逃げ足の遅い2月のあとで

翻訳問答2 創作のヒミツ


これは無理かもな、と思いつつ、
小走ったすえ、間に合った。
気圧か何かの影響か?
火曜日、分冊百科のラインナップを、
ひと睨みしてから、本を取り出す。開く。


車中のとも。
鴻巣友季子編著『翻訳問答2 創作のヒミツ』(左右社)


少し間があいていたが、すんなり角田光代の回に潜り込む。
他の作家の文章傾向を考慮して擬音語を避けるミツヨ、なんかかわいい。
「問答2」では何人もの相手と問答していて、より「正解」のなさ、
というか「それぞれの自由」が感じられる。それは、翻訳の自由、
だけでなく、生きていくことの自由、とでも言おうか。


「問答1」*1のときも、それは感じられたのだった。
片岡義男と、鴻巣友季子と、同じ英文を訳しても、
違う日本語になって現れて、それぞれの解説を聞くと、
もう、それは生き方と言ってもいいくらいの、個性、
そうして、それを読んで、こちらとしてはもう、
好き嫌いはあるにせよ、正解とか、違う、とか、
そういうのは言えないな、と思って、それは、
つまり生き方の自由、みたいなことかな、と。


なんかね、ぼく、自分の生き方が、ちょっとずつ、
誰かに採点されて、減点されているような気がしてるのかな、
って思うんですよ、たまに。それは、この本を読んだときとかに。
それで、読んで、「あ、生きていくのに、正解とか、ないのかもしれない」
って思って、ちょっとホッとして、ホッとしたときに気がつくのね。
普段、採点者の視線を意識して、首に力入れて生活してるのかも、
っていうことを、思うわけです。ホッとしたときに。


  弁当値上がりに、ショックを受ける。
  一気に、個人的景気が悪くなったよ、アベちゃん。


返品したり、明日のりなちゃを載せる台車の整理をしていて、
退勤時間を1時間以上経過してしまった。ようやく、自分の、
担当の新刊を手に取って、つかの間、うんざりしてしまう。
でもその本たちをブックトラックに載せて売り場に出て、
並べているうちに、その気分はどこかにいってしまった。


残された仕事や出しきれなかった本を置いて、
「あれは、木曜か金曜にやります」と言い訳をして、
コートをまとい、出口に向かったとき、先輩から雑誌の問い合わせ、
嬉々として、売場に戻る。そして、「これ、あっちにあった方がいいんじゃない?」
と指摘され、自分でも驚くほど素直に、「そういうもんですか」と思って、
まぁ、今日は無理だけど、今度からそっちに置いてみようと思った。
その後、別の同僚にいろいろと、雑誌売場の感想やらアドバイスを、
拝聴。勉強になりました。では、お先に失礼します。


TLで、知る。世田谷ピンポンズさんが、
トンカさんでライブだとー!告知遅いよ!
3月のシフト、もう提出しちゃったよ!
と毒づいて気づく、すでに3月か。
2月、逃げたか。


車中のとも。
鴻巣友季子編著『翻訳問答2 創作のヒミツ』(左右社)


次なる相手は四人め、水村美苗。水村さんて12歳で渡米してるのか!
こ、これは本格的な翻訳問答になるんじゃないか、という予感。
予感がしたところで、近鉄奈良駅に到着。


風呂上がりの娘が妻に、久しぶりに、
『セーラーとペッカの日曜日』*2を読んでもらっていた。
嬉しい。

*1:片岡義男鴻巣友季子翻訳問答 英語と日本語行ったり来たり』(左右社)

*2:ヨックム・ノードストリューム、菱木晃子『セーラーとペッカの日曜日』(偕成社