短時間滞在でも幸せになりたい

本の雑誌403号2017年1月号


寝坊。
明るくなってからの小走りが、
こんなにも恥ずかしいものとは。
しかも、検問みたいのしていて警官やら、
小学生やらがわらわらしていて赤信号を渡れず、
やきもき。「寝坊」と顔に赤ペンキで描かれている気分。


車中のとも。
本の雑誌編集部『本の雑誌403号2017年1月号』(本の雑誌社


まずは夏葉社、島田潤一郎さんの新連載から。
題して「本屋さんしか行きたいとこがない」とな。
初回は自宅の最寄り駅構内にあるという啓文堂書店桜上水店。
ちなみに僕の自宅の最寄り駅前本屋さんは、啓林堂書店です。


取り寄せるわけでもなく、深田恭子がわざわざ桜上水に来てくれるのを待つ感じ、
わかる気がする。「確実に」買うのではなく、「ばったり出会って」という感じ。
わかる気がする。島田さんの、本屋さんについての話は、とてもいい。
とてもこんな風には書けないけれど、僕自身がしゃべってるくらいの、
そうそう、そうなんですよ!という同感の嵐である。

学生のころは、何かないかな、と棚の隅々まで見ていたが、今はふと気付くと、お目当ての本だけを探している。それはすごく大きな損失だと思う。SNSで知った本がその本屋さんになかったからといって、品揃えが悪い、などと言い出したら、なんというか、もう終わりだ。本は目の前にたくさんあるのに。(p.62)


目当ての本以外の、その時たまたま出会える本「も」見る、
そういう気持ちで本屋さんに行きたいね。とはいえ、
毎回毎回、そんな風に隅々まで見れるわけでもなく。


本が多すぎる問題。


時間と金は限られているが、この時間で見られる範囲、この金で買える範囲、
なんて、範囲を意識的に限ると気が滅入る、特に金の方は。


本屋さんのサイズであらかじめ範囲が決められて提供されていると、
「限られている!」という意識を持ちにくい気がする。
小さいサイズの本屋さんだったら、時間がないから、
とかではなく、隅々まで見ることができていいかも。


この範囲を全部見たという達成感っていうの、あるからな。
文庫棚を全部見た、みたいな。それが、「この本屋さん、全部見た」
みたいに思えたら、嬉しいだろうな。ぜいたくだけどな。
新大宮駅前の啓林堂書店は、そういう感じだった。
とはいえ、興味がない棚は見なかったけど。


「ゆっくり棚を見る」というが、実際15分しか時間がないときは、
どのように棚を眺めたら「ゆっくり見た」ことになるのだろうか。
ゆっくりは気分だ。「ゆっくり見た」という気分が醸成されたら成功、
物理的にゆっくりできないタイミングもあるだろうし。


そういうときはそのときの最深の幸せを目指すしかない。
15分しか時間がないときに本屋さんで幸せになる方法。
SNSや新刊案内で知った本を探すでもいい。
文庫の新刊コーナーを冷やかすでもいい。
その時間内で、さっと店内を見まわって、
それだけでキュッと幸せになれるときが。


あります。


まぁ、必ず成功するとは言えないが、
最近は、けっこうな確率で、いい気分になれます。
それは、僕の好奇心が好調だからかもしれません。
僕の体調がすぐれているからというのもあるでしょう。
同じ書店に、頻繁に足を運んでいる、というのもあります。
ここの棚には、こんな感じの本がある、という積み重ねは、
そのお店の中で好きそうな本があるところを嗅ぎつける勘を養います。
時間が少ない時は、その辺りの棚だけをさっと見て帰ります。
いい本を見つけたらその背表紙を見た興奮を抱いて帰ります。


   遅刻した分も含めて、
   それなりに遅くまで働いてから、退勤。


車中のとも。
本の雑誌編集部『本の雑誌403号2017年1月号』(本の雑誌社


朝は、島田さんの文章に直行直帰だったので、
帰りは頭から順に見ていく。巻頭の「本棚が見たい!」、
丸善お茶の水店。何度か行ったことがあるお店。
並んでいる書影を見ると、かなり新しい。
取材日がいつか知りたい。まさか、
12月ではあるまいな。それくらい、今も、
うちの店の新刊台に並んでいる文芸書がずらり。


特集の、「2016年度ベスト10」の座談を読む。
面白い。去年のやつも、読んで面白かった気がする。
一昨年は、どうだったか、読んだか、読んでないか。
それぞれの人が熱く薦める口ぶりと、周りのひとの冷やかし半分のコメント、
あるいはそれに乗っかってさらに熱を加える様子など、とても楽しい。
ベスト10に当てはめていく過程も面白い。編集部の人たちにとっては、
この辺の順位に当てはめよう、という呼吸が出来上がっている。
まだ数回しか覗いていないこちらとしては、わからないなりに、
そのよく分からない「間合い」みたいのが感じられて楽しい。
「じゃあ、四位」とか、「十位でいいです」とか、果ては、
「誰も気づいてないうちに九位に入れておこう」とか。


鏡明の「2016年度SFベスト10」に、
『ハリー・オーガスト*1が入ってた。
これ、気になってたやつだ。


「新刊めったくだガイド」、青木大輔の紹介する中に、
『寝る前5分の外国語』*2が入っている。書影も載ってる。
書影が載っているの嬉しい。そういえば、書影の下には装丁者情報も記載されている。
他のページも、ほとんどの書影に装丁・BD(ブックデザイン?)情報が。すごい。


続けていろんな人のいろんなベスト、それぞれ面白い、
ばーっと、書名だけを拾い読み。あ、これ知ってる。こんなのもあったな。
テーマや冊数、原稿字数によってそのベストを語る文章の面白さも変化しそうだね。
自分のベストと比べても面白そう、そうだ、五本の指準備しなきゃだ。