本と本屋さんのパレード

THE BOOKS 365人の本屋さんがどうしても届けたい「この一冊」


朝に晩に、秋の気配をひしひしと感じる。
8月がまだ一週間残っているけれども、
秋はもう、隣りで息をひそめている。
だからってクリスマスには、まだ早いですからね?
そこんとこ、お願いしますよ、商売人の方々。


甲子園では、大阪桐蔭春夏連覇を達成。
明訓高校が負けた夏のことを思い出してみたり。
ああ、山田、2年の夏。岩鬼、悲しみの校内放送。


車中のとも。
ミシマ社編『THE BOOKS 365人の本屋さんがどうしても届けたい「この一冊」』(ミシマ社)


のっけから、渋い本。1月1日は、『方丈記』だ。*1
この本は、一日一冊、365冊の本を全国の書店員のひとが薦める、
という本好きにはたまらない、本屋好きにはもっともっとたまらない、
すてきなすてきな本だ。その本の最初の一冊、しかも元旦、
どの店を、どの書店員を、どの本を持ってくるか、
非常にニヤニヤしては苦悩したのではなかろうか。
そして、えらばれし一番打者は、鴨長明クンであった。
渋い!


高知県の金高堂朝倉ブックセンターの新山博之さんの文章は、
浮かれた僕の心をスッと緊張させる、けれどしみじみと、
「書店人としてのささやかな喜び」を想像させる。
いい。いいスタート。新山さんの苗字に「しんやま」と、
ふりがなが振ってあるのもいい。ミシマ社さん、いい仕事。


そうそう、ちょっと戻って、ミシマ社代表三島邦弘氏による、
「はじめに」がよい。『計画と無計画』*2でも思ったのだが、
三島さんの文章は、読んでいてとても気持ちがいい。
この「はじめに」も、そのリズミカルなデスマス調で、
これから先へ続くすてきな本の旅路へといざなってくれる。


「はじめに」の次に、「本書の編集方針」というのがある。
これが、的確に本書の魅力をアピールしている、


・「一日一冊本を読むとしたら」という設定で、
ジャンル別でなく、「日付順」というレールの上を
走っていく「本の旅」なのですよ、という宣言。


・「どの本も、書店員さんの手書きキャッチコピーとともに紹介」
手書き文字があることで、1ページごとの「違う人感」が屹立。


・「ちなみに、選ばれた365冊はすべて違う本です」
この365冊がすべて違う本なんだ、という宣言は、
わりと重要だと思いましたよ。上記の手書き文字と合わせて、
1ページごとのかけがえのなさ、みたいのが倍増し。


・「次の一冊」という、その次に読むのをおすすめする本も選んでもらっている。
これはメインの365冊と重なっていることがあり、また、
他の人の「次の一冊」と重なっていることもある。
ここにやたら登場する本は、やはり気になる。
3月までに『アンジュール』*3が3回も登場。


・ページの一番下(左)には書店員の名前とその本屋さんの情報。
上にも紹介したように、読みにくそうな苗字にはふりがながついてる。
巻末に「365書店MAP」がついている。東京や大阪などの都市圏以外は、
「東北」とか「九州」とか大きなくくりでのマッピングだけれど、
その分布感も、全国の頼もしい書店員が戦国武将に思えてきて楽しい。


・ページの一番下(右)には、ミシマ社メンバーからのコメント。
その本屋さんや書店員さんのことが紹介されているのですが、
その町やその本屋さんに行ってみたくなり、その書店員さんに
会いたくなるようなコメントになっています。これは、
自社営業としてしっかり全国の書店を回っているという、
ミシマ社の誠実な仕事抜きには実現できない囲みです。


・「各月の扉に、そのつきに並べた本の特徴を記しています」
このキャッチも、なかなかいい。ちなみに季節の名前として、
「夏」と「秋」が2回ずつ登場、「春」と「冬」は登場しない。


・・・紹介しすぎてしまった。
実質、5ページしか進んでいない。ああ。
とにかく、とてもすてきな本です。丁寧に作ってあります。
こういう類書(本の紹介本、何かを紹介する本、リストアップ本)は、
たくさんあると思いますが、この本にはいろいろと、
ほんとうにいろいろと工夫がこらしてあって、
飛びぬけてすてきな仕上がりになっとるのではないかしら。


僕はとても好きです。


で、4月2日まで読んだ。
高額の、難しそうな本もけっこう登場している。
なかなか出会えなそうな、それでいて読んでみたい本が、
何冊もあった。これだけの熱心な書店員が全国にいる、
ということが、とても嬉しい。頼もしい気持ち。
にぎやかで、楽しいパレード。まだまだ続く。


ありがとう、これからもがんばって、本屋さん。


(お前もな)