効く薬、効かぬ薬

若松英輔エッセイ集 悲しみの秘義


夜中にふと、本を手に取ってしまった。
頭の中に、読みたいと思う箇所がぼんやり浮かんでいて、
そこをめがけて、それでも最初っからふらふら読み進める。
たどり着くまでにも、励まされることばがいくつもあった。


夜のとも。
若松英輔若松英輔エッセイ集 悲しみの秘義』(ナナロク社)

あなたに出会えてよかったと伝えることから始めてみる。相手は目の前にいなくてもよい。ただ、心のなかでそう語りかけるだけで、何かが変わり始めるのを感じるだろう。(p.12)


だが、詩は扉であって、真に向き合うべき相手は別にいる。(p.32)


変貌の経験とは、自分を捨てることではない。自分でも気が付かなかった未知なる可能性の開花を目撃することである。(p.86)


原民喜のことが書いてあった。
すっかり、忘れていた。新潮文庫で「夏の花」を読んだとき、
爪を剥ぐところで、読み覚えがある気がしていたのだが、
てっきり、岩波新書の『原民喜』の方の記憶だと思っていた。
あれだけいろいろ響いたと思っていた『悲しみの秘義』だが、
原民喜のところに関しては、印象に残っていなかったのか。