青年は旅の途中で女を覗いた

東京青年 (角川文庫)


ゆうべは、だらだらと『哀愁の町に・・・』を読み継ぎ、
夜更かししてしまった。妻が出かけるタイミングで、
なんとか脳みそをけっとばして起きる。
娘を医者に連れていき、水ぼうそうシーズンに幕。


お義母さんに娘を託して、大阪へ。
滞りなく用事を済ませて、ふと、娘はそのまましばらく、
妻の実家に預かってもらうことに気づく。本屋を見に行くか。
かねてから気になっていた、居留守文庫に行くことに。


適当に歩き出して、しばらくしてから地図を見ると、
正反対の方角に向かっていたことに気づく。
引き返して、どういうルートで行こうか、
迷っていると、見覚えのある看板が。


購入。ブックオフ天王寺駅前店。
片岡義男東京青年 (角川文庫)』(角川書店


椎名誠の『銀座のカラス』も売っていたが、
これから歩いて居留守文庫に向かうのに、
わざわざ荷物を重くしていったのでは、
買う余地を減らして出かけるようなものではないか、
と思って、ヨシオのみをレジに持っていった。
天王寺駅前店、初めて入ったけど、けっこう古い文庫あったり、
自分にとっては見ない本が多かった気がした。


再び、外へ出た。さわやかな初夏の空気の中、
ときどき地図を確認しながらも、てきとうに歩く。
いよいよ近づいてきてからだいぶ苦戦したけれど、
やがて、住宅街のなかの本棚の姿を見つけることができた。


思っていたよりかは、「普通の本棚」だった。
なんかもっと舞台美術みたいな感じかとも思っていたけれど、
いい感じの、木の棚。入って右側の壁一面の、頼もしい並び。
おしっこを我慢しながら辛抱強く棚をにらみまわしてから、
いよいよ戦線離脱しようと思ったときに、トイレの存在に気づく。


店主に声をかけて、トイレをお借りする。
そこは、トイレ兼ギャラリーの、素敵な空間であった。
息を吹き返した私は、さっきまでも尿意と戦いながら気になっていた、
「のぞき部屋」を攻略することにする。


ツイッターか何かで知った「のぞき部屋」とは、
四方を本棚で囲われた部屋状の空間で、外向きの本棚から本を抜くと、
その隙間から中の「部屋」が覗けるようになっている。
それをどこかのお店で展示販売している、とかいうことだったか、
なんと居留守文庫にもその空間は設置されていたようで、
その空間で、私が店に入って来た時からずっと、
本を読んでいる女の子がいるのだ。


購入。居留守文庫。
桂信子『近畿ふるさと大歳時記』(角川書店
ぴあ [最終号]』(ぴあ)
川上未映子そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります (講談社文庫)』(講談社


『近畿ふるさと大歳時記』が、重すぎる。
重すぎる大歳時記の入った紙袋を持って、
天王寺へと引き返す。私は「東京」出身なので、
こちらのことはほとんど知らないのであるが、
歳時記と絡めて近畿のことを学ぶことができるなら、
なんだかとても気持ちよさそうではないか、と思い、
そんな風なツイートを片手で打つ。打ちながら、
なんか関西に引っ越してきて住んでいる、というより、
長旅の途中で関西に滞在している、というつもりになれば、
なんかすごく楽しい感じになるんじゃないか、と思えてきた。


学生のころにひとり旅したときの感覚が、
うっすらと背中のあたりを走った気がした。
それはそれは、とても薄くてはかない感覚ではあったが。


遠くの方に、路面電車に似た姿を認めて、
もうだいぶんくたびれてきたな、早く帰ろう、
と思ったが、後になって、すぐそばを路面電車が通り過ぎ、
びっくりした。大阪にも、現役路面電車が走っていたのですか。


自分がびっくりしている隙をついて、
スタンダードブックストアあべのに向かう。
気になる本がいっぱいだけれども、エネルギーは、
重たい紙袋を持ち続けることに注がれていて、
レシートのつまった財布を鞄から取り出すのは、
至難の業でございました。


気になる新刊。(既刊もあるでよ)
堀道広『パンの漫画』(ガイドワークス
渡辺俊美461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』(マガジンハウス)
和田誠ほんの数行』(七つ森書館
白川静文字答問 (平凡社ライブラリー)』(平凡社
今尾恵介『太陽の地図帖 地形と鉄道 絶景路線の旅 (別冊太陽 太陽の地図帖 25)』(平凡社
片岡義男北上次郎さしむかいラブソング―彼女と別な彼の短篇 (ハヤカワ文庫JA―片岡義男コレクション)』(早川書房
片岡義男短編を七つ、書いた順』(幻戯書房
庄野潤三ザボンの花 (講談社文芸文庫)』(講談社
寺村輝夫北田卓史ゆめの中でピストル』(復刊ドットコム


車中のとも。
椎名誠哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉 (新潮文庫)』(新潮社)


妻からメールがあり、木曜定休と思っていた居酒屋蔵が、
開いていることが判明。ふたりで飲みに行く。