未来への構え

私の老年前夜


読了。ゆうべ、風呂で。
長塚京三私の老年前夜』(筑摩書房
前作に比べて、やや世界への難癖具合が進んだか。
話の運び方というか、ひとつひとつのお話の、
巡らせ方が、とても楽しい。

ほんの束の間の、先の知れた楽しみなら、早晩苦しみの種になるのがオチである。そんな生半可な楽しみなら「いっそ要らないや」と思い切ったところから、私の人生は始まった。思えば無謀な、神をも畏れぬ、そしていくらか命懸けでもある思い切りであった。(p.192)


少しニュアンスは変わってしまうかもしれないが、
ぼくにも、「あるかもしれない悲しみを想定することで、
のちのちのショックに身構えておく」という癖があった。
「受験に失敗」とかね。「あまし勉強してないんで」みたいな、
言い訳を先に用意しちゃうみたいな。


それでもいつからか、(そんなに古い話ではない)
欲しいもの、実現したいものにはきちんと向かい合わないと、
手に入らないだろうな、と考えるようになった。
たとえいつか終わってしまう楽しみかもしれなくても、
強がって下を向いてしまえば、ひとときの幸せすら感じられぬ。


長塚京三がたどりついた「楽しみのとき」への態度は、
ぼくのとはまた違ったものだけれども、なかなかに素敵。
ご一読あれ。