よむよむ自転車

こぐこぐ自転車


車中のとも。
伊藤礼こぐこぐ自転車』(平凡社
今日は、朝のビジネス書は持ってない。
いきなり自転車気分を味わおう。
帯に「古希をまたいで、こんどは自転車」とある。
まず間違いなく、ご近所ママチャリ随筆だと期待してよい。


じっくりと目次を目で追う。「都内走行の巻」それだ!
「心臓がおかしくなって死ぬかもしれなくなったこと」とある。
あはは、おじいさん、無理しちゃいけないぜ、と思いきや、
「自転車が順繰りに増えて六台になった話」ときた。
まさか!?ジャイアントなんたら、ルブリカントなんたら。
ママチャリじゃないじゃない!北海道自転車旅行までしてる。
どんな鉄人じいさんなんだ。


新宿に着くまでに読んだ数ページでは、伊藤せんせいは、
まだまだ自転車シロートのかわいいおじいさんだった。
久我山から江古田まで命を落とすか落とさないかといった態で、
車道に歩道に行ったり来たり。ぼくとおんなじ視線で、
東京のみちを観察している。ふむふむと、面白く読む。


それにしても、郵便局にいくときくらいしかチャリに乗らなかったのに、
定年近くなって12.5キロを自転車通勤してみるなんて。
平出隆に通ずる、絶対初心者の強心臓というやつか。
おっさん・じいさんのパワーは、なんというか、頼もしい。
じぶんも、ぜったいそんなおっさん・じいさんになってやる。


自転車シロートのおじいさんですが!という風の語り口は、
確信犯的おかしみをもってぼくをくすぐる。車中でなんどか声をたててしまう。
面白い。詩人のエッセイ的、浮遊感があります。伊藤せんせいって、詩人なの?
ぼくもいつか、スポーツサイクルみたいの、買っちゃうんだろか。


この本の一番後ろには「平凡社の自転車の本」という広告の頁があって、
そこにはなんのことはない、平凡社新書の例の二冊が載っている。
白鳥和也の『素晴らしき自転車の旅―サイクルツーリングのすすめ (平凡社新書)』と、
スローサイクリング―自転車散歩と小さな旅のすすめ (平凡社新書)』だ。
平凡社!この調子で、どんどん出せよ、自転車本を!


気になる新刊。
原研哉ゼミ『Ex‐formation RESORT』(中央公論新社
佐藤亜紀小説のストラテジー』(青土社


テレビで「きよしとこの夜」を見た。
Shu-Thang Grafix(シュー・サン グラフィックス)のイラストが、
大活躍なんですね。氷川きよしグッチ裕三は似てるけど、
ベッキーはぜんぜん似てねえな。女は苦手なのかな。