すてきエピソード満載文庫

わたしの小さな古本屋?倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間


遅番の翌日が早番なのは、ちょっと大変。
でも、僕よりも働きまくっている人がいるので、
弱音を吐いてはならない、と思う。
実際、そんなには大変でないし。


車中のとも。
田中美穂わたしの小さな古本屋?倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間』(洋泉社


とてもとても面白い。
普段は乗り換えたあと、わずかな時間の二本目の路線では、
仕事に向けて気持ちを整えたりして車窓を眺めるのだが、
今日は蟲さんののんびりした文章を読み続けてしまった。

イソギンチャクなど、海辺の潮だまりに貼り付いて暮らす生き物の生活形態を「固着生活」と呼ぶそうですが、帳場でじっとしてほとんど動かない自分の様子とどこか通じるように思います。一見つまらなさそうですが、じつのところそこは「座っているだけで」いろいろなことがやってくる、めくるめく世界。思いも寄らない出来事の、連続。それとくらべれば、人ひとりが思い描くことのできる理想なんて、たかがしれていると感じる毎日です。(p.9-10)


どれもこれも、とても美味しい小粒のお菓子のような文章だ。
「こころと背骨の文庫本」(p.35-40)が、味わい深い。
そのほかにも、「父の置き土産」、「まだつぶれていません」、
「祖父母」がいい。「置きっぱなしのブローティガン」もすごい。
素敵エピソード満載ですなぁ、蟲文庫


気になる新刊。
谷川俊太郎文庫 一時停止 自選散文1955-2010 (草思社文庫)』(草思社