次の本へ、小走りで。

どうか忘れないでください、子どものことを。 (一般書)


からだが温まる程度には小走りで、
感じる風が寒すぎない程度にゆっくりと。
今朝の空は思ってたよりも、まだ明るい。
もうしばらくは、秋。


この時間から車で出勤する人とOSKでお話できて、
駅までの小走りもなんとなく、心強い。
これから朝が暗くなるにつれて、
その「並走感」にもっと助けられるだろうな。


車窓から、朱雀門、すすき野原、ほんのり朱い生駒山
さらに輝く若草山、世が世なら、和歌の七つ、
八つもひねり出したいところかな。


ここのところ、ずっと朝の風景なぞ、見てなかったのに、
やはりOSKで「新大宮から西大寺の間の景色が、いいんですよ」
なんて調子に乗ったことを口走ったおかげで、ひさしぶりに、
窓のそとに目をやることができた。誰かに向けて差し出したことばに、
みずからが、動かされる。踊らされる。温められる。


車中のとも。
岡崎武志読書の腕前 (光文社知恵の森文庫)』(光文社)


ショータロウさんにいただいた本は、また今度。
読みかけのこいつを、ちょっと久しぶりに開く。
和田カバーの話。確かに、いいよなぁ、和田カバー。
もう一度、和田誠の装幀の仕事を網羅した本が出たら、
夏葉社の本も収録されますなぁ。わくわく。(←出して!)


今日の入荷雑誌は少ない。そういう時に限って、
なぜかぼんやりと過ごしてしまいがちで、怖い。
忙しさにまぎれて先送りした仕事たちを、ぴしりと、
始末してしまいたい、と思いながら出勤。
OSKの熱も冷めやらぬまま、今夜は、
町本会なのだ。さっさとあがるのだ。


バックヤードに、ノンノの山が見える。明日は次のノンノ。
こいつを返品しないまま、退勤するわけにはいかない。
いやいや、それだけではない。あちらに見える箱には、
どうやら私が手を付けなければならない常備のしるし。


「明日にしちまえよ」というささやきは、聞こえてこないまま、
なんとかすっきりとして、外へ飛び出した。ツイッターで、
カレーの話題が出ていたので、まんまとカレーが食べたくなる。
食べたら寝ちゃうかも、とか、食べたらお腹いたくなるかも、
とか、いろいろ心配もあったけど、カレー屋に突入する。


美味しかった。


19時前に隆祥館書店に到着。前回、チケット代を払いに来たときに、
一冊も買えずに心残りだったので、何かないかな、と物色。とはいえ、
こないだから、まだ2週間くらいしかたっていないのだ。そんなにも、
目新しい本はないでしょうに、と思う間もなく、お店に入ってすぐの、
面陳に手が伸びる。この本は、前に来た時にもあったかしらん。


これは欲しいかもな、と思いつつ棚に戻し、少しずつ奥へと入っていく。
ときどき、町本会に来た人らしき人の声が聞こえてきて、緊張する。
さっきの本が、育児書のコーナーにも面陳してあった。2ヶ所置き!
あまり本とか読んで「育児」を考えるのもなぁ、と思いつつ。


購入。隆祥館書店。
佐々木正美『どうか忘れないでください、子どものことを。 (一般書)』(ポプラ社


さて、町本会。いったんお店の外に出ると、
ショータロウさんとマリ猫さんが、立っている。
なんか、ジョジョに出てきそうな擬音が見える。
お、お先に失礼しますッ、とエレベータに乗る。
まだ二度目のくせに、当然のように靴を脱ぐ。
この新鮮味の失われる速度といったら、なんだ。


受付で二次会があると聞いて、あまり考えずに会費を払ってしまう。
明日も仕事ではあるが、できればどなたかとお酒を飲みたいなぁ、
とぼんやり思っていたので、二次会とやらに乗り込めば、誰かしら、
話しかけてくれるのではないか、と踏んだのだ。でも、ドキドキ。


