ケストナー、堀川理万子、Erich K¨astner、榊直子『小さな男の子の旅―ケストナー短編 (ショート・ストーリーズ)』(小峰書店)
これ、買う前にほとんど読んでしまったのだけれど、それでも。
レジをしてくれためがねの女性は、初めて見るヒトであった。
店を出ると、すっかり暗くなっていた。妻にメール。
松ヶ崎駅まで帰る前に軽く迷子になった。
電車の中で、読みさしの『善き書店員』のつづき。
近鉄奈良駅に戻ってきて、最後、改札前のベンチで読み干す。
読了。
木村俊介『善き書店員』(ミシマ社)
このタイミングで読めて、良かった。
なんというか、買ってすぐに読まない本や、
刊行後しばらく購入できないでいる本もあるなかで、
この本は、とてもいいタイミングでぼくのもとにやってきて、
とてもいいタイミングで、車中のともになってくれた。
アルトスブックストアさんにも、お礼を言わねばならぬ。
西村さん、ありがとうございました。とてもいい本でした。
家に帰って、堀部さんの本を、まじまじと眺める。
こぶりで、とても愛らしい。いい装丁だ!
明日は、これだな。
予約特典も、あけてみる。エッセイが同封されていた。
堀部さんの文章。とてもよい。いい特典だ。うれしい。