凶行災結

ぼくらの民主主義なんだぜ (朝日新書)


なぜか娘が早く起きてきて、
おかげで久しぶりに朝食をとって出かけられた。


車中のとも。行き。
荻原魚雷書生の処世』(本の雑誌社


『女子学生、渡辺京二に会いに行く』が紹介されている。
亜紀書房のは、たしか多聞さんの装丁だ。
今は、文春文庫で読める。


「すでに進路が決まっている人より、むしろ決まっていない人にこそ読んでほしい」(p.77)


こんな風に、ぱしっと推薦のことばを発したい。
セカンドからファーストに、ぱしっと送球されて、
これを読んだ人はもう、一塁ベースを駆け抜けてそのまま、
ダッシュでベンチに帰って読み始めるしかない。


出勤の際、ツイッターで「強行採決」のことを読む。
昼休憩のとき、どうなったか気になって、TLをたどる。
どうも、まだ大丈夫らしい。らしいというのは、
自分のTL上には、はっきりした情報が、
ぜんぜん出てこない。しばらくして、
テレビ中継がないことに思い当る。


強行採決があっても、リアルタイムで、
「あぁー」とテレビに向かって悲鳴をあげることが、
できないのだね。サッカー中継を見ながら「ゴール!」とか、
アニメ見ながら「バルス!」とか、そういうの、TL上で見ると、
なんとなく、同時代の仲間というか、群れの存在を感じる。
自分がサッカー見てなくても、アニメ見てなくても。


けれど、多くのひとが同じように、
国会中継を見ることができない環境にあるのだ。
疎外されている群れ。普段は見える窓にカーテンを引いたのは、
NHK。カーテン開けろ!という声は、TL上に聞こえた。


休憩中は、強行採決に至らなかったが、
次にケータイを見たら、もうダメだった。
ダメだったが、それはしかし、サッカーで全日本が負けたとか、
4年後にリベンジとか、そういう話ではないので、
自分に何ができるか、冷静に、考えねば、
と思い、具体的には何もわからず、
ただひたすら本屋の売り場を、
明日につなげるための労働。


退勤後、友人のダンスを観に、梅田へ。
何か、集会めいたものに参加したい気持ちもありつつ、
結局は踊る人々を眺め、また、居眠りに沈んだ。


公演を終えて会場から路上へ少しずつ、
ダンサーが流れ出して来るのを見て、
ふたたび、陰鬱な気持ちになる。


かなり遅い時間になっていたが、
なんとなく、今日、この日に買うべき本がある気がして、
本屋に寄って帰りたかったが、いくつかの本屋は閉店時間を過ぎていて、
営業していた本屋さんのひとつに入ったが、頭が疲れていて、
何も手に取れず、そのまま吐き出されてしまった。


もう帰ろうと決めてJR大阪駅の近くまでやってきて、
エスカレーターを下りると左手に本屋さんがやっていた。
ブックスタジオ大阪店だ。もう一度、何か買えないかと、
本の中に飛び込んでみた。


購入。ブックスタジオ大阪店。
高橋源一郎ぼくらの民主主義なんだぜ (朝日新書)』(朝日新聞出版)


カバーを要るか要らないか、確認されないまま、
カバーをつけてくれた。つけてもらったものは、
そのままにして読むのが常であるのだが、今夜は、
むき出しにして読まないわけにはいかなかった。


とてもきれいにつけられていたカバーを、
申し訳ない気持ちで外して鞄に入れる。
そうして、帰宅までの小一時間で、
読み干してやるつもりで読みだす。


車中のとも。帰り。
高橋源一郎ぼくらの民主主義なんだぜ (朝日新書)』(朝日新聞出版)


タカハシさんは、雑誌から、とてもたくさんの収穫を、
ぼくに差し出してくれる。雑誌担当としては冷や汗ものだ。
さすがにここで紹介されている月刊誌は、新刊書店では手に入りにくいだろうが、
例えば2012年に刊行された「新刊」書籍を、ぼくは棚で育てているだろうか。
「古い」と思って返品していないだろうか。書籍担当としては、
具合が悪くなって早退するレベルの発汗量だ。


結局、読み終える前に近鉄奈良駅に到着した。
のど元過ぎる前に熱さを忘れるぼくだけど、
今回こそは本当に、少しずつでも勉強しないと、
戦火に焼かれてしまうよな、と思う。


小さな折り畳み傘では、雨を防ぎきれず、
背中をだいぶ濡らして帰宅した。赤子風呂は、
妻が済ませてくれていた。少しだけ、夕飯。
ありがたい。娘ふたりは眠っている。


読了。
高橋源一郎ぼくらの民主主義なんだぜ (朝日新書)』(朝日新聞出版)

人は何かと戦おうとして、時に、それと気づかぬうちに、攻撃している相手と同じことをしている。(p.107)


夜中、3時過ぎまでかけて、ようやく読み干した。
あとがきに、この本のタイトルが、ナット・ヘンホフという人の、
『ぼくらの国なんだぜ』という小説からとったと書いてあった。
斉藤和義じゃなかったのか。武田砂鉄の『紋切型』*1が気になって、
歯を磨きながら、「ずっと好きだったんだぜ」のとこ読み直した。