前回、隆祥館で『本屋図鑑』のイベントに来たときは、
途中で飲み物を回したりしていたが、今回ははじめに受付にて配っていた。
すばらしい。間もなく、すべからくさんが現れた。なんというか、
こういうところで知り合いがいる、というのが、信じがたい。
そういえば初めて彼と会ったのは、去年のそのイベントのときであった。*1


夏葉社の島田潤一郎さん、隆祥館書店の二村知子さんが登場。
挨拶のあと、ゲストが登場。ハイパーブックスゴウダ*2の森口俊則さん、
長谷川書店*3の長谷川稔さん、元パルナ書房の久野敦史さん。
            

「町には本屋さんが必要です会議」 Vol.16@大阪*4


「紅白のようですね」などと軽口をたたきながら、
島田・二村のダブル司会で進行された町本会。
それぞれに手強いキャラを持った三人相手に、
白熱しつつもどこかズレたキャッチボールは、
あっという間にゲームセットを迎えた。


以下、メモ。


・「(本のことを)最初に知るのはツイッターなんですよね」(by 島田)
・書店員の語る「本屋」の定義
・ビジネス書しか売ってない「町の本屋さん」
・「人の顔を見たり土地を見たりして店がチューニングされていく」(by長谷川)
・「片想いっていいじゃないですか!」(by 島田)
・チューニングして店を作る/本のある場所
・新規で本屋さんをやるひとは、新刊書店より古書店をするひとが多い
・「本屋」の定義がバラバラ
・ある画一化されたサービスに慣れている
・すべての小売りは大きくなっていく
・大きな店は放っておいてくれる
・コミュニケーションvsほったらかし
・本が魅力的になっている場所のことを知る


ハイパーブックスゴウダの森口俊則さん。
島田さんが、「ゴウダさん、ゴウダさん」と呼んでしまっていた。
これというキラーフレーズは覚えていないのだけれど、モリグチさんの、
本屋という仕事に対する真剣さというか、熱量に、励まされた気持ち。
あちこちの本屋さんに足を運びたいというような「欲望」が、
僕の内側にも湧いてきて欲しい。売り上げが伸びている、という話のとき、
畳みかけるように質問が森口さんを襲ったシーンは、今日のハイライト。


長谷川書店の長谷川稔さん。
以前にお店でお話したときのような、柔和で穏やかな表情のうらに、
緊張感と鋭利な視線をたたえていて、油断ならない感じでした。
事前の打ち合わせのメモか、予習メモをめくりながら睨みながら、
何か胸の内にある塊を取り出してみんなに見せたい、と思いながら、
かなわない、といった雰囲気に、「長谷川さん、今度、聞かせてくださいよ」
と、引き分け再試合に持ち込みたくなるような気分になりました。


ヒール風な振る舞いの久野さんが、Amazonで買うのを「我慢して」、
三月書房で買った、という話に、握りしめた石をそっと足元に転がしたりもしました。


記念撮影が終わって、ミシマ社の鳥居さんやスタンダードブックストアの北村さんにご挨拶。
とほんのスナガワさんも、ようやく姿を見つけて声をかけることができた。
物販やら旧交を温める声やらでぐんぐん温度が上がっていく会場から、
一足さきに逃れ出て、ちょっとトイレに行かせてください。
エレベータを下りて外に出ると、ショータロウさんとマリ猫さん、再び。
こんどは、ジョジョ音はしませんでした。二次会には行かないと聞いて、
マリ猫さんに、「ぶんこでいず」をおねだりする。


すべからくさんと一緒に、通りを渡ったファミマにトイレを借りに行く。
そのまま、二次会に向かう集団を待ちながら、立ち話。やがて、通りの向こうに、
何やらぞろぞろと長く伸びた列が移動してくるのが見えた。あれですな。
集団に飲み込まれてついていくと、地下鉄に下りる階段へと吸い込まれそうになる。
え?まさか電車で移動するんですか?と思いきや、階段の途中に横穴的に店の入り口が開いていた。


