ひとりの朝、よにんの夜
ひとりの朝。
なんとかトーストをのどの奥に押し込んで、
出かける。雨。ペットボトルのごみを、
今月もまた捨てられなかった。
田村隆一『自伝からはじまる70章―大切なことはすべて酒場から学んだ (詩の森文庫 (101))』(思潮社)
「17 ラドリオ」に出てくる昭森ビルの「可愛い女の子」気になる。
あの人のことなのでしょうか。「本読み」の人ならば、
「こないだ読んだ、あの本のあそこに書いてあった」
などとすぐにいろいろ結びついてひらめくのだろう。
ぼくはただぼんやりと、「でしょうか」と言うのみ。
小一時間ほどまえに、上海帰りはギョーザを一人前、昭森ビルに届けさせた。「それが可愛い女の子なんだよ。風情があってな。梅雨があけたらユカタを買ってやろうかと思ってるんだ」(p.63)
帰りの電車では、黙々と、各方面に報告のメールを打つ。
今日になって、そういう気持ちになったのだ。
コンビニでビールやらアイスやらジュースやらを買って、
まもなく家に着くというころ、電話がかかってきた。
東京で初めて本屋さんで働き始めたときに、
一緒に働いていたMくんだった。懐かしい声に、
思わず涙ぐんでしまった。マンションの周りをぶらぶらと、
歩きながらしゃべった。もっとずっとしゃべっていたかった。
お祝いの返信だって、もちろん、それはそれは嬉しいのだが、
彼がすぐに電話をかけてきてくれたということが本当に嬉しくて、
そういえば、とても優しい男だったよなぁ、と改めて、
彼と一緒に働くことのできた幸運をかみしめらがら、
エレベーターにのりこんだ。
帰宅すると、そこには妻とふたりの娘がいた。
ぼくは一人っ子なので、今日から初めての4人暮らしである。
(そのあとにも、2件電話があった。ぼくは友人に恵まれている)