たすき掛けしてポッキーリレー

野蛮な読書 (集英社文庫)


新しいパートさんがやってくる。
まだ短いあたくしの第二次書店員時代にも、
何人かの、「後輩」が出現している。その誰もが、
バトンを渡す相手になるのかもしれないと、緊張する。


珍しく、「教える係り」になって、
慣れないものだから必死になって、
ついつい「バトンを渡す」という表現が、
連発。どんだけリレーしたいんだ、俺。


しかしあれだな、たすきではなく、バトン、という語を選ぶあたり、
自分が走る距離を短く見積もっているような気もしてきますなぁ。
100メートル、せいぜい200メートルか。
まさか50メートルということはあるまい。


バトン握って、10キロ走ってもいいんだし。
今日はスティック状のお菓子に敬意を表して、
やはりあたしは、バトンをつないでいくかな。


車中のとも。
平松洋子野蛮な読書 (集英社文庫)』(集英社文庫


「わたしの断食一週間」という文章を読む。電車の中、
食欲やら旅への思いやらに続いて登場する一冊の文庫本。
平松さんの文章から見えてくる読書の光景がとても懐かしい。
その読み方、その読み終わり方、知ってる、知ってる。

小田原。熱海。伊東。どこを走っているのか、どうでもいい。わたしは何百発もジャブを打ちこまれたボクサーみたいに感覚を失っていた。脳髄に注入された文章にしびれながら、思う。流した血は、苦闘の果ての死は、いずれ報われるのだろうか。人生は不実なものなのだろうか。結局のところ、われわれがいるのは地獄なのだろうか。(p.56)