飲み屋の店中を埋め尽くすほどの人数で、乾杯。
すべからくさんに、開店準備中の本屋さんのことを聞いたり、
北村さんと鳥居さんの話に耳をそばだてたり、空犬さんから、
二枚目のぶんこでいずを受け取ったり、空犬さんとご挨拶をしたり、
紀伊國屋書店の方の名刺にひれ伏したり、森口さんに今日の感想を述べたり、
他のひとに配られている苦楽堂の案内を物欲しそうに眺めたり、終電を調べようとしたり、
石井さんから『次の本へ』*5の案内をいただいてお話を聞いたり、
終電はいつなんだろうと不安になったり、スナガワさんの姿を見つけて安心したり、
帰ろうとしているスナガワさんと言葉を交わして、「あれ、終電やばい?」と思ったり、
余裕かましてトイレに行こうとして迷子になったり、帰っていく鳥居さんに挨拶したり、
ようやく店の奥にあるトイレを見つけることに成功したり、このタイミングで島田さんとお話できて、
うれしくてずるずると話してしまったり、そんなこんなで地下鉄の終電を逃してしまいました。


「ここは谷町何丁目?何丁目なのッ!?」とケータイに怒鳴りながら、
けれどももう、何丁目からも、今夜中に近鉄奈良駅まで帰れる電車は、
発車しないことを知る。


とりあえず店に戻ろうとする脚をそのままに、脳みそでは、
「だれ?誰に助けてもらうのよ、どこで夜を過ごすのよ」と、
「ぼくには泊まるところが必要です会議」が始まっている。


そして、ふと、スナガワさんの口から「天王寺」という名前が出たことを思い出す。
天王寺?JR?・・・JR奈良?調べてみれば、なんということでしょう、
まだ、電車、あります。ホームにすべりこんできた地下鉄は、満員。
頭に浮かんだ「花金」という言葉を、我慢できず、TLに放流。


天王寺で、地下鉄からJRへの乗り換え。失敗は、許されない。
緊張しながら駅の案内を目で追い、人の流れを見極める。こっちか。
このまま行けばJRだ、と安心して歩みを緩めたとき、まさかの、
スナガワさんの後ろ姿を見つける。は、速い!歩きとは言えないスピード、
お、お待ちください!お待ちください!と心の中でふざけながら、
得意の小走りでスナガワさんの後を追う。電車に乗る前に、
声をかけた。


JRの中で、スナガワさんといろいろとお話。
思いがけないボーナストラックに、鼻の穴が3倍くらい大きくなる。
終点のJR奈良で改札口を出ると、見慣れない深夜の駅ビルでは、
若者がダンスの練習をしたりしていた。この時刻、この距離、この寒さ、
いい大人はタクシーで帰るところだろうが、未熟な書店員は、
歩いて帰ることにする。キャバクラの呼び込みに声をかけられる。
一分でも早く帰りたい。ものすごく小さな子猫が二匹飛び出してきたのを、
写メも撮らないくらい早く帰りたいのに、キャバクラとか要らないよ、お兄さん。


けっこうな距離を歩きながら、手すさびにカチカチと、
ケータイで酔った思いを垂れ流す。OSKから町本会と、
過充電なまでに刺激とエネルギーをもらったからには、
「もう言い訳はきかないよなぁ」と口をひん曲げる。


とにかく、明日、寝坊せず、遅刻せず、
店に向かって駆け出そう。そして苦楽堂さんに、
『次の本へ』の注文FAXを送ろう。


追記:
すべからくさんが、詳細な記事をあげてくだすっていたので、
ご紹介します。上の文章で「もっとちゃんと教えてくれよ!」と思ったあなた、
こちらに書いてありますヨ。

たられば書店開業日誌(http://blog.tarareba.jp/
「棚をチューニングするということ」:http://blog.tarareba.jp/entry/141017machihonkai