休日とほん

読書百遍


昼近くまで寝てしまい、
荒れ果てた部屋をほんの申し訳程度片付け、
もう夕方も近くなろう頃、家を出た。


休日に、何をするか、ときどき、悩む。
何というか、「あぁ、何もしないうち重いがに休みが終わった!」
とか、「すべきことをしないで、遊んでしまった!」とか、
何をしても、どこかに後悔がすべりこんでくるという。


傘を差して駅まで歩きながら、「家に残って、
もっと部屋を片付けておくべきではないのか」、
「消費税があがる前にどこかに駆け込む必要はないのか」、
などとりとめのない思いが目の前をちらつく。


車窓から、桜が見えた。いつの間に、あんなに咲き進んだのか。
少し気分が明るくなる。誰かが何か言っていたけれど、
素直に桜の景色に、幸せを感じてもいいじゃないか。


荒れ果てた部屋のを片づけを途中にして出てきのは、
桜を見たかったからなのかもしれない。


大和西大寺で乗り換えて、近鉄橿原線に乗り込む。
昼間の時間、このルートで行くのは久しぶりな気がする。
西大寺を出発して、ゆるやかに右へカーブしていくと、
なんだかわくわくしてくる。


近鉄郡山駅で降りる。今日は、とほんさん*1に行くのだ。
行き方をよく確認しないで来てしまったので、
ケータイで検索する。住所を調べて、Yahoo!地図へ放り込む。
かちかちのケータイでも全く不便はないけれど、
地図利用だけは、スマホが少し羨ましい。


雨はあがっていて、やたらと自動車が通る狭い路地を、
のんびりと進む。窓から猫が2匹、こっちを覗いている。
猫窓からすぐに、とほんさんのお店はあった。
店主のスナガワさんにいろいろお聞きする。
ツイッターで聞いていた、ご近所の金魚電話ボックスや、
元ガソリンスタンドにできた K coffeeも案内してもらう。


お店スペースは4坪とのことだったが、木の格子で作られた、
緩やかに仕切られた「壁」や、広くとられた入り口などが手伝って、
路地へと直接つながって郡山の空へ抜ける、心地よい空間になっている。


新刊書籍、古本、雑貨が並ぶ。品数はそれほど多くないけれど、
ぼくの好きな感じの本がたくさんあった。若い男の子3人組がきて、
スナガワさんや奥さんとことばを交わしている。なんというか、
明るくてすてきな風景だ。もっと長く滞在していたかったが、
妻から新幹線に乗ったというメールが来たので、お会計。


購入。
長田弘読書百遍』(岩波書店


駅まで歩きかけたが、くっと引き返して、
K coffee でラテを買った。小雨がぱらつき始めたので、
駅まで急いだ。あぁ、いい休日だったなぁ、と思いながら。